「ボリシェヴィズム」
 『政治学事典』(弘文堂、2000年)の執筆項目


 ロシア革命を実現し、ソヴィエト・ロシアを建設したボリシェヴィキの思想、運動を表す名称。 レーニン主義を中核とした、ロシア・マルクス主義の急進的左翼。1903年のロシア社会民主労働党第2回大会を機とした 分裂によるボリシェヴィキ(多数派の意)の形成とともに、メンシェヴィキや社会革命党との対抗、さらにはドイツ社会民主党や 第二インターナショナルへの批判をつうじてかたちづくられた。主な特質として、厳格な規律のもとに中央集権的に編集された、 職業革命家中心の前衛政党という党組織、労農民主独裁やプロレタリアート独裁を樹立し、独裁権力によって経済的、 社会的変革を推進するという革命戦略、「帝国主義戦争を内乱へ」として知られる、国際主義的な反戦・反帝闘争への追及、 等が挙げられる。こうした特質は、その後、革命の一国的孤立、全般的な後進性、加えて内戦・干渉戦による荒廃という極悪の 諸条件下で世界に先駆け社会主義を目指す体制建設に挑戦したソヴィエト・ロシアの悲劇的なディレンマのなかで、一国一前衛党の 定式化と他政党・党内分派の禁圧、プロレタリアート独裁の党独裁への転化や国家主導主義の体制建設、コミンテルンによる ロシア中心主義的な世界革命運動、等へと偏曲を強めた。ボリシェヴィズムは、社会民主主義との対立を深める一方、 スターリン主義へと収斂する過程を辿ったが、第1次世界大戦から大恐慌への時代にあって、危機に直面した資本主義世界の 一環を打破する、史上初めてのプロレタリア革命を実現して、全世界に強烈な衝撃を与えるとともに、各国の労働者、 農民の解放闘争を鼓舞し、20世紀初葉の社会主義運動を高揚させリードする役割を果たした。

(大藪 龍介)