『アソシエーション革命へ』について
評者:中村 徹(大阪哲学学校会員)『解放教育』
2003年7月
タイトル:「紹介 『アソシエーション革命へ』」


 「あとがき」を見ると、「構想から3年」の本が、ようやく出版された。この欄をお借りして、私の理解のおよぶ範囲で内容の紹介をしたい。

 いわゆる「NPO法」の施行以来、書店の本棚には、「NPOの○○○」との本が、数多く飾られている。本書は、それらの「HOW-TO書籍」とは、少し異なった立場から編集構成されている。「少し異なった立場」とは、「本書の目的は『アソシェーション革命』を促している世界と日本のさまざまな現実を紹介し、『アソシェーション革命』の基本的目標、その実践の基本的諸形態を整理して、残された課題・未解決の問題を確認することによって、この流れを本格化すること。」(「まえがき」p10)との所にある。

 私なりに理解すれば、福祉や教育の分野で数多く設立されている「NPO法人」の参加者や、また労働運動、そして環境問題や、「平和・人権・女性(等のアドボケーション型市民運動」への参画者が、より一層アソシエーティブ (参画・協同・連帯)に生きる事への、「理論・構想・実践」を紹介し、更なる再考と討議を、そして「連合」を呼びかけている。

<参考>「アソシェーション」「NPO(NGO)」の「範囲・分類・定義」は、「NPOと経営学」(中央経済社2002年)の第一章「NPOセクターと市民民主主義」(佐藤慶幸氏)が参考になる。

[本書の構成]

 本書は、「理論・構想」に相当する、序および第一部・第二部と、「実践」に相当する第三部から構成されている。以下に各章の内容を紹介したい。

<序>「アソシェーション革命」について
 著書「マルクスとアソシェーション」(1994年)の中で、「マルクスの未来社会の構想が、二十世紀の社会主義が採用した国家集中指令型社会でなく、自由な諸個人のアソシエーション(協同・参画・連帯)の連合にある。」ことを明らかにした、田畑稔氏は、本書にて、アメリカの政治学者レスター・サラモンの著書を援用し、全世界的に「非営利セクター」が急成長している現状と、この急成長の原因・諸問題を整理している。また第3節から第6節で「アソシェーションの概念史的概観」と「アソシェーション化過程」を提示している。そして、「アソシェーションの経済学」の展開の必要性を提言している。

第一部「アソシエーション革命」の構想
第1章 捧堅二氏は、19世紀での諸アソシェーション勃興と、国民国家の完成にともなう諸アソシェーションの役割の縮小の歴史を概括する。そして、21世紀のアソシェーション主義を「多元的国家」や「ラディカルな多元的民主主義」と密接不可分のものとして構想することを提唱している。
第2章 形野清貴氏は、P.ハーストが一九九四年に刊行した『アソシェイテイブ.デモクラシー』(未邦訳)の詳細な要約紹介を行っている。形野氏は、ハーストの提起するアソシエーショナルな経済・社会改革が「改めて資本主義と民主主義との関係を問い直さざるをえなくする。」と指摘している。
第3章 大藪龍介氏は、アソシエーションを基軸に据えた新しい社会変革構想を提示している。

第二部「アソシエーシヨンと経済システム」
第4章 河野直践氏は、エネルギー資源問題や環境問題が、「無限の成長指向型経済システム」から「永続可能な経済」への移行を必然としている歴史的条件下で、協同組合形態がもつ経済システムとしての優位性を具体的実践に即して論じでいる。
第5章 宇仁宏幸氏は、現在の資本主義経済を支える要素の一つとして「アソシェーション的調整」の特質を明らかにする。また、「新自由主義」「市場主義」的諸改革が、多くの誤りを含んでおり、公共的サービス(教育・医療・福祉)分野では「アソシェーション的調整」が、公共サービスの質的改善をもたらす事を指摘している。資本主義経済の「国家的調整」の「アソシェーション化」には、広範な「政治的主体」が必要だと提言している。


第三部「アソシェーション革命」の実践へ
第6章 松田博氏は、イタリアの100年を超えるアソシエーション運動の歴史と、イタリア各地域の特性と現代的課題に対応しながら、今もイタリアでの民主主義諸運動の基盤ともなっている「人民の家」の活動を紹介している。「アソシェーション」運動は、「理念」だけではなく、現実をふまえた地道な活動であってこそ「社会的・文化的変革」を築きあげられることを示唆している。
第7章 黒沢惟昭氏は、教育運動の観点から、市民杜会形成におけるアソシエーションの積極的役割を論じ、「生涯学習」を契機とした具体的実践を紹介している。
第8章 榊原裕美氏は、協同組合運動とフェミニズム運動の実践の中で、諸種の困難に対抗する「タフなアソシエーション」の必要性を訴えている。
第9章 白川真澄氏は、「68年革命」以降の「新しい社会運動が、多様性・拡散性と、非政治性・反政治性の特徴を持っている」と指摘する。また日本での「運動」の特異な「タコツボ化」を指摘する。この状況下で、どのような形で政治的な力を形成できるのか、正面から論じている。

[本書の役割]

 「新自由主義的・市場万能主義的」改革が、特に行政の分野で、「PPP」や「PFI」を旗印に、「民」に「市民」ではなく「民間資本」が大胆に導入されつつあり、市民による「行政チェック」が、より困難になる可能性も出てきている。また、行政側からの、NPOの組織化・下請化を通じての「既存プロセスへの包摂」の動きも加速されている。一方、諸自治体では住民投票による市民運動の一定の「勝利」もある。

 本書は「思想的立場の多様性を前提とした」10人の著者が「大枠の共通認識、意見の分岐点、残された課題を読者に提示し。」新たな議論と実践のための「基礎」を提供している。

 ただ、本書にて、「資本」との「対抗関係」の問題が先送りされている点。また「実践」編で「総論的」情勢評価がない点。が残念である。今後の「議論」の展開が必要と思う。

 オルタナティブな「対抗文化」を構築する、諸アソシェーションの「連合」が待たれる。

[最後に]

 本書は、各ページの下段の脚注で、用語や関連する人物を詳しく説明している、また関連する文献を多く巻末にまとめてあり、独学、また学習会などでのテキストとして利用しやすくなっている。