『アソシエーション革命へ』について
タイトル:「本の紹介 『アソシエーション革命へ』」
コム・ネット『アソシエーション革命論の深化をめざして 〔討論用パンフ―VOL1〕』
2003年11月 


 この欄は、読み安さや入手のしやすさ等から新書や文庫を中心に紹介してきたが、アソシエーション革命を指向する私たちや同じような問題意識を共有する読者にとっても本書の検討は欠かせない。

 本書は前著『マルクスとアソシエーション』以降、マルクス再読≠フ作業を通じて社会主義像の転換を呼びかけている田畑氏が中心になって出版されたものだ。その田畑氏を中心に研究者と活動家が集まって合宿や研究会を積み重ね、その共同研究の成果をまとめたのが本書である。

 あの『マルクスとアソシエーション』が発行されたのが1994年。それから10年近く経過している。この間アソシエーション革命に関する研究も進み、多くの研究や問題提起も行なわれている。そうした取り組みもあって”社会主義の崩壊”や、解体・分散化を深めてきた社会主義の陣営のなかから、いわば”アソシエーション革命”を志向するグループや人々も多く生まれ、それらが一つの潮流を形成しつつある。私たちワーカーズもそうした潮流の一つとしてこの間に『アソシエーション社会』『アソシエーション革命をめざして』という二つのパンフを発行し、いま国家や政治との関わりでアソシエーション革命を考える三つ目の問題提起を準備しているところだ。私たちも含めて本書から学びながら、”アソシエーション革命派”の流れをさらに大きくしていければと思う。

 はじめに本書の構成を紹介したい。

 本書は三部構成になっており、序として「『アソシエーション革命』について」という表題で田畑稔氏がアソシエーション革命について包括的な紹介と問題提起を行なっている。続く『アソシエーション革命の構想』と題された第一部は、国家とアソシエーションに関する捧堅二氏の論文、P・ハーストのアソシエイテッド・デモクラシーを足掛かりに、アソシエーションと民主主義の問題を考察した形野清貴氏の論文、過渡期時代とアソシエーションを論じた大薮龍介氏の論文が収録されている。第二部は「アソシエーションと経済システム」という表題で、河野直践氏と宇仁宏幸氏の二人が協同組合や市場との関わりでアソシエーションを論じている。第三部は、「アソシエーション革命の実践へ」という表題でイタリアの「人民の家」、自治体の生涯学習構想、フェミニズム、薪しい社会運動など、実践的・具体的問題提起を含む四つの論文が収録されている。それぞれの大テーマの基に、数人の著者がアソシエーション革命に関する思い構想を語り、全体で10人の筆者がそれぞれ自分なりの問題提起を行なっている。

 本書の中心はやはり思想史的かつ概念的、さらに現実の運動領域にわたって包括的な紹介と問題提起をおこなっている「序」及び第一部にあるので、その一部を紹介していきたい。

 田畑氏の「序」では、最初にアソシエーションの歴史的系譜や言葉の意味・概念について一通り紹介した後、日毎に成長する対抗運動としてのアソシエーションとそれが現存システムとどういう対抗関係におかれているか、現存システムをどう凌駕していくかを述べている。ここでは田畑氏はグラムシのヘゲモニー論との接合を念頭に、これまでの社会主議論が国家とアソシエーションの二律相反する関係に立っていたことを克服すべく、国家への統合の力とそれに対抗するアソシエーションの形成を「従属」と「へゲモニー」の緊張関係とのなかに構想する。これは多面的なアソシエーション化のなかでも特に過程的アソシエーション、対抗的アソシエーションを重視したいとする田畑氏の一貫した考え方が良く出ている。

 さらの最近注目されてきた社会領域でのアソシエーション過程が、これまでの市民社会論が持つ公衆・言論機関中心主義という限界を乗り越える新しい市民社会論の展望を開き、それは単に国家領域に限定されず、経済民主主義や生活民主主義の領域にも拡大する道が開けたとしている。

 さらに田畑氏はこうしたアソシエーションが現実の社会や経済の中でかつてないほどの拡がりをもってきたことを背景として、現実のなかに広く根をはっているアソシエーションセクターに注意を喚起する。ここではサラモンやそれを批判するアイゼンやドゥフルニ等の調査を基に、非営利セクター、社会経済セクターの実態を紹介しつつ、それらの第三セクターが持つ資本主義の胎内で成長するアソシエーションの経済学の重要性を強調している。

 ただ田畑氏はアソシエーションセクターが単なる”すきま産業に堕することに警告を発し、権力や市場の力と対抗する領域が「自己統治能力を高め、自分たち自身の結合した諸力として社会的諸力を自覚的に組織すること」が重要だとすると同時に、それはアソシエーションの閉鎖集団化など、逆の脱アソシエーション過程とのせめぎあいでもある、と指摘することも忘れない。

 最後に、田畑氏はこうしたアソシエーション社会への接近の具体的方策に関する問題提起として、拡大しつつあるアソシエーションの波という現実を背景に、まず対抗的アソシエーションをつくること、新しいオルタナティブな民営化や分権化など、自発的自治的組織づくりから出発することの重要性を語っている。さらにかつて当たり前とも思われていた、まず政治権力を掌握し、これをてこ社会改造をめざす変革モデルを根底から否定するという基本的な視点の転換を再度強調している。その一つが「ドミナンス=優勢」という”新語”で、公権力や市場に対して、それを全面的に排除した社会を構想するのではなく、そうした公的セミナー、私的セクターに対して先ほどの第三セクターが優勢になるというイメージを押し出している。私としては継承と競争≠ニいう契機ばかりでなく、断絶と変革≠ニいう契機も重要だと思うのだが、それはともかく、こうした視点は、政治革命と社会革命の関係をめぐる議論とも相通じるものであり、今後一層精緻な議論が求められる点だろう。

 冒頭の田畑氏以外の論文もそれぞれ興味深いテーマを扱っており是非読んで欲しいものだ。たとえば前著でアソシエーション社会への過渡期の体制を協同組合型社会+コミューン国家だと把握してきた大藪龍介氏の「過渡期とアソシエーション」も興味深く読んだ。ここでは”現代資本主義の大企業体制の変革”いう課題を正面から掲げ、これを「今日の社会変革の核心的課題」だと踏み込んだ考察をしているのが光っている。こうした観点はワーカーズの立場と共通するもので、私の目から見ると「周辺的アソシエーション」志向と受け取らざるを得ない田畑氏も含む他の収録論文にはない力強さを感じてしまう。

 ただ以前からそうなのだが、マルクスのプロレタリア独裁を「理論的に過誤」であり実践的にも「政治的破綻の標章」だとしている点は、やはりマルクスの読み違いと言うしかない。マルクスは様々な政治体制を本質的な階級関係と具体的な政治諸形態の二重の視点から捉えてきた。だからパリ・コミューンで生まれた様々な政治諸機関や政治制度の意義を強調することと、「それこそがプロ独だ」と本質規定するのは矛盾でもなんでもない。むしろそうした二重の捉え方をしていればこそ、アソシエーション革命の巨大な意義とそれを可能とする具体的な政治諸形態を構想することが可能になるのだと思う。

 「本の紹介」の範囲を超えてしまうのでこれ以上のコメントは避けるが、多方面の活動家、労働者にぜひ読んでもらいたい本の一つだ。(ワーカーズ 広)