6月某日
「明治維新の新考察‐上からのブルジョア革命をめぐって」(大藪龍介 06年3月 社会評論社)を我孫子市民図書館の棚で見つけ、ぱらぱらとページをめくっていると例の明治維新を巡る日本資本主義についての本らしいので借りることにする。私は一般の経済史には興味はないけれど明治維新の性格についての論争が、当面する日本革命についてブルジョア民主主義革命を経て社会主義革命にいたる2段階革命論か、すでに日本は不十分とはいえブルジョア社会段階に到達しているのだから、当面する革命は社会主義革命とする一段階革命かという論争は、戦前の日本共産党系の講座派と労農派から戦後の日共と社会党左派、新左翼の論争に引き継がれた。いまやどうでもいいような話かもしれないが、私はグローバル経済下の日本の現状を理解するうえでも明治維新にさかのぼった検討も必要と思っている。
著者は明治維新について「上からのブルジョア革命」として次のように主張する。
@目的は諸列強に開国を強制され半植民地化の危機にさらされた弱小国、日本にとっては独立立憲政体の確立であった
A指導的党派は旧討幕派下級武士・公卿を中核とした維新官僚が分裂しながらも一貫して主導権を掌握した
B組織的中枢機関としては全行程にわたり、政府が主力になって変革を推進した
C手段的方法はクーデタと内戦、一機と反乱の鎮圧、そして「有司専制」など、全面的に国家権力の発動により行われた
D思想については尊王思想、「公議輿論」思想、西洋風の啓蒙思想、自由民権思想などが混在し、後に保守主義思想が伸張したが、基軸となったのは尊王思想‐天皇制イデオロギーであった。
これらのことから著者は、明治維新は国内の経済的社会的条件からすると早産であり、近代世界史の抗しがたい潮流に引き込まれ、外からの重圧に対応した「上からのブルジョア革命」であったと結論づける。それはまた「講座派」などが尺度としてきた史的唯物論の公式に反する革命であった。そしてこのような諸特質を持つ明治維新によって近・現代の日本の伝統となる官僚主義の国家体制や国家主導主義の原型が築かれたとする。
私には非常にすっきりした理論なのだが。大藪龍介という著者が気になったのでネットで調べると、60年安保のころ九大というか九学連の指導者で九州ブンドの主要なメンバーだったらしいことがわかる。安保ブンドのメンバーは西部邁、唐牛健太郎、青木昌彦はじめ興味深い人生を送っている人が多い。でも理論的にマルクス主義の陣営に止まった人はそう多くはないと思う。大藪という人は貴重な存在ではないか。
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