悼フ曲 すみれ k476

2003年05月24日

 私の場合モーツァルトの曲というとすぐにオペラになってしまっていたのですが、歌曲にもとてもいい曲が多いですね。オペラのようにオーケストラの伴奏でないですし、大きなストーリーがあるわけではないので、逆に歌そのもの、歌詞そのものにとても意味が込められる場合が多いですね。だから、訴えてくるものがはっきりと分かることが多いです。(なかには、モーツァルト得意の歌詞は曲についてくるもの風にすごいものもあるけれど・・カノンのように・・・)。このすみれは、ゲーテの詩に曲をつけたものです。途中、短調になったり、なかなかしみじみと聴ける曲です。(03/05/17)
               すみれが一本、草原にたっていた
               こごんで、誰にも気づかれずに。
               それは愛らしいすみれだった。
               そこに若い羊飼いの娘がやってきた。
               足取りも軽く、気持ちも朗らかに、
               こちらのほうへと、こちらのほうへと
               牧場をこちらへと、そして、歌った。

               ああ、とすみれは思う、もしも自分が
               自然の中で一番綺麗な花だったら
               ああ! ほんのしばしのあいだでも
               愛らしいひとが私をつみとって
               胸にそっと押しあててくれるだろうに
               ああ、ほんの、ああ、ほんの
               四半時の間でも!

               ああ、でも、ああ! 乙女はやってきて      
               すみれに注意もせずに
               かわいそうなすみれを踏みつけてしまった。
               すみれは倒れ伏し、死んだが、それでも、まだねよろこんでいた。
               私が死んでも、それは、
               あの人のせいで、あの人のせいて、
               あの人の足もとで死ぬんだから
               かわいそうなすみれよ
               それは、愛らしいすみれだった。
     




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