森岡というディフェンダー
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 このサイトの過去ログを読んでみると、1年前の00年12月24日(本体)は、「私は、偉大な海本とファンキーな森岡を見に行きます。森岡は何か凄く良いものを持っているとカンがささやくのですが、それが何かまだ分からないので。」と書いている。してみると、00年オリンピック以降の森岡を見ても、いいか悪いか分からなかったのだ。わざわざ森岡の良いところを見に行って何がいいのか分からないまま帰ってきている。

 そのころから、色々な疑問がわいている。森岡は清水でラインを統率しているのか。古賀が統率しているようにしか見えなかったのだ。森岡の身体能力は高いのか。これは後に、様々な示唆を受け、また、試合を実見した過程に置いて、森岡はヘディングでの競り合いを苦手にしていることを確認した。そして、万博で試合を見る限り、森岡は1対1でほとんどガンバ選手を止められないことも確認した。特に身体の向きと、姿勢の悪さ。クレバー・リベロ氏からは「森岡はもともとDFではなかったのではないか?」との疑問を持っておられることをご教示いただいた。

 そして、1年後。今度は森岡のDFとしての能力が低いのではないかと疑問を持ちながら、天皇杯を観戦することになる。丸亀でも、神戸でも森岡はストッパーだった。私が見る限り何回見てもそうとしか思えない。およそラインを仕切っているようには見えない。しばしば大榎と古賀とは違う方を見ており、ゲームの推移を読んでいるとは到底思えない。

 それのみならず、神戸では、しばしば、ラインより高い位置にポジションし、そもそもラインに入っていない。むしろ、サイドの平松をサポートする第2サイドバックのような役割を果たしていた。どうして、チームでは必ずしもディフェンスラインのコンダクターともいえない選手が、代表ではラインの統率者として扱われるのか理解できない。

 神戸での森岡は、試合中に柔軟体操をしていたように、脱力している時間帯、ボールの位置を全く確認していない時間帯が多く、また、膝が完全に伸びている時間帯が実に長い。意識が完全に飛んでいるのだ。集中力の高い選手とは到底思えず、宮本型のライン統率はそもそも不可能であろう。それのみならず、宮本に使われる選手としても、かなり無理があり、ディフェンスラインのウィークポイントになってしまうことは、豊田でのオールスター、埼玉でのイタリア戦で、既に明らかである。集中し続けることができない選手なのだ。

 森岡を特徴づけるプレースタイルの一つに脱力時間の長さとともにボディシェイプのいい加減さがある。もともと、DFではなかったのではないかという疑問が生まれる理由である。森岡は、膝がほとんど曲がらず、上半身の動きを最も次のプレーに適した形にしておくという意識がない。そのため、森岡のプレーはしばしば鈍重と言う形容詞が適していると感じることがある。

 例えば、宮本と松田は反応が極端に速いという共通の特徴がある。代表やJリーグの試合をビデオで再生してみると松田だけ動いているシーン。宮本だけ動いているシーンをしばしば見かけるのだが、森岡だけ動いているシーンを見ることは少ない(あるいは、まったくない)と感じるであろう。ただし、宮本は、ゲームの流れを読んでいるため的確に動くのに対し、松田は、相手の動きに動物的に反応しているので、見事なクリアを見せることもあれば、たたらを踏んで結局遅れてしまったり、相手FWにボールを預けてしまったりすることもある。これが、松田のポカミスの正体だ。

 では、なぜ、森岡は反応が遅いのか。丸亀でのガンバ戦をみていると、新井場、橋本、二川クラスのテクニカルな選手には体重移動を使っての上半身の入れ替えだけでいともあっさり抜かれてしまう。ガンバ選手は森岡とほとんど触れることすらしていない。

 森岡は、まず、周囲の状況から次の相手のプレー方向を読むことができない。相手に身体を寄せすぎるため、簡単に裏を取られる。さらに、普段から半身の姿勢をとる意識付けをしていないため、実際に1対1になったときに適切なボディシェイプになっていない。などがあげられるだろう。身体を入れ替えられていともあっさり抜かれる姿は、なにもセネガル戦の2点目失点シーンでだけ見られるものではない。Jリーグでも必ずしも通用しているとは言い難いのだ。

 森岡についての褒め言葉、「フィードが正確」という評価についても、神戸で確認してみた。森岡は、サイド深くから足をスプーンのようにしてすくい上げて前線にけり出す。確かに、バックスピンがかかっているのだが、キックスピードが遅く、1本のパスでFWに通してしまうため、必ずしも、チャンスに繋がらない。ただし、エコパでのオーストラリア戦で代表は右サイドからDFが1本のパスで真っ直ぐ右のFWにボールを通す練習をしているので、トルシエは評価しているのかもしれないが。

 わたしは森岡の経歴をあまり知らないが、彼はサイドの選手であったのではないのかと思う。森岡のフィードを見ていると、Jリーグでよく見かけるサイドから上げられるセンタリングと同じだからだ。丸亀のガンバ戦では、森岡のフィードはたしかにターゲットには向かっていた。しかし、フィードのパススピードは新井場や橋本のセンタリングに比べてはっきりと遅い。また状況把握、状況判断のスピードに難があるのか、せっかくターゲットにピンポイントのフィードが入っても、ターゲットとなった選手は敵と競り合わないとボールを支配下におけない。思えば、クレバー・リベロ氏がJ-NET にて”停滞することのない――森岡と対比せよ――ビルド・アップ”(★ガンバ大阪を応援しています★[97] H-ICHIJYO「神髄」(2000年6月19日19:30)に寄せて― )と宮本のビルド・アップに比べて森岡のそれが停滞していることをはやくから喝破されていた。

 最もくせ者なのが、「正確」という評価だ。「正確」とは実にいい加減な形容語句だ。基準をどこに置くかで、何とでも変わる、非常に幅の広い言葉なのだ。事実、ガンバの日野のキックを基準に考えていたため、長い間、私は、都築はフィードが下手だと思っていた。クレバー・リベロ氏に都築のフィードはJリーグではかなりのレベルだとの教示を受け、他のチームのキーパーのフィードも比べてみると、確かに都築のフィードは正確だった。

 森岡のフィードについては逆のことが言える。私は、ガンバの稲本の新井場の胸にピタリと当てるサイドチェンジを日常的に見ていたので、私の目から見ると森岡のフィードは、やはり、適当パスにしか見えない。味方選手の頭にピンポイントではいることもあるので、全くダメとも言えないのかもしれないが、敵味方密集した中にドロンとしたボールがゆっくりと入ってくる様を想像してみるといい。離れていた敵方の選手もボールを取りに来てしまうであろう。

 森岡は、ただのキック力のある選手としか見えないのだ。このパスなら別に森岡が出す必要はない、川口でも、稲本でも、都築でも良いではないか。宮本のスルーパスの方が遙かに戦略的だろう。

 森岡は、動きが鈍いという改善しようのない欠点を持つ。また、高さがないのは、長居で実証済みだが、丸亀でも神戸でもはっきり分かった。DFの身体能力という言葉が、身体を使っていかに相手選手のプレーを止められるかという概念であるならば、森岡は身体能力が低いと言い切って間違いはない。私は、W杯に日本代表として森岡が生き残れるのか疑問に思っているゆえんである。

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