高い位置にいるDF |
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サッカーで位置の高低といえば、敵ゴールに近いほうが高くて、自軍ゴールに近い方が低いと表現される。「F3=高いライン」という図式は短絡的で、世界中のF3のラインが高いわけではないようです。ただ日本に大々的にF3を持ち込んだトルシエは、F3に高いラインという色を強固につけたチームコンセプトを打ち出した。 しかし実際に日本代表が高いラインが保てているゲームはWユース本選や五輪代表の試合であり、フル代表ではボリビア戦後半になるまでなかなか達成できていなかったように思う。コパアメリカの中継なぞ、エリア前で構えるラインを「こうして高い位置に保ちます」などとアナウンサーが言っていたが、本当に高いラインはハーフウェーラインを超えるというところを後に五輪最終予選でまざまざと見せ付けられるのだが、コパアメリカ当時でもWユースでハーフウェーライン近くまで上がっているシーンを見た後だったので、コパアメリカ当時のフル代表のDFが高いところに位置しているとは思えなかった。 99年のフル代表の試合ーたとえばキリン杯やコパアメリカーでは、岡田ジャパン時代に比べてDFの位置が高いか低いかという相対的な観点で見ても、そんなに高いとは思えなかった。これは最近の森岡あたりのインタビューでも明らかなように、フル代表でもトルシエ流F3をチームコンセプトとしながら、ずっとトルシエ流F3がフル代表ではできていなかった証拠の一つだと思われる。 ただ一時期を除いては、トルシエ流F3を目指していたことも間違いないと見える。ここでは何よりもマスコミ特にアナウンサーの言が必ずしも正しくないことと、マスコミの評価を前提に議論をすることの危険性を指摘しておきたい。マスコミ経由でしか入手できない情報が圧倒的であるが、議論に使える情報かどうかをなるべく検証すべきであると私は考えます。 さて、本題のDFのポジショニングの高低ですが、私は宮本のポジショニングは高く、それに比べて松田は低いと見ています。しかし、これは生憎とTV画面では一番確認しにくいことのひとつです。DFの高さを論じるには試合中の状態を見る必要があります。特にF3ではボールが遠いときにも敵FWと丁丁発止の駆け引きがラインの高さを中心に行われます。しかし、DFが画面に映るのは敵攻撃手とボールが近づいてからです。だから私はF3の評価をするのであれば現地の良い席で鳥瞰するに如かずという考えを持っています。 そして宮本と松田の対比ですが、恒常的に高い位置にいてるのは間違いなく宮本です。TV画面には写ってない時間帯、とても高い位置でラインを保っています。だからディレイをかける十分な時間と距離がありますし、中盤が守備で疲弊することも防げます。そして高い位置にDFがいてるため、ほんの少しボールを持ちあがるだけで攻撃の枚数を増やすことができます。たとえばボリビア戦後半で宮本が縦に通したスルーパスがチャンスを生み出していました。最終ラインからミドルレンジのスルーパスが出るということが、その証拠です。 一方松田にもポジショニングと攻撃力ともに「高い」との評があります。しかし、TVにあまり写らない時間帯の彼のポジショニングは宮本に比べてずいぶん低く、中田浩二も試合中にラインを上げるように身振りしたり、「もう少し高くしたほうが良い」とコメントしています。松田の場合上下動をこまめに繰り返すのが苦手なようで、低い目の位置から前に飛び出てボールを奪取するのを得意としているようです。このため、横をすり抜けられたら手が出る傾向があり、また奪取前にパスを出されるとピンチを招いてしまいます。しかし、自分のプレースタイルとして骨身に染み付いてるだけあって、ボール奪取のタイミングは良いと思います。また、状況判断を済ませてからのダッシュは早いので、松田にとっては低い目に構えておくことは守備において一種の保険であるとも思えます。 ところで、ポジショニングにおける高低は、それイコールプライドの高低や技術の高低それに評価の高低には直結しません。しかし、DFのポジショニングの高低が試合を左右する要素のひとつである事も間違いないと思います。低くすることが適した場面では低く、高く保つことが有効なときには高くできることが重要であり、試合中の状況を読む力が必要だと思います。 しかし、一般的にはDFのポジショニングが低いことイコール悪いことという図式が定着しています。たしかに、DFの位置が低いとピンチであることが多いのですが、「ラインを下げることで戦える難しい局面もあると思う(BY宮本)」ので、ステレオタイプな高位置=良い、低位置=悪いではなく状況によって高さがフィットしていたかを、検証する必要を感じています。ですから、ここで松田と宮本の高さを大まかに比較しているのは、ポジショニングの高さのみで両者の優劣を論じているのではありません。この先に、申し述べたいことがあるのです。それは、何故に松田のポジショニングが高いと評されるか?です。 推量による回答 (1)TVで見ているから90分を通してのポジショニングを確認することができない (2)たまに攻めあがった時の迫力が印象的 (1)と同じ (3)「F3=高い」との思い込み (4)Fマリノスの位置に比べて代表では高いという意味 こんなところでしょうか。DFの高さを見るならセンターサークル下やエリアのラインなど参考になる目印がピッチ上に点在しています。スタジアムからなら割合楽に比較ができます。スタジアムに行ける方はぜひとも自分の目でご確認されることをお勧めします。ただし、これを志したら、なかなかボールのあるところは見れません。 話は戻って松田のポジショニングが何故高いといわれるのか?私は一番の理由は(2)ではないかと考えています。低い位置から俊足を飛ばして前に出る松田には確かに迫力を感じます。多少の当たりにはものともせず駈けていく姿にどよめく心理は十分理解できます。 しかし私は思うのです、コストパフォーマンスは果たして良いのか?と。宮本が時折ボールを持って前まで出る、あるいはスルーパスを出すのと、松田が長距離を駆け上がることの効果自体はさして差がないように私には思えます。しかし、それに対しての負担やリスクはどうでしょう。攻撃においてリスクチャレンジや失敗を受容することの大切さは私も痛感しています。思い切ってチームのバランスを崩すようなポジションチェンジやフリーランニングも必要だと思います。しかし、私は同じ効果でであるならばリスクと負担の小さいほうを選択します。 |