181cm 74kg
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 稲本はフィジカルで世界に渡り合える選手。こういう折り紙に、またまた私は異議があります。フィジカルという一見客観的な、それでいて言葉の定義や実際の数値が曖昧な言葉に対する論証はひとまず知らんぷりすることにします。

 稲本の身長は、成人の日本人男性を10cm上回っていますが、Jリーガーの中でそんなに傑出して背が高いわけではありません。そして74kgという体重が嘘でないなら、身長に比べて、体重がそんなに重いわけではありません。小野や中田に比べて稲本は、そんなに筋肉がついてないことが、ちらりと見ただけで分かります。

 またSサッカーで3回稲本は脱いでますが、TV画面で見ても彼は細かった。3度目のバナナキングコンテストは収録を見ていたのですが、あの体のどこがフィジカルで傑出しているのだろう?と不思議に思いました。

 一部のガンバサポが親しみを込めて「ぶーちゃん 」と呼ぶように、小島が「デブ」と揶揄するように181cmで74kgしかない稲本の体の内、筋肉が占める割合は普通のJリーガー並で、稲本の体脂肪率はそんなに低くないと思われます。稲本は、中田ヒデの腹筋をスゴイと思ったとコメントしてることがありました。また、フィジカルが優れている理由をマスコミに尋ねられても「特別なことはしていない」とずっと答えています。昨年春の怪我の後、体を作ったことや、筋トレに取り組んでいるのは事実でしょうが、稲本のフィジカルに高い評価が着いているのは、怪我以前からの話です。

 これらのことを総合して、稲本の最大の長所がフィジカルであるかのごとき世論に異議を申し上げます。稲本のフィジカルは弱くないし、相手に当たることを彼は厭いません。その結果彼はガツガツと敵からボールを奪取してきますし、相手にボールを取られません。けれど、それはフィジカルばかりに理由があるのではなく、むしろ体の使い方や入れ方つまり技術と相手の動きを読む力に理由のあることです。

 フィジカルの強弱だけで一対一の優劣は決まりません。フィジカルはあくまで一要素にすぎない。私は一対一は「強い」と表現されるよりも「上手い」と表現されるべきなのではないかと思うときがあります。

 けれど、一対一とは、すなわち当たりの強さ、ひいてはフィジカルで優劣が決まるものとの思いこみが、プロのサッカーライターや批評家にもあります。その為、一対一に強い稲本はフィジカルが強いと喧伝されます。私は稲本の足元の技術が、敵からボールを掻き出すシーンを数多く見ていますし、彼の優れたボディバランスが敵のチャージをいなしているところも見ています。当たり時と当たる部分をわきまえて、ガツンと当たるときは当たっている稲本を見てると、体の大きさが役に立ってるなと思うことはあります。けれど、何でもかんでも「フィジカルが強い」と表現することを私は少なからず、安易だと思います。

 稲本がトルシエに重用されて、何故同じぐらいの体格の他のMFが召集されないのか。私はその理由が、一般にはあまり語られない稲本の育ちの良さだと思うのです。優れた育成者の元、ボディシェイプや視野の確保、ボディバランスや空間認識能力といった、キックの軌道のように目に見えて分かりやすいものではないのですが、基礎技術の高さが根底にあると考えています。

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