ふふん。(^^)V |
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辺境の誇りというか、フロンティアはここにいます、とい優越感を私はちょっぴり持っている。自分の事ではないのに、我が事のように自慢するのはみっともない。フロンティアが比較的近所にいた事によるメリットなら私も大いに享受している、というのが正確なところだ。私が蒙った恩恵とはガンバユースやガンバ大阪の試合を手軽に見られた事だ。その中には宮本の守備をたくさん生で手軽に見られた事も含まれている。 私のサッカー観は、ガンバユースに負うところがとても多く、世間からすると、いびつなサッカー観かもしれない。「いびつ」と言いながらも、誇らしげに語るのは始末が悪いことだろう。しかし、「いびつ」であると世間一般との違いを指摘する事に、何が潜んでいるかを洞察してほしいのだ。 クラブユース出身者の技術と高校選手権出身者の技術の志向は明らかに違う。キックの軌跡ばかりが技術じゃないのだ。体の使い方にも技術があるのだ。トラップにしてもそうで、ぶれる事なく止めるだけでは志が低い。次のプレーのために、次の進路のために、トラップの位置まで自在にコントロールできないと、と私は思うのだ。チャージのいなし方や敵のプレスのかわし方、そこにも重要な技術があることを私はガンバユースの選手に教えて貰った。 ボディシェイプやルックアップなんて洒落た言葉を、私はずっと長い間知らなかった。しかしガンバユースの試合を見て、ダイレクトパスに潜む確かな技術とそれを重要な技術として教育した先見性を教唆されていたのだ。だから私には中村や遠藤のプレーが遅く見えるし、小笠原のプレーはスムーズではないと思うのだ。 今年の春、ガンバは大変な苦境にあった。それでもこんなプレーがあった。宮本から出されたパスを稲本が浮き球のまま2回タッチして左サイドの新井場に渡し、新井場は眼前の敵と対峙しつつノールックヒールボレーで中央の山口へと渡し、山口は前線右に出ていた二川にボレーではたき、二川はそのボールを胸トラップし、胸から下へ落ちるときにシュートした。シュートは枠を逸れたがこの間わずかに10秒だろうか?全くボールは地に着くことなく、宙を舞い最終ラインから数人の意志を介して前線まで運ばれた。観客が「うおぉ」と、どめよいたシーンはこのネット上でも語られなかった。そして記者も記事にしなかった。このプレーを正確に誰が評価できるのだろう。今このときに起こっている変化の事の本質など、殆どの人間は分からない。私も分からない人間のその一人である。記者やサポがあのプレーを無意識にせよ黙殺したのは、身を弁えた態度だったのかもしれない。 不遜を顧みず、推量してみよう。あれは明らかにチップチームでも技術思想が大きく変わる産声であった。受け手と出し手の両方が高い技術を持っていないと、顕れない効果だった。新井場のケガ中、稲本は長い間ガンバで孤独だった。たまに橋本が起用された。大黒と二川が昇格しても、すぐには出場できなかった。しかし今年になって山口が加入し、新井場が治癒し、二川、大黒の出場時間が長くなるにつれて、一挙に技術レベルが変わった。水面下では、ずっと進行していた流れが、一気に堰を切ったように表面に顕れてきたのだ。それは個人レベルの修得技術のレベルアップではなく、優れた育成システムや先進的な技術思想が日の目を見たことこそが重要なのである。奇跡のような天才の存在を、少ない確率がヒットするのを心待ちにするのではなく、環境が育成した、まるで優秀な日本製品みたいな選手による組織サッカーを夢見ることが可能になったのだ。 高校サッカーが首都圏開催になり、高校のみならず近畿地方のサッカーが衰退したというのは、たぶん本当だったのだろう。けれどそんな凋落する環境の中でずっと未来の日本を背負える選手の育成を目指した人達が居た。中心にいたのは、近頃評判の悪い元カリスマFWである。しかし彼のビジョンは正しく未来を捉えていたし、その為にその時何が必要なのかも分かっていたから、指導者の人選も正しかった。カリスマFWのネームバリューでそのフットボールクラブに入った少年も多かったことだろう。昨今の批判ほど、元カリスマFW氏は日本サッカー界の未来に仇なすばかりの人物では決してない。向いていないポストに就任したのは本人にもクラブにも不幸な事だったが、それとて長期的な視点で見れば不幸な事ばかりではなかったと思う。 大阪では、後進性が逆に優れたJユースを育てた観が現在は否めない。サッカー特に、高校サッカーがもっと近畿地方でも盛んであれば、おそらく今のガンバユースのアドバンテージはそんなになかった事だろう。いずれの日にか、今のガンバの育成システムも必ず古くなる。なまじ優れたシステムを構築してしまうと、なかなか新システムへの移行は難しい。その時にはまた別の地域で、優れた新しい育成システムが根付いていたりもするのだろう。そう思うからガンバユースに永遠のアドバンテージがあるとも思っていない。辺境の誇りを、私が自慢していられるのはあとどのくらいの事だろう。だから今のうちに、うんと自慢しておこうかな? |