宮本イメージの変遷 |
「ただ有明の」トップに戻る |
98年当時のガンバはJリーグでももっともあたりの激しいチームと見られていました。 稲本や小島が都並や本田をマンガのように吹っ飛ばすシーンは何回も見れました。この傾向は、ガンバユースにも見られフィジカルコンタクトの激しさは今も続くガンバのチームカラーで、そのなかでボランチを務めていた宮本がフィジカルコンタクトに強いあたりの激しい選手と見られていたのは言うまでもありません。つまり、宮本は身体能力の高い選手と漠然と分類されていた節があるのです。 この当時は頭はいいけど大阪でも比較的郊外に分類される河内の富田林のニイチャン、どっちかというとあか抜けない土の香りのするイメージがありました。このころの宮本にクレバーという定冠詞を付けていたファンはどの程度いたのでしょう?私は、ごつごつと体をぶつける、あたりの強い無骨な選手という印象を持っていました。 恥ずかしながら、私は、この当時の宮本を大した選手とは思っておらず五輪代表のキャプテンに選ばれたのも正直言って以外でした。自分の不明にただただ、恥じ入るばかりですが、当時の自分を思い返すと、宮本の何がいいのか分からない人たちが、未だにたくさんいるのも納得がいくのです。 宮本イメージは、98年の五輪代表アルゼンチン戦から様変わりします。流麗なラインコントロール、名門私立大学の大学生キャプテン。文武両道の人、クレバーなDFという、今まであたりの激しいボランチというイメージに隠れていたクレバー、スマートというイメージが肥大するとともに、何故か宮本は背の低い、線の細い、フィジカルに不安のある、まるで明治時代の病弱な帝国大学生といったイメージに置き換えられてしまいます。 これは、東京系のマスコミや全国のファンがそれまで宮本をそんなに見たことが無く、自分たちの頭の中にある典型的なインテリのイメージに宮本を当てはめたことが原因で、他の地方の人は大阪の風俗文化、土地柄を知らないため、大阪=都会的、同志社大学=高偏差値、ガンバ=松下電器(大企業)というステレオタイプなイメージのフィルターを通して見てしまった為だと思われます。 現在、ネット上のあちこちに見られる宮本批判の多くがインテリに対する反感、高学歴者に対する反感が根っこにあるように見うけられますが、これは、宮本の持つインテリイメージに対する過剰反応で、宮本という選手のプレースタイルや人となりとは全く無関係なのは言うまでもありません。 私は、ファンの中にはスタジアムに何回足を運んでも、選手のニックネームとイメージを覚えるのみで、サッカーを全く見ていない人もたくさんいるのですから、宮本にクレバーなインテリイメージがついて回ることは仕方のないことだと思います。しかし、イメージで選手を見て、記事を書いてしまう記者やライターとなるとちょっとどうかなあと思います。 また、ガンバサポーターは、ガンバ大阪選手の技術の高さに目を奪われるあまり、彼らの持つあたりの強さを忘れがちであったことも否定できません。 イメージの一人歩きは驚くべきもので、宮本イメージの置き換えはガンバイメージの置き換えさえ引き起こしました。ガンバ大阪の持っていたあたりの激しいフィジカルコンタクト重視のサッカースタイルは変わっていないにも関わらず、F3採用時頃からはプレスのきついチームには弱いという評価をマスコミから与えられることになりました。 つい一年前まではガンバ大阪をプレスのキツイチームの代表格にあげていたことはすっかり忘れ去られるに至ったのです。 ガンバのプレスのきつさがJリーグで今も群を抜いていることは00年セカンドステージでガンバに破れたFC東京の大熊監督の口から語られることになります。 ガンバのプレスに翻弄されるFC東京の選手達に対して大熊監督はハーフタイムにあんなきついプレスは90分続かないと後半のチャンスに期待しましたが、ガンバのプレスは90分緩まなかった。 大熊監督の他のJリーグチームとの対戦で得た常識を超えたガンバのプレス。これは、昔からのもので、宮本もそのガンバでユースから育った選手なのです。この選手が何でフィジカルに不安があるのでしょうか? 現在、ガンバユース育ちの宮本や稲本は1対1に強く、特に宮本はヘッドも強い選手の代表格にあげられることが多くなりました。しかしこれは、選手のイメージが実際のプレーに近づいてきたことによるところが大きく、実際の選手の精進に対する正当な評価とは言えないと思います。昔から稲本や宮本はそんな選手だったのです。 名古屋以西のJリーグチームがマスコミでもてはやされることは少なく、なんと言ってもサッカーファンが多いのは関東地方であることは厳然たる事実なのですから仕方のないことなのでしょうが、関東のファンには関東のチームだけ見ていても日本のサッカーは分からないよ!もっとあちこち出掛けた方がいいよ!と言いたいし、北海道や東北、名古屋、近畿、中国、四国、九州のファンには自分たちの地元のチームに自信を持って、もっと情報を発信しよう!そうしないと、他の地方のファンはいつまでたっても分かってくれないよ!とハッパをかけたいのです。 私は、2002年ワールドカップの開催それ自体よりも日本中にスタジアムが建設されることの方がよっぽど意義があるし、代表戦も今後は北海道から九州まで日本中で開催されることが有意義なことだと思います。 |