日韓戦での視線
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一般的には技術では「日本>韓国」という評価が日本国内では支配的である。けれど、技術評価をするに当たってセットプレーに象徴される「キックの軌跡」と「ドリブルしている時間」の比重が日本では重すぎるため、真の重要度ほど評価されていない技術で韓国は今もって日本よりも優れている部分があるのではないかと思っている。

12月20日の国立でその思いを再認識した。私の視線の先にあるのは「トラップの位置」だった。韓国の選手のトラップの位置を見ているとその選手の利き足を知らなくても、ちゃんと蹴る足は分かるが、日本選手のトラップの位置からその選手の蹴る足を特定することは韓国に及ばない。

例えば小野や酒井ならトラップの位置を見れば蹴る足が分かる。同じシドニー五輪世代でも明神、中村、柳沢、松田は程度の差があっても問題がある。

トラップの位置で蹴る足が分からないことにはどういう問題が潜んでいるのだろうか。興味深い記事が2000年11月26日の日本経済新聞にあった。ガンバ大阪の上野山育成担当部長と稲本との会話からはじまる記事だった。抜粋すると「うちの下部組織育ちの選手ってボールのけり方がみんな同じ(稲本)」「彼らが似ているのは、45度前にさっとボールを置いてけること。置く所が決まればキックも決まる・・・(上野山)」「・・・相手のどちらの足を狙うかまで、神経を使わせる(上野山)」

トラップの位置で蹴る足の判別がつきにくいというのは、次のキックが決まってないか、トラップの技術が低いからなのである。逆にいうと少なくとも韓国は、フル代表レベルでは日本よりもトラップは上手いし、次のプレーに対するイメージも早くに持っていることを示唆するのだ。

ボールを受ける前の状況判断に基づく、早いプレーの重要性には認識が高まってきている。しかし、その早いプレーを可能にするためには必要な個人戦術と技術が色々とある。ルックアップ−ボディシェイプ−トラップ−キックと手順を書いてしまえば「強化指導指針」でしょ?と答える人もいるだろう。そのとおりでもそれを自分の言葉で説明して見ると実にたくさんの言葉が必要になる。つまり簡単に言い表されているのがその背後にはたくさんの個人戦術や技術が詰まっているのだ。しかし、字面の上で理解しても、現実のプレー評価に結びついていないのだ。中村のタッチ数の多さが問題なのも、プレーの選択肢の狭さもトラップとトラップ前の個人戦術と技術に難があるからなのに、それを指摘することなく「技術は最高!」という折り紙が中村にはついている。

トラップの位置を見れば、韓国の方が日本よりも得意としている技術や個人戦術があることが分かる。しかしこのことは一般にはあまり指摘がない。一対一でなぜ韓国の選手は日本の選手よりも強いのか。韓国選手が口にする言葉を鵜呑みにすることない。「愛国心」や「歴史的背景」などに回答を求めなくても、目に見えるプレーの中にちゃんと答えはある。一対一の場面を因数分解してみると分かることだ。抜いた、抜かれた場面のどこに「愛国心」や「歴史的背景」があったというのだろう。

日本代表の個人技術はフル代表レベルではまだまだ、傑出した個人の才能に頼っている部分が大きい。しかし稲本や酒井のように優れた育成環境が育てた選手によるレベルアップもはじまっている。今は韓国に劣っていてもいずれ日本の方が優位に立てる目が十分にあるから、この点については悲観することも無いと思う。

残る不満はプロアマ問わず、批評者の評価基準である。技術の構成要素において「パスの軌跡」と「ドリブルの時間」が占める割合が高すぎるのではないか?ゴールに到る、或いは失点を防ぐという究極の目標にそのふたつが関係ないわけではない。しかしその二つで技術全てが計れるという指標でもないのだ。ヘディングの強い上手いも身長とは必ずしも一致しないのと同様だが。

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