二つのジュビロ戦〜月は東に、日は西に〜
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仙台スタジアムメインスタンドSA席で天皇杯準々決勝を見てきました。結果は二川のVゴール勝ち。これは技術の勝利と言っていいかと思います。ガンバは大黒柱の稲本宮本のみならず、主力の新井場、ビタウ、ニーノブーレも不在。飛車角金銀抜きです。対するジュビロは高原が欠場してるぐらい。でも、日韓戦に多くの選手を送り出したというハンデがあります。中二日ですからコンディションに影響があったはずです。昨年ガンバもソウルでのU-22日韓戦のあとはボロボロでした。

試合早々は互角ないしガンバペース。柳本のCBは案外、サイドバックの時と違って守備が固い。彼を見ていると筋肉とスピードはあるに越したことがない、と思います。

ところでこの試合もそうなのですが、ガンバが勝つと困る人たちでもいるんでしょうかね?山口の2枚目のイエローはたしかに後ろから行ってますけど、あれを取るなら・・・っていうのはそこに到るまで幾つかありました。昨年の天皇杯準決勝でのひどい副審も見たから、ガンバだけが意地悪されてるのでもないのかもしれません。でも、オフサイドも2本は見逃してたし、ガンバのGKになるはずがジュビロのCKになってるし。国立の決勝がガンバ対ヴィッセルとかガンバ対セレッソになったらどうしようって頭を抱えてる人たちがいないことを心からお祈り申し上げます。

でもそんなこと構ってられないよという風情で淡々とプレーする二川は、相変わらず上手いし強い。小柄な体で福西に当たり負けしないし、名波も手を焼く。一対一に強いというのはこういう選手のことをいうのだ。しまいにはジュビロはサイドでボールを持ってる二川に3人で守備をするんだから、もともとコンディションが万全でないのに、余計しんどいことだったろう。都築の反射神経と瞬発力系筋力はもちろん立派だが、後半の怒濤のジュビロの攻撃が決まらないのは、そのあたりにも理由があったのではなかろうか?二川はもちろん橋本がボールを持つと、技術の劣るジュビロの選手は一対一では3:7ないし4:6で負けてしまう。ガンバの攻撃が大したことないぶん、ボールは最終ラインで取れていたけど、中盤の選手は疲れたことだったろう。フィニッシュの精度が落ちるのは仕方のないことだった。

さて、だったらなぜ後半あんなにも押し込まれていたのか?という疑問もあるだろう。それは後半にはゾーンディフェンスが崩れて木場や柳本が人についていてしまったからだ。副審が大きなオフサイドでないととってくれないという問題もあったのだが、Pエリア付近でラインが凸凹になっていたからだ。なんとか守れたのは、柳本の体の強さと木場が安易に敵の足下に飛び込まなかった賢明さが入れ替わり立ち替わり当たったからだ。

とはいえ、ようやくクリヤするとか都築がボールを弾くことが精一杯になってきて、小島もすっかりサイドバックに成り下がってしまったので、攻撃なんかしてる暇がなかなかない。これを修正したのは、ピッチ上にいなくても王将の宮本である。延長戦の前、宮本は10人になってしまったガンバの選手一人一人に声を短くかけていた。あの分かりやすい腕と手の指示はスーツ姿だって健在である。スタジアムの上から見てても、サイドではウェーブを使えとか、ラインをもっとフラットに、とかジュビロが押し上げてきたときのサイドから入ってくるボールやサイドチェンジに対するケアの仕方を伝授しているのは見て取れる。延長戦の前には早野監督が円陣の真ん中には行ってスタッフや宮本も交えて、声をかけていた。

延長戦の開始早々ラインの凸凹が随分マシになった。それと同時にオフサイドラインが機能しだした。後半終了間際とは戦況はずいぶん違っていた。宮本の指示は的確だったのだろう。早野監督の選手起用も良かったが、ゲームプランの勝利というよりは、ガンバユース育ちの個人技術で勝負あったと私は思う。

終焉を迎えつつある時代の人には、因数分解できないかもしれないが、二川の一対一での強さや橋本のキープ力は論理的な技術に基づくものである。福西対二川の勝負での、二川の腕の使い方やフィジカルコンタクトの当たりどきと体の当て方をボールの動きと同時に見ればいい。橋本のドリブルでは、彼の足からそんなにボールが離れてない事を中村俊輔や市川大輔のドリブルと比べてみれば良いことだ。そんなことは「積極性」などどいうメンタルの問題ではない。目に見える技術である。不信に思うなら、Jユース杯を見に、長居に来ることをお勧めしたい。今年のガンバユースは収穫年であるから、ガンバユース育ちに共通の「技術」がたくさん見ることができる。私の狭い見聞の範疇だが、どことも違うサッカーが関西のJユースには芽吹いてる。



23日には長居でもう一つのジュビロ戦を見ることが出来た。Jユースカップのガンバユース対ジュビロユースだ。試合は4対1、圧倒的なガンバユースペース。殆どの時間帯、ジュビロ陣内で試合は進む。ガンバユースから、殆どボールの取れないジュビロユースはどれくらいボールに触っていたのだろうか。

いくつか、気のついたところを書いてみよう。一番目につくのは、ガンバの攻守の切り替えの速さ。ボールの出しては相手の使いたい足めがけて、正確に蹴る。受け手はトラップで次に進みたい方向、かつ、利き足の斜め前にボールを落とす。ヘディングでクリアするときも、必ずパスになっている。これだけのことで信じられないぐらい早い。自陣ゴール前にあったボールがあっという間にシュートチャンスになっている。ポイントは「正確」ということだろうか。ジュビロユースも意識づけは出来ていたのだと思うのだが、「正確」さで、ガンバユースには及ばなかったようだ。

それとヘディングは殆どガンバユースが勝っていたのだが、頭頂での山なりヘッドはほとんどない。相手が落下点を読み間違えていることを見越して、ルーズボールの跳ね返りを待ちかまえるプレーはこの試合でも行われていた。全ての選手が出来るわけでもないだろうが、二川は孤立した才能ではないのだと実感した。

それとストライドの広さ。ストライドが広いとどういうメリットがあるのか、ハッキリとは知らないのだが、ドリブルのスピードが出る。ドリブルからキックに移るときにストライドが細かくならないのでキックのタイミングが読めない。などの利点はあるようだ。ジュビロユースはドリブルからキックに移るときに、歩幅が細かくなりタイミングを合わそうとするので、スピードが落ち、次の展開が推測されてしまう。これは改善点ではなかろうか。

大黒、二川時代のガンバユースと違い、曲芸のような浮き球のパスは殆ど見せないし、サイドチェンジも少なくなっているのだが、味方のフェイクにだまされることは少なく、パスが正確に繋がる。アントラーズ戦の後座試合でパスミスが多かったことを併せて考えれば、メンバーが入れ替わるとこのチームでもパスが繋がらなくなるのかも知れないが。

最終ラインは、3.5バック。臨機応変のラインディフェンス。見ている限りでは、ルーズに見えるのだが、何回かオフサイドを取っている瞬間には真っ直ぐになっている。オフサイドトラップをかける瞬間は全く読めなかった。わざと分からないようにしているのか次の試合で注目してみたい。非常に高度なことをしているのでは?と思う。

最終ラインの統率者は井川君らしいのだが井川君が攻め上がっているときも全く精度が落ちない。だれが統率しても水準が保てるようなのだ。「柔軟な」とか「変幻自在の」などの形容句はこういう守備にこそ使ってほしいものだ。

また、どういう事なのかよく分からないが、立ち方に注目してしまった。ダンブリーに似ている。立ってる姿がガンバユースだけ外人だ。私の見聞では、中国人やモンゴル人などアジア人でも歩き方、立ち方だけでなく、座り方さえも個人差はあれど、文化的な身のこなしの一定の傾向は見て取れる。立ち方、歩き方などの日本人の身体は学校体育で随分西欧化したそうで、教育で作ることが出きるそうなのだが、ガンバユースは選手の体の使い方をさらに西欧化するべく、教育したのだろうか?気になったので、2試合目のベルマーレユース、ヴェルディユースでも見てみたのだが、ブラジル風の動きをするヴェルディの10番は、またちょっと違うようなのだが、他の3チームの選手の立つ、歩く、走るシルエットは日本人の動きだと思う。ガンバユースは何をしようとしているのか気になる。

ジュビロの選手に何回か1対1でサイドからドリブルで抜かれたので、まだ、問題点もあるのかなあとは思います。

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