ピクチャー・ポーズ in サッカー
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ピクチャー・ポーズという言葉をご存じだろうか。ワルツ、タンゴなどのモダンダンスでダンサー達が一瞬静止して、男と女の体のラインが作る美しいフォームを形成する。決めポーズといっても良いだろう。踊りの流れの中で、体を動かすということから生み出される機能美を、わずか一小節の間、動きを止めて見せてくれるのだ。

サッカーにおいても、ピクチャー・ポーズは存在する。ただし、それはほんの一瞬のもの。私たちは、むしろ写真の中にそれを見いだすことが多いだろう。キックの瞬間。ヘディングの瞬間。トラップの瞬間など。スポーツ写真で美しいと思った人は多いのではなかろうか。

私が、最も美しいと思うのは、中田英寿のキックの瞬間。軸足は安定しどっしりと立っている。振り抜いた足の伸び。体の回転としなりを利用しているので、上体は絞ったように見える。肩を使って、回転を作っているのだろう。何より腕の振りが美しい。早く、強いキックを蹴るには、腕の振りが大事なことがよく分かる。安定した軸足の上に全てが乗っているところは、建築の機能美を彷彿とさせ、頭の位置、足首や膝の角度など私にはわからないが見る人が見ればわかるんだろうなと思わせる。

優れたキックは蹴る瞬間に形成されるフォームが美しい。ガンバの稲本、二川などが早く強いキックを蹴るときの腕の振りはスタンドで観戦していても楽しめる。大きく腕を伸ばして上体の回転から生み出される力をボールに乗せている。この腕の振り、腕の伸びの美しい選手は意外に少ないのだ。技術は必ずしも足元だけにあるのではない。稲本のキックを見ていると、大きく前にけり出すときは腕は上に上がり、サイドチェンジをするときは腕は横に広がる。

そして、ヘディングの美しさ。私が高く美しいと思うのは、播戸のヘディング。高く飛び上がった後の空中での体のしなりなら、宮本。私は、クレバー・リベロ氏から宮本と西澤のヘディングの空中での体のしなりについてご教示いただいたのだが、確かにNBAの選手のシュートシーンのように、空中で更にもう一度伸び上がる、若しくは、体をしならせる動きは美しい。のだが…、実はヘディングの美しさは、あまり堪能していないのだ。なかなか、美しいヘディングシーンの写真に出会わないことと、あまりに一瞬に過ぎるため、見逃してしまうことが多いためだろう。

こういう視点でプレーを見ていると、ガンバユースの選手のロングキックの精確さは論理的であるというべきだろう。Jユース杯を見ていると、一昨年に比べてワイドなサイドチェンジは減っているもののガンバユースのロングキックは他チームに比べて精確で、多い。精確なロングキックを蹴れるから多用するのだろうし、ロングキックを戦術的に使うため訓練をしているのだろうと推測される。ガンバユースの選手の長いキックを見ていると、腕の反動も使って全身のバネを余すことなくキックの推進力に使っているようにみえる。しかしこれはボールを遠くに飛ばす推進力だけに効用があるのではなく、正しい姿勢で重心をぶれさせれることなくキックすることで精確にボールにミートし、狙ったところに精確にボールを飛ばすことに寄与していることと思われる。

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