最も洗練された
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 高校サッカー選手権については、生観戦していないこと、あくまでも高校教育の世界の中で実施されている大会について、どの程度まで発言していいのか判断がつかなかったこと、それに、プロを目指している選手と、必ずしもプロを目指しているわけでもなく高校のクラブ活動の延長線上でプレーしている選手を同じように俎上に上げて無責任に議論を垂れ流すネット界の風潮への反発もあり、あえて、発言しないことを選択していた。

 今回、高校サッカー選手権についてクレバー・リベロ氏の寄稿を頂いたが、氏の持論とされるユース年代の選手を評価する際の配慮が感じられ、嬉しい限りである。

 私も、クレバー・リベロ氏への返答という形で、遅蒔きながら氏の配慮を見習いつつ草津東というチームについて私見を述べてみる。

 草津東の試合については、桐蔭学園戦、星陵戦、青森山田戦、そして決勝の国見戦をTVで観戦することを得た。それ以外のチームの試合も数試合をTV観戦することが出来た(一部はダイジェスト)。ただし、録画して詳しく検証したわけではない。4試合の観戦の中で草津東というチームが私に与えてくれた印象は、最も洗練されたチームというものだった。クレバー・リベロ氏は「ダイレクト・パスの交換」をこのチームの魅力の第一に上げておられるが、同感である。草津東の選手達のグラウンダーのパスは丁寧に送り、しばしば、繰り出される浮き球のトリッキーなパス、時にはヒールパス等を織り交ぜたタッチ数の少ないパス交換は非常に洗練されており、ボールコントロールの巧さを伺わせるものだった。トラップも、必ず次のプレーを意図した方向にボールを落とし、相手選手とボールの間に、体を入れてブロックしながらドリブル突破に移ったりするプレーはガンバユースを彷彿とさせるものがある。私は、少なくともこの大会で私のみたチームの中では最も洗練されたチームに草津東をあげたいと思う。私は、長居でJユースカップを見る機会もあったが、草津東はパスの際のボールコントロール、タッチ数の少なさ、受け手の次のプレーが最もしやすいところにパスをおくる丁寧さ、次のプレーを意図したトラップ等の技術に置いてJユースカップの準決勝に進んだ数チームの中で、充分上位に入ると考える。この点に置いて、しばしば耳にする高校、ユースと無批判にプレースタイルを色分けする考えには私は反対だ。

 決勝の国見戦は完敗であったが、私は次のような理由があったと考える。第1に日程の問題。間に休養日を与えず準決勝、決勝を闘うのであれば、持久力、体力に優るチームが有利である。第2に草津東がスペースに出すパスを多用したこと。パスを出した瞬間にはフィフティであっても、2連戦80分闘っても体力の落ちを感じさせず、ダッシュ力に優れた国見相手では、出足の速さで負けてしまう。第3に浮き球パスの多用。浮き球パスはクレバー・リベロ氏も指摘されるように、実力差がかなりないとインターセプトのチャンスを与えるだけである。これは、98年ユースカップで最も強かったと思われる大黒兄弟、二川時代のガンバユースが決勝に進出できず、ガンバのトップチームがしばしばパスカットされていることでも明らかだろう。(ちなみに、2000年の優勝したガンバユースはグラウンダーのパス主体のチームであった。)第4にトラップの際に、しばしば、国見選手にボールと自分との間に体を入れられてしまったことが上げられる。ダッシュ力に優る相手には、より慎重なトラップが必要だったのだ。以上を一言で言うならクレバー・リベロ氏も指摘されているように、草津東がガンバユースほどの精度を持ち得なかったことが敗因として上げれるだろう。

 草津東はその技術に置いて優れたチームであり、そのレベルはJのユースに比べても上位にランクされるもので、更にプレー精度を上げることで他の強豪校とこれからも渡り合っていけることだろう。その事例として、99年Jユースカップ決勝のヴィッセルユース対F・マリノスユースを上げたいと思う。選手の体格、走力で圧倒的に優るF・マリノスユースが前半主導権を握ったが、後半は、技術に優るヴィッセルのプレスに苦しみ現在トップで活躍している森を中心としたヴィッセルに中盤を支配され、ボールを奪うことが出来ず、ヴィッセルユースに優勝をさらわれてしまった。

 しかし、と私は思う。チームづくりとしては、国見の方が正しいのではないか。高校選手権の優勝は、高校という時空間のなかでは最終目標なのも事実なのだ。優勝を目指すのなら2日で準決勝、決勝の2試合を戦い抜く体力を養うのは当然のことなのではないか。体力、持久力に優れたチームを育成するのは、選手権の優勝を目標とするならば当然のことではないのか。国見は優勝を目指したチームを作り、そして、優勝した。たたえられて当然だとも思うのである。国見のチーム作りは批判されるべきではない。批判されるべきなのは、むしろ、タイトな大会日程だろう。(現在のJユースカップはもっとゆったりした日程で闘っている。)

 最後に、草津東がガンバユースの面影を持つことについてであるが、私も偶然同じ事を考えていて、何人かの人に理由を聞いたのだが、はかばかしい答えを得られなかった。

 私の場合、ガンバユース、草津東に、昨年の選手権の関大一高、ヴィッセルユース、交野FCに共通点を感じる。まだ見ていないチーム、例えば、高槻FC、セレッソユースなども通じるものがあるかも知れない。私は、これらのチームの結節点として(確かに地域性もあるのだろうが)釜本氏の育成方針があるのではないかと推測している。かつての釜本FCが、現ガンバユースの母胎になっていること。釜本氏の薫陶を受けた人材がガンバ、セレッソのユースのスタッフであること。釜本氏の指導に影響を受けた人材であれば、高校、クラブを問わず近畿一円に広く分布していてもおかしくないことがその理由だが、あくまで推測の域を出ていない。

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