看板にいつわり有り
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ISIZEの中村英司氏のコラムを読む機会を得た。
『・・・様々な憶測や多くの期待を含んだ情報からではなく、客観的事実に基づいて宮本選手ウェストハム移籍問題を改めて検証してみたい。・・・』

とする氏の立場にはその志や良しとするものであるが、やや、氏は、その志をこなし切れておられないようである。

 一般に、二カ国の関係史の論文を書く場合、片方の国の情報のみに基づく、若しくは過大に評価すると誤った結論に到達してしまうことは、周知の事実である。氏は失礼ながらこのトラップにはまってしまわれたようだ。そういった論攷を書く場合の基本的な姿勢の問題だけではない。

 氏の掲げておられる「客観的事実に基づいて」という姿勢をとって、ジャーナリストとして活動されるのであれば、新聞情報や文書等の二次情報ではなく、取材が必要であろう。少なくとも、宮本本人、宮本の交渉実務担当者、ガンバフロント、ウエストハムフロント、そして氏の紹介されるように監督の権限が強いのであれば、ハリー・レドナップ監督の五人に生の声を聞くべきだ。できれば、オリンピックのブラジル戦を視察したとされるウエストハムのスカウト担当者にも取材すべきであろう。しかし、氏のプロフィールを読む限り、英国リバプールで学業に取り組まれている由であり、日本国内取材が出来たのか?疑問である。さらに、氏は静岡県浜松出身で東京の大学に通われていたそうであるが、日本在住当時にガンバ大阪の情報をどの程度的確に把握されていたのであろうか?ガンバのフロントについて安易に氏が排除しようと務められている「憶測」にとらわれてしまっているのではなかろうか。氏の在住地からは比較的取材しやすいはずの、ウエストハムフロント、ウエストハム監督について、記事から見る限り取材した形跡がないのもどうしたことであろうか?ウエストハムのチーム事情も移籍情報を基にした推測にすぎないし、氏の文章で客観的事実と思われるのは英国のサッカー選手のビザ取得制度のみである。それすらも、法なのか、規則なのかそれとも単なる内規に過ぎないのか最も重要な部分が欠落している。特認条項があるようであるが、目新しい情報もあり氏の取材を全て否定するつもりもないが、特認条項について記述されるのであれば、過去の適用事例の先例調べをすることは、実務法律家にとっては最低限の「お約束」だと思うが、氏はそこまで英国の移籍事情に精通されていないのだろうか。

氏の言及されないガンバ大阪のフロントは、新聞情報を丹念に読んでると、買い戻し特約、移籍金の分割払い、支払時期など、色々なオプションを付けようとしているようだ。

昨年の早い時期には、今回の移籍について消極的な姿勢をとっていると報道されていたことも、氏はご存じないのだろうか。

 それと、明確な事実の誤認を指摘しておこう。

『・・・この条件に関しては、ガンバサイドはもちろんウェストハムは百も承知のはずである。ところが、彼らは一貫してビザ獲得が可能であることを主張し続けている。宮本選手の契約切れ間近の現段階においてもだ。・・・』

 新聞報道を見る限り、ガンバがビザの取得を可能とは言ったことがあったのだろうか。ウエストハムがビザの取得は可能といっていると言及するに止まっているにすぎない。ガンバとウエストハムは虚々実々の駆け引きをしているのだ。日本で新聞を見るだけでもガンバがウエストハムを完全に信用していないことは明らかだ。過去の、日本選手の移籍時に比べ遙かに交渉慣れしていると感じるのはガンバファンの身びいきなのだろうか。中村氏は、どうもその部分を理解しておられないようだ。

 色々、厳しいことを書いているが、中年サッカーファンの若者に対する老婆心からのエールと取っていただければ幸いである。

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