イエロージャーナリズムの書き手と読み手
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【原田公樹のヨーロッパ・サッカー通信】ボタンの掛け違い? 腑に落ちない宮本の移籍
を読んで感じることは、非常に巧妙に書かれているが、典型的なイエロージャーナリズムの手法を取っているゴシップ記事に過ぎないということだ。

まず、文中の言葉の主語がハッキリしない。明確に主語がハッキリしているのはウエストハムの広報の「ノーコメント」という発言のみである。『「中盤で使いたい」「身体能力は高いがケガをしやすい」「ガンバ大阪が移籍金を要求したので交渉はストップ」と細切れに情報が入ってきた』とするのであるが、主語がない。『「中盤の真ん中で使いたい」「ビザは取れる」「通訳を探している」とウエスト・ハム側の発言』についてもウエストハムの誰が発言したのか、新聞で読んだのか書かれていない。レドナップ監督の発言も新聞の孫引きである。

原田氏はウエストハムのクラブ関係者がだれ一人宮本のことを知らないということを取材したと書かれている。しかし、いつ、どこで、誰を取材したのか記述されない。もし、取材によりコメントが取れているのであれば、それを記事にして堂々とした取材記事が書けるではないか?何故書かないのか?

宮本の記事が、英国のニュースにならないのがおかしいというのも、単に原田氏の推測であって、事例を挙げて例示しているわけではない。逆に私は、別の英国在住のかたの証言でトップクラスのスターでなければ確定情報以外は記事にならないと聞いている。

肝心の宮本と稲本の間違いという部分の主語は『地元記者』という正体不明の第三者である。ガンバ関係者でもなければウエストハム関係者でも宮本の関係者でもない。つまり誰だかわからないのである。原田氏は、「宮本と稲本の間違い」という噂の発信元は原田氏自身ではないのか。原田氏の自作自演ではないのかという問いに答えられるのだろうか。
少なくとも、現在のところ別の出典は存在しない。

この記事は実に良く構成されている。正しいという証拠もないが、否定のしようもないのだ。いつ、どこで、誰が、どうして、何のために発言したのか全く分からないのだから。5W1Hが全く欠けているため検証のしようがないのだ。

たとえるなら、「宮本と稲本の人違い」という命題は「トルシエはホモである」とか「ダバディは不倫している」という命題と同じくらいに信じられる。人違いはあり得るかも知れないし、世間にはホモもいれば、不倫も多いのだ。トルシエとダバディが例外だという保証はない。本人達にも決定的な反証を出すことは不可能だろう。

賢明な読者はすでにお分かりだろう。判断の根拠には出来ない記事なのだ。また、他の事例で人違いが仮にあったとしても、宮本の事例に簡単にあてはめるのは論理的に無理があるのである。世間に良くあることでも、反論のしようがなくても、事実とはまったく無関係なのである。

イエロージャーナリズムの書き手には、巧妙な文章が必要だし、同じように読み手にもしっかりとした常識が必要なのである。

賢明な読者諸氏には釈迦に説法に違いないのだが、さび付いた中年の頭の整理として記述させていただいた次第である。

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