ストライカーはヒールでターンする |
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私は、かつて最短の時間と最小の労力でターンするには、体を開きながら、軸足をけり足の後ろに90度以上の角度を付けて置き、更にけり足の角度を変えることによって回転するのがよいと考えていた。どこかに書いたこともあるかも知れない。この踏み換えによるターン(厳密には踏み換えによる方向転換であって、回転ではない。)は、回転軸は頭頂になり体が最も安定するし、軸足は安定したままなのでプレッシャーにも強い。 私は、これがベストの回転だと考えていた。ダイレクトパスを含むショートパスの交換には便利であろうし、ドリブルの切り返しにも使えると思われるが、腰の回転を殆ど必要としないため、強いキックを蹴れないという問題点があるのだ。端的に言えば、パスには適しているが、シュートには向かないターンなのである。 では、ストライカーのターンとはどういったものなのか?私は、セレッソ大阪の大柄なストライカー達のシュートを見て軸足の上で回転していること(踏み換えではない)、その際ヒールを軸にしている事は知っていたのだが、深くは考えていなかった。PIXY10氏から、「指の付け根を中心に回転するものだと聞いている」という指摘を受けた際にも「なるほど、その通りだな」と思ったものである。 確かに、指の付け根、とりわけ親指の付け根は、人間が立ったとき、頭頂の真下に来るので、ここを中心に回転すると回転軸が最も安定するはずなのだ。理論的には、親指の付け根を中心に回転すべきである。 ところが、この回転には重大な欠陥がある。回転の初動の推進力を肩の回転で起こすことになるので、腰のひねりを引き起こさないため強いキックは蹴れない。更に、遠心力を付けて大きく回ることになるので、踏み換えによるターンよりも動きが遅くなり、体が回転しているので体の安定も悪い。 つまり、理論的に最も合理的な親指の付け根を中心とした回転は、意外にもパスの際にもシュートの際にも有効ではないのだ。 ヒールを中心としたターンがなぜ、シュートするときに使われるのか。それは、腰のひねりで体を回転させ、その回転力を使って強いシュートを蹴ろうとすると、身体全体の軸よりも、軸足そのものの軸=ヒールを中心に回転せざるを得ないからであろうと思う。 実際、西澤、杉本のシュートシーンはヒールを中心に回転しており、シュート直後にバックバランスになるため、後ろによろけている。西澤は先日見たエスパニョールでの練習においても、ヒールを中心に回転し、ボールを蹴った後、後ろに2、3歩よろけていた。 海外では、李東国が98年アジアユース決勝での決勝点をヒールターンからあげている。 このように、ストライカータイプの選手に多用されるヒールターンであるが、幾つかの問題点が指摘できる。ヘッドがどうしてもぶれるので、目視に難があるのではないか。また、キック時にバックバランスになるので、ボディバランスが悪く、DFに身体を寄せられると脆いのではないか。 強いキックを蹴るために、ボディバランスが犠牲にされているようである。私は、キックの際に軸足を曲げればバランスを安定させられるのではないかと考えているが、そうすると腰の回転を殺してしまうのかも知れない。ヒールターンによるシュートは技術的に更に改善の余地があるように思う。 この稿は、文中にもあるPIXY10氏の言葉、イナがんばれ氏の「ボディバランス」についての意見、クレバー・リベロ氏の「腰の切れる選手」についての意見、ミケロット氏の「ターン時にボールはどこにあるのか」という疑問等にインスパイアされている。 |