香港での日本ユース代表 |
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私は、テレビやビデオで見た試合について論評することは基本的に好まない。ただ、かつて実施された試合について新たな視点で再検証してみようとするとき、ビデオに頼らざるを得ないのもまた事実なのだ。以下の話は、TV画面という限られた、そしてある意味で恣意的に再構築された試合を見ての意見として受け止めていただきたい。 香港での、01年ユース代表の試合をビデオで見てみると、ガンバユースファンには日常的に見慣れた光景が展開されていた。ボールを必要以上に持たない、ほぼ、ワンタッチ、ツータッチで確実に強いボールでパスする。パスは受け手の蹴り足をめがけて出す。受け手は蹴り足でそのまま蹴るか、次にボールを出したい方向に確実にトラップする。 相対的にプレスの緩かったブラジル戦ではハッキリしないが、かなり本気でプレスしていたと思われるアルゼンチン戦では、アルゼンチン選手とボールの間に体を入れる意識ははっきりと見て取れた。西村監督の指導の賜物であろう、非常にボール回しが、スピーディに見えたのはガンバ型の丁寧なパスの交換の帰結の他ならないと考えている。 アルゼンチン戦で確認してみたのだが、相手方のアルゼンチンの選手も、ほぼ、日本と同じように、蹴り足でトラップし、パスの受け手の蹴り足めがけてパスを出していた。 確認できた中盤から前の選手は、ほとんどこれが出来ていたのだが、何人かの選手は出来ていない。私は、各選手の名前を全て知らないので名前をいちいち挙げられないのだが、右サイドでプレーしていたヴィッセルの茂原は左足でトラップして右足で蹴るシーン等が散見され、最も手数の多い選手であった。茂原は気の毒にも骨折で長期間離脱していたため、西村監督の指導を受けられなかったことが災いしているのであろうか。 ただ、私は、ガンバユースに比べるとこのチームはブロックが下手だと思う。確実に体でブロックできないので、足だけのキックになりプレーの選択肢を狭めている。相手選手との距離が近くプレーエリアが狭いと、ほとんど、自由なパスが出せない。パスの出し所を失って、バックパスが多かったのもこのためであろう。受け手が確実につなげるか全く予測がつかないのだから。 このチームのビデオとナイジェリアでの99年ユースのビデオを比べてみると99年ユースは、手数の多さが目に付く。巷間期待の高い小笠原もトラップ、体の入れ方、向き、相手の蹴り足をめがけてキックする確実さ等において随分見劣りする。いま、99年のビデオを見て感じるのは、稲本、酒井の丁寧さ、確実さだ。このような技術を、プレーのイマジネーションの豊富さと混同すべきではないだろう。 非常に奇妙なことなのだが、大手掲示板で、パスを出すときに相手の蹴り足をめがけて出し、受けるときは蹴り足で、次の進行方向にトラップするという万博では当たり前の技術について議論がなされていたにもかかわらず、香港での試合についての感想が語られないのはどうしたことであろうか。簡単に検証できる実例がここにあるではないか。 サッカーはグラウンドにしか存在しない。本や雑誌の行間や、好事家のスノッブなおしゃべりの中には存在しないし、まして、ネット上の議論の中にも存在しない。当たり前のことだが、再度注意を喚起しておきたい。ネット上での言葉の端々を捉えて議論することは、徒労に過ぎないと私は密かに考えている。プレーの端々を捉えた議論をしてほしいものだ。 あと、DFをTVから語るのは、困難なのだが、気がついたことは、DFの中澤がしばしばラインから取り残されている。石川(この選手はトップスピードのままボールを蹴ることは出来ている。)、中澤は体の入れ方が逆のシーンがあった。PKを取られた田中は、PKのシーンではボールに対して足を出したというエクスキューズがあるかもしれないが、相手の突進を足で引っかけて倒す所謂松田流アリキックであろう。 その他のプレーでもバックチャージが目に付き、アルゼンチン選手からPKプレゼンテーターとして狙われていたのではないかと推測する。 TVではハッキリしないのだが、羽田は宮本と違って、基準の形成者となってないではないか。これは、すぐに結論を出すのは拙速に過ぎので、実際に生で観戦してから、考えてみたいと思う。 |