湯浅健二氏の「振り回された日本ディフェンス・・」に苦言を呈する
「ただ有明の」トップに戻る
 このイサイズのコラムには、いくつかの疑問を感じる。まず、フランス−日本戦において中盤のプレスが機能しなかったことの例示に稲本をあげることが適当かどうかということだ。この試合では日本の中盤はその技術の低さと、最終ラインの臆病さからコンパクトフィールドを維持することができず、中盤でのボールの奪い合いでほとんど負けていた。だが、その中で、最も技術が高かったのは言わずと知れたNAKATAと稲本だったのだ。中盤で最もボール奪取に成功していたのはこの二人だった。中盤の崩壊の例示としてあげるべき選手は、中村、伊東、明神、三浦、名波であろう。にもかかわらず、このコラムでは中村、明神、三浦、名波は名前すら出てこない。これらの選手はほとんど手も足も出なかったにもかかわらずである。「稲本は、プレスアクションを外されつづけた。稲本だけではなく、日本代表の中盤選手たち全員が、フランスの素早く、広いボールの動きに翻弄されつづけていたのである。」と稲本以外は十把一絡げというのはいかにも軽率であろう。他の選手の技術の現況を厳しく批判する視点をもたれるべきであろう。

 さらに、奇妙なのは、「中盤でのプレスがうまく機能しなかったことで、最終ラインのコントロールも中途半端になってしまった。」という日本の最終ラインの崩壊をあたかも中盤の選手のせいだといわんばかりの言辞である。これは事実と相違する。日本の最終ラインはラインという名に値する時間帯は殆ど無く、コントロールのしようがない。あまつさえ、フランスに中盤でボールを取られると一目散にペナルティエリアに向かって爆発的なランニングを開始し、ラインを引き下げてしまったのは松田である。このような守備をして戦術論を語ってもおよそ無駄であろう。オフサイドラインという意識を持つこともなく、中盤からのラストパスを読みとれなかったのはスイーパーシステムの3バックの責任である。

 中盤が機能しないと3バックは機能しないと言うような、戦術思想では、中盤での戦いを最終ラインを使ってあやつる宮本の守備はおよそ理解できないであろう。湯浅氏のガンバ戦の戦評がいつも誤解と思いこみに満ちているのもむべなるかなと思う次第である。

 そして、厳しく批判されなければならないのが、『後半5分のカウンターのシーンだが、センターライン付近でアンリがタテパスを受けた。そのとき松田が、ちょっと「遅れたタイミング」でスライディングタックルを仕掛けた。松田は、確実に取れると思ったのだろうが、やはりアンリの才能は並ではなかった。スッと素早くボールを「浮かせ」、タックルする松田の足の上をスルリと抜けてしまったのである。』というくだりである。

 フランス戦をビデオ録画されている方は見返していただきたいのだが、このようなシーンは存在しない。まず、アンリにはタテパスは出ていない。アンリはこぼれ玉を拾ってドリブルを開始したのだ。また、松田はスライディングタックルなどしていない。例の足を四股立ちにして突っ立つ相撲ディフェンスをしたのである。そのため、横をすり抜けられ、全く動くことのできない松田は、ボールを持っていないアンリの足にアリキックをお見舞いするというイエローカード、悪くするとレッドカードでもおかしくないラフプレーをしでかしているのだ。このラフプレーはアンリが上手かったことと松田の技術が低かったことが幸いしアンリに冗談のようにすり抜けられてカードをもらわなかっただけである。このプレーは『ちょっと「遅れたタイミング」』が問題なのではなく、Jリーグでもしばしば見られる松田の守備技術の低さを象徴するプレーに過ぎない。当たり前のことであるがアンリは『スッと素早くボールを「浮かせ」』たりしていない。松田がアリキックを見舞ったときはすでにボールはアンリの足元にはなくアンリの前方を転がっており、松田は明らかにアンリの足を狙っている。

 湯浅氏が何に基づいてこのコラムを書いたのか知る由もないが、自分の記憶をビデオでチェックするという程度の基本的作業を怠ったのはもはや明らかであろう。いやしくも、プロのコーチであり印税収入を得たこともあるプロの物書きの各文章としてはお粗末すぎないか。猛省を促したい。氏の文章を読む多くのサッカーファンのため一日も早く訂正文を出されるべきであろう。

 少なくとも私にとってはこの後半開始5分のプレーは日本のとりわけ松田の技術の低さを象徴するようなプレーでおよそ間違えようがないように思えるのだが、湯浅氏はスタジアムデ観戦された由であるが、一体どこで見られたのであろうか。謎である。

ロゴ「トップページへ戻る」