コンフェデレーション杯 日本対カメルーン
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 6月2日の新潟でのコンフェデレーションズカップ、カメルーン−日本戦を観戦することができた。試合結果は既に知られているごとく、まさかの2−0。日本の完勝となった。日本がトーナメントに進めたこと、追加2試合できることは大変悦ばしく、日本代表の強化には大いに役立つであろう。

 ただ、巷間語られている程にはこの勝利は興奮するようなものではなく、むしろ後から考えれば、順当勝ちといえるものであったことも指摘しておきたい。

 多くの日本人(その中には私自身も含まれる)は試合前には完全に失念していたのであるが、カメルーンは、あのシドニー五輪でさえも、全く連携の取れない、動けない、プレスに弱いチームとしてリーグ戦を闘っていたと言うことである。(五輪リーグ戦で体格に劣るアメリカからボールを奪えず、引き分けていることを想起されたい。)このチームは信じられないことであるが、リーグ戦ではほとんどチームとして機能しない。更に付け加えるならば、多くのガンバサポーターならば覚えているであろうが、2年目のエムボマがほとんど役に立たない選手であったことに端的に示されるように、モチベーションが低いカメルーン人の極端な不甲斐なさである。

 この日の試合も、異常な状況から始まった。カメルーンはキーパー以外試合前のアップに姿を見せないのだ。試合前にどの程度体を動かしていたのか?そもそもボールに触れてすらいなかったのではないか?案の定カメルーンは開始後約20分は動きが鈍い。

 迂闊にも、私はゲームが始まってから、開始10分ぐらいの動けない間に点を取ることがカメルーンと対戦するチームにとって肝要であることを思い出した。日本の1点目はまさにこの時間帯に生まれている。その意味で鈴木は見事にその役割を果たしたのであるが、DFが弱点であるカメルーンにとってもこの時間帯の失点は「お約束」であることも頭に入れておくべきだろう。

 カメルーンはジャンプ力があり、ヘディングの高さも高いのだが、ヘッドの技術自体は案外に低くボールを思ったところにとばせない。これは、五輪でアメリカの17番のポストプレーを全く止められなかったことと同じ現象である。ただし、日本はDFもFWもヘッドで競り合ったときはほとんど負けていた。日本DFがヘッドでボールを取れていたのは、カメルーンFWが、走らない、ヘッドでそもそも競り合おうとしないという僥倖に恵まれたからである。

 中盤でのプレスも死角からボールを奪うプレー、出足の速さを活かしてルーズボールの奪取、パスのインターセプトは見せるのだが、身体の接触によるボールの奪い合いはほとんど行わない。

 このため、22分に高い技術を持つ日本の中盤の選手稲本は小野に浮き球でパスを出し、小野は迷わずNAKATAへ、NAKATAは稲本へボールを返し、稲本から鈴木に絶妙のスルーパスが出ている。

 この日、最も活躍していたのは稲本と小野である。稲本と小野が攻撃の起点となっていた。スルーパスもさることながら、1対1でのボールの取り合いでは、稲本と小野はカメルーンと互角に戦えたと思う。ただし、カメルーンがどの程度本気だったかは割り引かねばならない。

 一方日本のDFは問題が山積である。この日のDFは漫然と見ていると比較的安定し、森岡のラインが、ふだんに比べ高く保てていたと見えたのではなかろうか。これにはカメルーン側の理由がある。カメルーンはおそらくチーム練習不足から連携が悪くラストパスは、ほとんど通らない。2トップはピンポイントのフィード以外は取りにいこうとしないこともしばしばで、ロングフィードのチャンスにオフサイドポジションをのんきに歩いていたり、プレッシャーはかけない。オフサイドを気にしない。ポストプレーはしない。チェイシングもしない。という極めて与し易い相手であったからだ。現実に2年目のエムボマが多くの日本人DFに通用していないことを思い出して欲しい。そう、あの状態だったのだ。この試合では、だれがDFでもそこそこ守れたと言わざるを得ないのだ。

 森岡、松田はヘディングの弱さを露呈し、森岡が競り合いに一回勝った以外全敗であったが、中田浩二はかなり頑張ったと思う。カメルーンが高さはあってもヘッドが下手なのでセカンドボールが大ピンチを生まなかっただけである。

この試合で明らかになったDFの問題点を指摘しておこう。前半16分に森岡がスライディングタックルでいい感じに見えるが、その前に松田がフォアチェックに行ってかわされ、危うく大ピンチを招きかけている。フラットラインでのフォアチェックは、一か八かの守備で、後ろにスイーパーがいないと、試みるのは危険であろう。

 また、松田と森岡は前半30分に森岡が後ろに下がろうとしてスイーパーの位置に入っているのにもかかわらず、松田は逆に前進してオフサイドを取ろうとして手を挙げてアピールしている。このため、でこぼこになったラインの間に決定的なスルーパスと走り込みを許している。一体この2人はこの1年間何をしていたのであろうか。失点に繋がらなかったのは幸運といわねばならない。

 また、後半ロスタイムに他の2人のDFがオフサイドを取ろうとして半身に構えているにもかかわらず、松田は信じられないことに完全に脱力してオフサイドラインを歩いている。

 わたしは、今のフル代表の力量では90分ラインディフェンスの集中を持続することは不可能で、半分以上の時間、特にピンチで頭に血が上っているときはマンマークせざるを得ない、弱々しいシステム(これが所謂ブレイクの正体であろう)しか採用できないと考えているが、松田、森岡、特に松田のDFとしての力量不足を痛感したのである。

 松田は、TV画面では途中で切れてしまっているが、前半にカメルーン選手との1対1を止め切れていないシーンがあり、カメルーンがドリブル突破を主体にしていたら、明神と松田のサイドはかなりの確率で突破されていたと思う。

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