宮本の攻撃センス
「ただ有明の」トップに戻る
 6月23日の広島でのサンフレッチェ戦における宮本は必ずしも本調子ではなかったにもかかわらず、果敢な攻め上がりを見せた。前半のパスカットから攻め上がり、ゴール前でGKと1対1になったシーンは、宮本のあまり知られていないたぐいまれな攻撃センスを持つDFという側面をかいま見せてくれた。

 宮本は優れたラインディフェンスの統率者であるにもかかわらず、松田や森岡のようにフォアチェックを多用すべきであったとのコメントを以前出している。私は、松田のボールホルダーからのボール奪取を目的としたフォアチェックが巷間に褒めそやされているにもかかわらず、実はほとんど成功していないことに鑑み、宮本の真意を測りかねたものである。事実、6月16日のジェフ戦での調子の悪かった宮本のフォアチェックはほとんど成功していない。

 ところが、サンフレ戦における宮本は、明確にパスの受け手がボールを受ける直前のタイミングでのパスカットを目的として、チェックを行い、極めて高い確率で成功させていた。前述のシュートシーンはその帰結に他ならない。

 そもそも、フォアチェックは、パスが成功した段階でボール奪取を敢行しても成功する確率はそんなに高くない。仮に対戦相手の技術レベルが高ければ、パリでのフランス戦の松田のごとく相手に触れることさえできない。そして、チェックに入ったDFの本来の守備位置に決定的なスペースを作ってしまい、決定的ピンチを招くのが常である。

 これに対し、宮本は明確にパスカットを意図しているため、相手FWとの身体的接触が殆ど無いにもかかわらず、いともあっさりとボールを奪う。これは大分での、ユーゴスラビア戦でもわずかな時間ながら再三のパスカットを見せている。ここにいたってはじめて、私は、宮本の発言の真意とその目指すプレーが理解できたのである。

 このようなプレーを宮本は行いだしたのか。従来の宮本は、ラインからほとんど飛び出さず、チェックに入るときも相手選手へのプレッシャーを主眼とし、ボール奪取を目指さず、すぐにラインに戻っていた。

 ところが、6月以降、宮本は必ずしもライン上にはおらず、フォアリベロの位置にいることが増えているのである。従来よりも中盤に近い位置にいるため、決定的なパスカットを成功させることができるようになったのだ。昨年の香港でのメキシコ戦において松田が起用されながらも全く役割を果たすことができなかったフォアリベロ+2バックというシステムが大分でのユーゴ戦の後半に於いて、宮本という傑出したタレントを使うことにより、やっと実現できたのだ。欲を言えば、森岡がいまだにF3に習熟しておらず、すぐに下がってしまう弱点を修正すべきであろう。

 中田、松田、森岡という従来型のDF達は所謂フィードと呼ばれるロングボールによってしか前線の攻撃をサポートできない。ところが、宮本は最終ラインにいたとしても前線にスルーパスが出せるのだ。いわんやフォアリベロにおいておや。サンフレ戦においても、ユーゴ戦においても優れたグラウンダーのスルーパスがしばしば見られた。(私は、このプレーは宮本個人の天才によるものではなくガンバユースDF全体の特徴と考えるのだが)フォアリベロという位置を今後宮本がどのように開拓していくのか未知数ではあるが、日本有数の攻撃的な戦術眼を有するパサーとしての宮本はホンミョンボのアドバイスを活かし、果敢に攻め上がりラストパスを出す攻撃的なDF(松田の場合ほとんどボールを持ったままゴール前までいってしまうので、あくまで個人技に止まりチーム全体の攻撃に昇華しない。)を目指すこともできようと思うのである。

ロゴ「トップページへ戻る」