サイドアタック小考
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 「フラットスリーでは…これこれの場合が危険です。」という切り口は、私はあまり好きではない。なんとなれば、当該のプレーが分析しようとする守備システムにおいてどの程度の出現率を有するのか、全く検証することなく、かつ、そのプレーが出現したとしてもどれくらいの頻度でゴールに結びつくのかという確率を無視して、当該プレーが成立した場合のことを、いきなり議論してしまっているからである。
 このような、立論が往々にしてとんでもない結論に達する可能性が高いことは、実例を挙げるまでもなく、頭で考えるだけでわかるであろう。純粋論理だけを追ってみても、「当該プレーが実現したときは確かに失点の確率は高いが、実現できる確率は無視できるほど小さい。もしくは、サッカーにおいては得点の可能性が低いので、仮に、当該プレーが1試合に数回出現するとしても失点に至る可能性は限りなくゼロに近い。ゆえに、システムの弱点を検証するよりも、守備はそのままで、攻撃力のアップを図る方がよい。」という程度の論法によって簡単に論破されてしまう。
 たとえば、「ディフェンダーとボランチとの間のスペースを使われると…」という命題の場合、PAのすぐ手前まで下がってしまい、中盤が間延びした森岡のシステムと、常に高い位置にラインを敷き、中盤をコンパクトにしようとする意識の高い宮本のF3とでは、命題のプレーの出現率が雲泥の差であることは容易に推測できるであろう。同様に、中盤がコンパクトに設定され、攻め手の運動が制約される宮本のF3においては、「2列目からの飛び出し」というプレーについても、森岡のスイーパーシステムで試みるより遙かに実現しにくいのではないかと思っている。

 にもかかわらず、サイドアタックについて、あえて上記のような切り口によっての作文を試みてみよう。心覚え程度の役には立とうかと思う。

 前提として、自軍が相手に対してマンマークで、ほぼ、押さえきれるほどに優勢である場合は、考察そのものが無意味である。守備陣形がかなりおかしくても、大きなミスがあっても、守れてしまうであろうからである。日本の戦力が相手に対して同等か、劣っている場合が考察の対象となろう。
 サイドアタックを敢行する場合、サイドアタッカーがオンサイドでボールを受けるのか、オフサイドポジションへのスルーパスを受けるのかで大きく攻め手は異なる。スルーパスを受けるのであれば、次のプレーの選択肢は2つである。ドリブル若しくはダイレクトで自らシュートを打つか、マイナスのパスを出すかである。
 これに対し、オンサイドでボールを受ける方が、タイミング良くパスにあわせて走る必要がなく、タイミングがずれていてもよく、待ってボールを受けるというプレーが可能になり、またボールコントロールも容易に行える。なによりも、サイドアタッカーがさらに、スルーパスを出すという第3のプレーの選択肢が生まれるのだ。オンサイドの位置でボールを受けられる方が、プレーの選択肢が多く、守りにくいのは明らかであろう。
 
 宮本のF3の特徴の一つは周知のごとく、高い位置に敷設されるラインである。ラインが高いと言うことは、自軍のサイドと最終ラインとの間のオンサイドのサイドのスペースが極めて狭く、相手サイドアタッカーがオンサイドでボールを受ける機会が激減することがわかるであろう。また、自軍のサイドアタッカーが自らの攻め上がりの後ろをあまり気にする必要がなく、心おきなく攻撃できるという効果も見込めるであろう。
 逆に、最終ラインが低く設定されており、自軍のサイドの選手も低い位置に下げるのであれば、相手サイドアタッカーに利用されるオンサイドのサイドのスペースは少なくなる。しかし、自軍のサイドアタッカーが攻撃に参加できる機会は大きく減る。無理をして攻めれば、サイドから攻撃を受ける機会は大きく増えると思われる。さらに、最終ラインとボランチの間が間延びするためディフェンダーは真ん中のスイーパーの前にぽっかり空いたスペースのケアに心を砕かねばならず、相手サイドアタックに対するケアがおろそかになる悪循環に陥る。最近の例では、セネガル戦の森岡、松田、中田浩二の守備がこの例である。
 
 宮本の高い位置でのF3の場合、オフサイドの位置でスルーパスを受けるときは、サイドアタックはさほど攻撃が容易ではない。まず、ディフェンスがオフサイドトラップに長けているので、オフサイドにならないで突破することが困難である。ダイレクトにシュートを打っても遠い距離からなので決まる確率が低い。さらに、ドリブルで切れ込もうとしても、真ん中のDFがゴール前に戻る方が距離が短いため、容易に追いつかれてしまう。
ナイジェリア戦で宮本はこのプレーを実践している。
 サイドアタッカーはマイナスのパスを出そうとしても、相手のゴールライン際まで長い距離を走らねばならないし、相手のDFが一目散に戻ってオフサイドラインを下げてくれなければ、オフサイドになるので、ゴール前にパスの受け手自体がいない。DFにゆっくり戻られると、センタリングが有効なプレー
にならない。
 サイドアタックによるセンタリングはDFの戻りに依存する部分が大きい。JリーグのFC東京戦において宮本はサイドを突破するアマラオより意図的に真ん中をゆっくり戻ることにより、アマラオのマイナスのパスを防ぎ、シュートを打たざるを得ないようにしている。ナイジェリア戦でも、サイドを突破されているにもかかわらず、宮本はゆっくり戻っているシーンがある。

 フラットラインディフェンスをサイドから崩すと言ってもこのように、サイドアタックの効果は一様ではない。私は、宮本自身がいうように、宮本のF3では、中央を突破されたときがもっとも、守りにくいだろうと思う。それすら、中盤と最終ラインの間のスペースが狭いため相手チームには容易とは思えないのだが。  

この稿はwillさんに触発されてまとめました。

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