オシムの叱責
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 モンテネグロ戦、後半9分(ビデオでは8分台)のシュートシーンで日本左サイドにいた山岸にパスを出さなかったとして中村憲剛がオシムに叱責されたとのことだが、(たしかにスタジアムで見てもオシムはおこっていた。)この場面で、中村憲剛は山岸にパスを出すことは出来ない。なぜなら、このとき中村憲剛はまったく左を見ていないからである。

ビデオで中村憲剛のプレーを見ていると、よく首を振る選手なのだが、頭が黒い。髪の毛ばかり見える。つまり、下を向いている時間が長い。中村憲剛が周囲を見るのはパスを受ける前で、パスを受けてから蹴るまでの間、言い換えればボールを持っている間は首を振ることがほとんど出来ない。また、キックの瞬間に足元を見ている時間も長い。これは、足元の技術の問題で、ブラインドでボールを扱うことが苦手だからであろう。ボールを持っての首振りが出来ないので、視野が狭くなり進行方向しか見ることができない。

もちろん、9分のシーンでもゴール正面の中村憲剛が左サイドにいた山岸を見ることは技術的に出来なかったものと思われる。ボールを受ける前に1回ゴール方向をみて、ボールをゴール方向にけり出し、そのボールを追いかけている時に1回右をちらっと見ただけで首はほとんど動かない。ボールを持たず、中村憲剛が首を振れるタイミングはこの2回しかないようである。

さらに、中村憲剛が進行方向以外に蹴るときはほとんどワンタッチパスである。ビデオを見ていると、ボールを受ける前に蹴る方向を見ているが、ボールを受けてから蹴るまではほぼノールックである。蹴りたい方向の状況が出来るだけ変わらない内にパスを出すためには、ワンタッチパスでなければならないのであろう。

しかしながら、視野の「深さ」とでも表現すべきだろうか。中村憲剛は見えている範囲でのパスコースの発見には非凡なものがあるように思われる。ボールを持たないときのスペースの発見にも長けているように思われる。

結論的には、オシムの叱責が中村憲剛のプレーを個人プレーとするものであれば、的はずれだと私は思う。中村憲剛は個人プレーに走って山岸にパスを出さなかったのではない。そこに山岸がいることを知らなかったに過ぎないからである。

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