中澤に対する過大な期待 −ホンジュラス戦の4失点−
速報、思いつきコーナーへ

 1人余る4バックで戦って5対4だった宮城でのホンジュラス戦。02年のホンジュラス相手の対戦ではF3で戦って3対3だった。2つのことなるシステムで臨んだにもかかわらず、共に大量失点した原因は、システムよりも選手個々の問題に帰されるべきであろう。

3年前のホンジュラス戦では、私は松田の絶不調をとりあげている。05年のホンジュラス戦においても中澤の不調が大量失点の原因のかなりをしめていると考えている。

1失点目
ホンジュラス選手からスルーパスが出る直前の位置関係は最終ラインが、日本左サイドにアレックス、中央で中澤がホンジュラス18番をマークし、右に加地(?:おそらく間違いないと思うが確認できなかった)が余っていた。中澤の前方では、宮本がホンジュラス10番をケアしようとして前方に走り出していた。パスが出た瞬間に、ホンジュラス18番をフリーにして、前に出た中澤のプレーの意図はよく分からない。このあと、手を挙げてオフサイドをアピールしていることから、オフサイドトラップをかけたと推測するのが妥当だろう。そうすると中澤は、この直前に背後の加地(?)の位置を確認していないのは決定的なミスである。さらに、18番がアレックスをかわしてしまうまで、手を挙げながらハーフスピードで戻ったことも謎である。アレックスが競り負ける可能性を考えると、中澤にはアレックスをカバーして18番のシュートコースをふさぐか、背後から走り込んでくるホンジュラス10番へのパスコースを消すか2つの選択肢があるはずなのだが、どちらの位置にも入れていない。また、2回加地(?)の方を振り返っているのだが、ホンジュラス10番と加地(?)の位置関係を把握していたのか疑問である。

この一連のプレーで宮本を非難する向きもあるようであるが、例えば私が9月8日午前中に仙台で購入したスポニチ2面崩壊4バックという記事は「右腕を上げ、相手のオフサイドをアピールするDF宮本(ママ:正しくは中澤、DVDでリプレイを見る限り宮本は手を挙げていない)の姿がむなしかった。(後略)」
のように、宮本と中澤の区別がついていないもの。

もうひとつは、ホンジュラス10番の走り込みを宮本が許したとするものであるが、ホンジュラス10番が走り込んだ時点では、ホンジュラス18番はアレックス、中澤と2対1であり、アレックスがかわされても中澤がディレイすればよいだけであるし、さらにもう一人加地(?)がいるのである。アレックス、中澤、加地(?)の3人の失敗が同時に失敗しない限り10番の得点はあり得ないのだ。このような状況で、宮本を責めるのは酷であろう。事実DVDのリプレイで見ると宮本を含め加地(?)を除いて4人から5人の選手が歩いている。

2失点目
ホンジュラス14番が出したパスがアレックスと宮本の間を通過したため、宮本を責める向きもあるようであるが、これは、評論の矮小化に過ぎない。

日本左サイドでアレックスがホンジュラス14番と対峙しその後ろに宮本がカバーに入っている。宮本は14番のシュートコースを防ぎつつ後方を確認してホンジュラス10番との位置関係を確認している。さらに、後方には中澤がゴールやや右寄りでホンジュラス選手に張り付いており、さらに右側には加地とホンジュラス選手がいる。ホンジュラス10番には中村がマークしているように見え、加地の前方には稲本がフリーでいる。中村がホンジュラス10番のマークを捨てて、ホンジュラス14番に向かって走った瞬間にホンジュラス14番はパスを自身の左側=宮本の右側に出すように見せかけてインサイドに出して、宮本の左側に通す。宮本はこのフェイクに引っかかり、出遅れる。TVの解説ではセルジオ越後氏が「中澤が仕留めるんですね」と言っているが、このケースではそんなことはあり得ないであろう。何となれば、次のシーンでは、ホンジュラス10番が中澤のマークしていたホンジュラス選手へパスを出すように見せかけ、これに騙された中澤はゴールファーサイドに走り込もうとした足を止めてしまい、きれいに楢崎との間を抜かれているからだ。

この失点シーンでは、中村がマークを捨てた時点で、中澤がホンジュラス10番のマークにつき、加地、稲本が一つずつマークをずらすしか手がないだろう。このシーンでは、宮本と中澤の間が大きくあいており、ホンジュラス14番からどのようなパスが出るにしろ、このスペースを埋める選手は必要だったのだ。

3失点目は中田がパスカットされるのだが、中田本人の詳細な説明があるとのことなので、省略する。

4失点目は、日本右サイドにいたホンジュラス18番へロングパスが出た後、直接には加地がホンジュラス18番に振り切られたためであるが、より内側にいて、ホンジュラス18番と加地と併走していた中澤が一瞬スピードを落としたため、ホンジュラス18番を追走する形になり、ホンジュラス18番からホンジュラス10番へのパスコースを防げなかったことによる。

しかし、気になるのは日本左サイドでホンジュラス10番をマークしている宮本もゆっくり走っていることだ。

1,2,4失点目、全てにおいて宮本をはじめとする日本選手の中澤に対する信頼とそれに応えきれない中澤のプレーがあるように思える。

1失点目は、アレックスと中澤のホンジュラス選手の2対1だった。だからこそ、他の選手は歩いていたのではないか。2失点目、一瞬後ろを振り向いて確認した宮本は中澤がスペースを埋めると考えているように思える。また、シュートを打たれた楢崎もファーを中澤がケアすると考えていなかったか。4失点目も加地と中澤とホンジュラス選手の2対1である。だから、宮本はゆっくり走ったのだ。

「中澤が仕留めるんですね」というセルジオ越後氏の解説はある意味核心をついている。日本選手全体がそう思っているのではないか。しかし、そうはならない。失点の原因は韓国での北朝鮮戦と同一である。このときも中澤にボールが渡った瞬間、日本選手が歩き出したのだ。
北朝鮮戦のこのシーンは、百万言の褒め言葉、どんな美辞麗句より中澤への賛辞となるであろう。中澤へのチーム全体の信頼は私たちが想像するよりはるかに大きい。ワールドカップの日本の戦績が中澤の出来にかかっていると考えるのはあながち誇大妄想ではあるまい。

私は、中澤の不調を過密日程によるコンディション不良だと考えているが、そうではなかったときの影響の大きさは計り知れないものとなるであろう。

ロゴ「トップページへ戻る」