宮本の英国移籍についての私見
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 英国情報をkeiさんから頂きました。幾つかの疑問が氷解しました。日本で情報を集めている限りでは、分からないことも多いですから。

 今回の移籍に関して、私の考えていることを若干書いてみたいと思います。(オフレコの約束をしていることは当然省きますけど)

 まず、私は、途中何回かぐらついてますけど基本的には移籍反対派でした。サッカー選手のピークは一般に20代後半。特に宮本は読み中心のDFで 30代前半がピークの可能性も高く、他の選手よりも焦る必要がないこと。また、宮本の代役が見つけられない状態で彼を海外に出すことは、日本にとって損失であるため。宮本のラインコントロールは日本の大きなアドバンテージであるのに、みすみす、そのノウハウをイングランドに教えてやる必要はない。だから、ガンバ残留は大喜びです。

 ただ、Jリーグでは、宮本はもう殆ど、超能力者の域に近づいており、一にらみで相手FWは石になる。この魔術が通じないのはファン・ソノンただ一人。この状態ではあほらしくてやってられないのかなあとも思うのですけど。付け加えると、そういう状況下にも関わらず、評者がサッカーのプレーをきちんと見ないがゆえに、体格をもってヘディングの高さ不足とフィジカルコンタクトが弱いと決めつけられるのでは、正当な評価を得るためには欧州や南米でプレーが通用することを証明するほかないと考えたのかも知れません。

 それと今回の移籍について、ウエストハムというチームですが、1,2回衛星放送で見たのですが、ラインをフラットにする意識が強く、3バック?に見えたウエストハムは当初、宮本には良いチームかなとも思ったのですが、私の見た試合では相手チーム(どっかわすれましたけど、とにかく強豪チーム)の方が遙かにラインに対する意識が高く、ボランチとの連携も取れている。これに比べるとウエストハムはずっと凸凹ライン。という事は、私の経験則では、TVでみると実際に見るより何故かラインが真っ直ぐに見えることと考え合わせれば、ウエストハムのDFラインは現日本代表並、若しくは劣る可能性がある。それならば、はまるかどうかは、やってみなければ分からないという程度のチームということになる。ガンバにいるよりは苦労するかも知れないし、個々の戦術理解が高いので簡単にフィットするかも知れない。つまり可もなし不可もなしという程度に見えました。

 次にビザ。これは、間違えていたら教えてもらいたいのですが、特例ではなく、合法的に発給される可能性はあったのではないですか?というのは、日本ではごっちゃにされている情報を整理すると、就労ビザを発給するのは、英国雇用省という国の機関。申請するのは、宮本の雇用主になるウエストハム。審査されるのはウエストハムから雇用省に提出された申請書である。例の、前2カ年間の代表戦75%以上出場とか、FIFAランキング70位以内の国とかいうのは英国プレミアリーグという一民間団体が発行する申請書の添付書類の発行基準に過ぎない。慣例として、英国雇用省がサッカー選手を審査する際にプレミアの添付書類が付いていれば、無審査でビザは発給される。ただし、この添付書類は必要不可欠なものでもなく、付いていなくても他の書類で代替できるというのがホントの書類の流れではないのでしょうか? 
 言い換えると、外国人が英国内で働くための労働VISAを申請するには、英国の法律やそれに基づく規則で、「VISAが発行されたらその労働者を雇用します」という保証書もしくはそれに類する書類が必要であることが定められているのではないでしょうか。そしてプレミアリーグで選手として働くためには、その保証書は雇用するクラブだけではなく選手登録をするFA協会も(またはFA協会のみが)発行することにリーグの規定で決まっている。そしてFA協会という団体の保証書発行の際のルールが「2カ年間の代表戦75%以上出場」と「FIFAランキング70位以内」という基準ということ。そうなると特認条項は、FA協会内の規定に過ぎず、FA協会内で保証書発行に当たって、「2カ年間の代表戦75%以上出場」と「FIFAランキング70位以内」という協会内の基準を適用せず、特段の理由で保証書を出す場合がある。もうひとつはFA協会発行の保証書というのが単なる慣例であり(法的拘束力の薄い)、絶対にそれがないと法令をクリアできないという質のもではなく、しっかりした理論構成をすれば、それに変わる「受入証明」で代替できるという二つの可能性があったのではないでしょうか。
 だからウエストハムが国と直接交渉によりビザを取得する可能性は「あった」のではないでしょうか?
 制度をよくご存じの方にご教示いただければ幸いです。

 少なくとも、ウエストハムは英国雇用省に申請書を提出し、受領された。法的に全く無理であれば申請書類の受付がそもそもなされません。英国の行政手続法での標準処理機関があり、その締め切りが1月19日だったのではないか。そして、現在も申請書は不可とはされておらず、継続して審査中なのではないかと推測します。
 私の学生時代の海外留学(特に共産圏や第3世界への)では、この手の話は日常茶飯事で、私の友人や先輩達は「はじめてのケース」にトライして1年近くかけて受入許可をもらっていました。ロシア語の先生の話では、旧ソ連では受入許可に2,3年かかるので現地に居座ってしまい帰国しようかなと思ったら、許可が出たということも現実にあったそうです。
 私には、何も特別な話には見えないのです。

 日本では、1民間団体に過ぎないプレミアリーグの規約が英国の法律とごっちゃにされているので、訳が分からなくなっています。中村氏とか伊藤氏とか原田氏はこの点を整理してくれるだけでも英国在住を売り物に出来たと思うのに、だれもしてくれないので。

 次に、なぜ、ウエストハムが宮本に目を付けて、松田と森岡に目を付けなかったのか。たしかに、日本人の目から見るとスタジアムでは、松田、森岡より宮本のレプリカ・ユニの方が目に付くので、商業目的であれば、宮本になると思うのです。しかし、英国人にそんなことが分かるのでしょうか。常識的には、公式記録を基にセレクトするでしょうから、代表キャプテン数の多い松田や五輪の出場数の多い森岡を選ぶことでしょう。調べれば調べるほど松田、森岡の方が取りやすいとわかるのでは。しかも、最近の新聞報道では森岡はプレミアリーグ移籍を目指しているそうなので、声をかけてみれば、簡単に話がまとまったのではないでしょうか。なぜ、あえて宮本なのか。

 これも、宮本サイドからの売り込みがあったのであれば、説明できるかも知れません。宮本に近いところから売り込みがあった可能性は考えてみる必要があります。しかし、商売だけにしてはこだわりすぎのようでもあります。ホントに戦力として考えていたのも間違いないのでしょう。現実に2億4千万円という移籍金は日本人としては中田に次ぐ高額で、評価が高いのも事実だと思われます。ウエストハム関係者と思われる外国人が天皇杯3回戦に来ていました。マスコミには何故か流れませんでしたが、取材を受けているところを見ています。日本で、一般に考えられている以上にウエストハムは宮本にご執心のようではあります。しかし、肝心の部分はよく分からないままです。

 実際に移籍した場合、試合に出れたのか?これも最低数試合は出れたと思います。実力で出れたら問題がないのですが、商売目的であっても試合に出さないことには、実入りがすくない。TVの視聴率も上がらなければ、観戦ツアーも組めません。その意味で、カズ、名波、城、西澤も本当にすべて実力で試合に出ていたとも思いません。英国に行けば宮本には不本意でしょうが、実力以上に優遇された可能性もあります。

 ガンバ大阪はこの移籍をどう思っていたのか?終始一貫して否定的であったと思います。ガンバ側は、ウエストハムの獲得目的、移籍後の宮本の待遇を含めて、かなりウエストハムを疑っていたらしく、移籍金もまけない。分割払いの支払時期も厳密に決める。その他幾つかの条件を付けて宮本を守ろうとしていた節があります。ここ数日の新聞報道を読むと交渉決裂の理由はビザの取得問題だけではないらしい。ビザに匹敵するぐらいの問題があったらしい。推測するに、公認代理人を交渉に加わらせる。(私も、何で代理人が弁護士なのかなあって思ってました。)ウエストハムからレンタル等でさらに宮本が移籍するときは、ガンバに優先権を保証する等の交渉の交通整理、宮本の身分保障に関するものだったのでは。

 ガンバの乾社長は海外駐在経験もあり、松下でのキャリアの最後は資材部長で外国人との交渉経験が豊富な方とのことで、相当なタフネゴシェーターとお見受けします。ウエストハムにとっても楽な相手ではなかったのでしょう。今回の一連の騒動で最も男を上げたのは、実は乾社長ではないかと思います。交渉の後半は老獪な乾社長にウエストハムがやりこめられたとしかみえません。

 英国情報に対する日本国内の反応についてですが、おそらくは、スペイン、イタリアに比べて英語だと直接情報が読めたことが一つの原因。スペイン語やイタリア語で新聞をすらすら読めてスラングの分かるほどのヒトはそんなにいないのでしょう。(多分、現地に留学しているサッカー関係者すら言葉が怪しい?)今回は、英国ジャーナリストの目というような記事が少なく、現地在住という日本人が書いた記事が目に付きました。にもかかわらず、英国の国内事情や法制度をよく分かっていないということがあったのでしょう。(例えば、イギリス人ならこう考えるのではという視点の欠落。)また、日本国内のライターやネットライター、ファン達にアントラーズ、ジュビロなどはファンが多いがガンバや他の西日本のチームはファンが少ないという思いこみがあるらしく、辛口の文章を書くときや文句を言いたいときにはガンバやサンフレッチェ、宮本、稲本、海本、駒野、森崎等をやり玉に挙げれば大丈夫という風潮があることも一つの原因でしょう。私は、現実に五輪代表戦で中田浩二がミスしても明神がミスしても「宮本〜」とブーたれてるファンを国立で見たことが何度もあります。今後はガンバに媚びまくったファンやライターが増えることと思います。

 それと、今回の騒動で常に、他紙を出し抜いてスクープしていたのは、朝日−ニッカン系列です。私は、この移籍話の仕掛人若しくはそれから近い筋からリークがあったと考えています。日韓戦の12月20日のニッカンの「宮本移籍決定」の大きな記事には、ガンバ関係者以外がニュースソースであったことを裏付ける明らかな事実の誤認があり、ガンバ大阪は正式にこの記事に関してニッカンに抗議しています。一件落着してから、したり顔で常識論をかましてる朝日は、あんたらだって同じ穴の狢じゃないのか?って思いますよ。「情報屋を骨までしゃぶった」てトコでしょうか。まあ、中村主水と組み紐屋の竜に気を付けてね。

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