「黒い雨」 井伏鱒二
◎模擬原爆の投下について  (8/6更新)
広島、長崎の原爆投下に先立って「模擬原爆」が日本各地で50発以上投下された事はあまり知られていない。私もそういうものがあったのは知っていたが、具体的な内容については何も知らなかった。
毎日新聞2002年7月26日の記事によると、大阪府住吉区に投下された模擬原爆は次のようなものであった
 ・・・7月26日午前9時26分、単独飛行してきたB29が5トン爆弾を投下した。大阪市戦災復興誌は「死者7人、傷者73人、焼失倒壊戸数486戸、被災者1645戸」と被災状況を報告している。・・・
この爆弾は投下された原子爆弾と同じ形、同じ重さだったそうだ。「模擬」であるから形だけだろうと思っていた私は、実際の被害状況を知って衝撃を受けた。爆弾である以上形だけなんてそんな甘いことはないのだ。
模擬原爆の投下された被弾地については第509混成軍団による模擬原爆・パンプキン被弾地一覧表に詳細な表が載っている。 これを参照すれば、投下対象となった各地で「我々の県の○○でも模擬原爆が落とされた。」と、この問題を生徒に身近なこととして考えさせる助けになると思う。
(このURLは「須々万共和国」の管理人様の許可を得てリンクさせていただきました。「須々万共和国」HPには他にも、地方都市空襲、原爆投下、空襲・詳細を記録する会全国連絡会議、出版案内、米軍資料の中の日本空襲、リンク先  etcの原爆、空襲関係の詳細な情報がたくさんあります。)       
本日は57回目の広島原爆記念日。新聞のテレビ欄を見て驚いた。原爆関係の特集を組んでいるのはNHKだけ。主要民放各社はNEWS23,ニュースステーション、ズームインSUPERには「広島、被爆」の文字が見えるものの他のニュースに埋没しかかっている。関西テレビ(フジ系列?)には一言もでてこない。これが「風化」だ!と思いつつ、「黒い雨」を授業で取り上げる意味を改めて考えさせられた。「知ることが超えることの第一歩」だと思っている。
この作品は「国語T」(筑摩書房)にも収録されており、文章それ自体としてはわかりやすい。そこで、生徒にいくつかの作業をさせることと読解とを通じてより具体的にイメージできるように心がけた。
◎導入アンケート
1,原爆投下の日時
2,広島への投下に先立ち大阪府東住吉区に模擬爆弾が投下されたのを知っているか?
3,広島の原爆による被害状況(選択肢)
  1945/12末までの死亡者数、爆心地の地表面の温度
4,今までに原爆について学んだこと
5,被爆者手帳と被爆者援護法について知っているか?
6,原爆症について知っていること
7,原爆に関する本、映画、絵、文学作品等で知っているものは?
★5について
ちょうど今年(01/6。/15)に在外被爆者への被爆者援護法適用を認めた大阪地裁の判決に国と大阪府が控訴をした。生徒にはその新聞記事を紹介し、「原爆」の問題がもう終わった過去のものではないことを強調した。
◎原爆被害のシュミレーション
学校近くの市役所に広島型原爆が投下されたと仮定した場合の被害を地図に書き込む形でシュミレーションさせた。爆心地からの距離と被害状況を円で示させ、自宅や学校の位置をマークさせた。多くの生徒は黒い雨の範囲の広さに衝撃を受けたようである。
◎テーマ研究と感想(宿題と掲示による発表)
次のうちから一つテーマを選びレポートを提出。
  1,原爆投下についてのアメリカ側の言い分や反応、人々に与えた影響
  2,現在の原子力の利用について
  3,核実験について
  4,放射能の人体への影響
  5,広島以外の被爆について
  6,現代の核兵器と核保有国
  7,その他、原爆に関すること
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