◎「なた」幸田文と割り箸割り
斉藤孝 「身体感覚を取り戻す」(NHKブックス)より(小学校の授業で割り箸割りを実践)

 「なた」は幸田文がなたで薪を割る時に、露伴から教えられたことについて書いた文章である。文は「畢竟、父の教えたものは技ではなくて、これ渾身ということであった」と書いている。露伴は渾身という、生き方の美学を娘に伝えたのである。
 斉藤孝は、身体感覚が衰退した現代の小学生に「渾身」という言葉を実感として受け止めてもらうために、名刺による割り箸割りを取り入れた。これは二人一組になって一人が割り箸を一本持ち、もう一人が手に持った名刺を垂直に打ち込んで割り箸を割るというものである。割り箸割りはなたで薪を割るのに相通ずる「集中して一点に力をそそぎ込む」というコツが必要であるとのこと。私もやってみたが、集中力が足りなかったようだ。(^^)  
★実際に体を動かしてみる・・・・体での体験は生徒にとって印象深いようである。私も昨年度「着物自在」鶴見和子(筑摩 国語T)を取り挙げた時、直線断ちの体験として紙で小さな着物を作る、日本舞踊の正しい立ち方を教室でやってみるということを試みた。姿勢矯正の体験では、全員立たせて隣の者と向かい合ってやらせたが、背筋を伸ばす、肩を下げるということによって姿勢が劇的に変わる様子を見て驚いたようである。本文の内容については生徒は忘れるかもしれないが、この体験は身体の記憶として残るにちがいない。
★斉藤は「渾身」というキーワードを「徹底的に印象づける」ため、父親手書きの渾身という文字をプリントしたTシャツを着てパフォーマンスを行う。この徹底ぶりには笑わせられる。楽しませてもらいました。
身体語・・語彙を増やす、語のニュアンスをつかむ
以下の1〜8の後のニュアンスの違いを考える。( )を空欄にして、語を補充させてもよいかも知れない。
1・作戦を  (立てる)       2 一緒に頑張る(向上する)
         練る             (切磋琢磨)する  

3知恵を   (出す)         4 (減量)する      
         絞る            身体を絞る

5 (頭で)わかる           6期待を(される)     
  腑に落ちる                  背負う

7 (頑張る)             8(全身)
  踏ん張る               渾身
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