冬の時代2008

文 村上義明

 毎年、新年に昨年のカレー店を振り返っているが、今年ほど振り返るのが辛い年は、無いかもしれない。いや、ひょっとしたら、来年はもっとひどい事になるかもしれない。

 このコラムを、読んでいる人なら判ると思うが、村上カレー店の売上が、どんどん下がっているのである。それは、プルプルより美味しい店が増えた性なのか、不況の性なのか、それはわからない。ひょっとして、来年には村上カレー店が消滅(普通は閉店?)している可能性だって有るのだから・・・。

 では、2008年に新しく出来たカレー店を振り返って見よう。

 2008年にオープンした店で多いのは、チェーン展開した店が、2店目、3店目と増殖して行くパターンである。こう言った店は、バックボーンがしっかりしているため、安心して食べる事が出来るはずである。(あくまで、はずであるである!!!)

 発寒の総合商業施設Iの近くにオープンしたのは濃厚なスープで定評のSの発寒店である。住所が、Iの近くなのでIの回りを、ぐるぐる回ったが(もちろん車で)見つけられず。諦めて帰ろうとしたら、目の前にあった。一軒家というか、まるごと店舗というか、どこかの事務所毎、カレー屋にしてしまったと言うところか?わしは、1人で入ったため2階には行けなかったが、2階にはキッズスペースがあるらしい。駐車場が多いので、子供連れでカレーを食べに行くには良いのかもしれない。ただし、カレーも値段もSなので、それなりの御金が必要である。

 つづいて南1西2のSの支店の跡にオープンしたのが、Hである。いつも思うのであるがHは、美味しい物件を見つけては、狙い済ましたように支店をオープンする。見事である。カレーに関して言えば、そのままHなので、文句のつけ所は無い。一昔(いや10年以上前なので2昔か?)前なら、この場所で営業すれば、天から札束が降ってくるくらい儲かったはずであるが、最近の大通地区を見ていると、そうもいかないだろうというのが最近の感覚である。どう考えても当時と比べて歩いている人が少ないのである。大通地区の全盛期に比べると半分くらいであろうか、やはり札駅に客を奪われているのであろうか?

 そして、プルプルから1丁離れたところにオープンしたM。北見の名店が札幌に進出してきた。4種類のスープと具材の変化で、メニューの多様性を極限まで追求した店である。更に、ご飯に関しても数種類選べるように成っていて、凄いとしか良いようがない。ただし、ここは家賃が高そうなので、非常に心配なところである。

 そして、清田区のBB(VVかな?)、元Aの跡にオープンしたネパールカレーのお店である。ランチタイムのセットが、安くてお得である。最近ネパールカレーの店がどんどん増えてきているが、こちらは、網走に本店があるらしい。こう言うお店は、一度美味しいと思ったら、どんどん通って見るのが正しい。通って新しいメニューを食べ進むうちにどんどん新しい味を教えてくれるのだ。これから期待の持てる店であることに変わりない。

 そして、今度はインドカレーのA。南区の石山(芸術の森の近く)にオープンしたインド人シェフの店である。この場所はお店が2回代わっているので、今度こそ定着して欲しいものである。ただし、最近のインドカレー系のお店に比べると、トータルの値段がちょっと高めなのが、気になるところである。因みにシェフは、市内の某カレー店で働いていたそうである。インドカレーらしいインドカレーである。

 そして、またまたインドカレーである。今度は西区西町のA。どうも店名の由来はインドのタンドールで焼くパンの「あ!〇ンだ!」から、由来しているらしい。(本当か???)ここもインドカレーらしいインドカレーである。ただし、カレーとナンの量を考えるとここもあまりコストパフォーマンスが、良いとは言えないかもしれない。味は良いんだけどね。

 そしてスープカレー希少地域の大谷地にオープンしたのは、宮の森に本店があるS。お好み焼き屋さんの二階にオープンしたSの2号店である。大谷地店にしかないスープも用意していて、なかなか意欲的である。駐車場も結構な数があるので、安心安心。わしが行ったときは満席で、一組待ちの状態だった。立地といいスープカレー希少地域だっただけに、良い所に2号店を出店したと思える。また、マンスリーにも力が入っていてこんな事するのかみたいなメニューを、出してきてくれるので、これからが楽しみである。

 星置から移転してきたA、旧5号線沿いの北6条西23丁目あたりにオープンしている。車だと通りすぎてしまう。歩いていれば、店の前がのぼりやら、看板やらでにぎわっているので、立ち止まれると思う。外見は蕎麦屋っぽいが、中に入るとメニューにカレーしかないので、蕎麦屋でない事は確かである。最近どうも餃子やら、なにやら居酒屋っぽくなってしまったらしい。(確認は出来ていない)

 北33条東1丁目にオープンしたのは、Rの北33条店。この辺りも、割とスープカレー希少地域である。東区には、人口の割りにカレー屋が少ない気がする。いや、カレー屋に限らず「飲食店」が少ないのかもしれない。それは、需要が少ないためだと思う。東区は、基本的に住宅街で、その東や西には畑しかない。つまり、働く場所は少ないのである。つまり、商売が出来る時間帯が限られてしまうのである。このため、飲食店が少ないのではないか?ワシの実家は丘珠であるが、丘珠には、ほとんど飲食店が無い・・・・。Rの話に戻ろう。店内は、本店と同じく、かなり薄暗く、個室毎に仕切られていて、居心地がいいんだか悪いんだか。カレー自体は、高めの設定となっているが、ライスの盛りや、辛さなどが無料で、ある程度ついてくるので、コストパフォーマンス的に問題がある事は無いと思われる。

 そして、忘れちゃイケナイ「スープカレー横丁」。鳴り物入りでオープンしたスープカレー横丁であるが、オープン当初はそれなりの集客があったものの、3ヶ月もしないうちに、客の入りが少なくなって行った様に思える。それぞれ実績のある店だっただけに、味や接客に問題があったとは思えない。そうなると、原因は何だろう?そもそも、もう観光客は、スープカレーなんて食べないんじゃないのか?2年前ぐらいならスープカレー目当ての観光客がたくさんいたかもしれないが、今はもう元に戻ったんではないだろうか。つまり、観光客は、カニやら海老やらラーメンやら食って帰るだけである。彼らは毎日食べてくれるような常連になるわけではない。稀に、スープカレーを食べたい観光客がいたとしても、彼らはあくまで観光客なので、カニやら海老やらが入ったスープカレーを食って、満足して帰っていくだけである。なにせ、観光客ですから・・・。スープカレーブーム以前に来ていた、カレーファンは、そんな間抜けなカレーなんか食わずに、ちゃんと基本であるチキンカレーを食って帰っていた。カレーファンと、観光客は違うのである。なんだか、只の愚痴になってしまった。

 現在、スープカレー横丁に残っているのは3店舗だけである。(2009。1.22修正)果たして、これで良いのだろうか?どうにかする方法は、あるのか?横丁関係者は、もう一度考える必要があるんじゃないのか?多分出て行った店は、家賃>客の入りと言う現実を踏まえて、これ以上は、無駄だと考えたんだと思う。いつまで、スープカレー横丁なのか?

 道立近代美術館の横にオープンしたのは、SS。店主は元Pらしいが、出てきたカレーはそれほどPっぽくは無かったように思える。味はしっかりしているがV/Pの様に、これでもかって位具材が入っているわけではないので、食べやすいといえば食べやすいのであるが、その分ボリューム感が希薄となり、物足りなさが残ってしまう。ただし、揚げゴボウが良いダシを出しているので、そこのところは評価が高い。意欲的なトッピングも有るところから今後に期待したいものである。

 札駅周辺にも、段々スープカレー屋が増えてきている。Sの北口店。蕎麦屋のとなりにオープンした。近くにHの支店があるが、札駅の北口も、段々激戦区になってきているのではないだろうか?ただ、値段的に考えると、Hの方が良心的であるが、ドリンクサービスとかを考えて行くと、どっこいどっこいなのかな?

 琴似のRのすぐ近くにオープンしたCの琴似店。Cは繁盛店の近くにオープンするのが得意である。忘れていたが、Cは南郷店も既にオープンさせている。そう考えると、南郷店は近くに繁盛店が無いなあ?まあちょっと遠いけど、MSとかT屋とかK屋かな?Cの勢力拡大の勢いはちょっと凄いね。

 今出たT屋の支店が、西線7条に出来た。わしのうちの近くである。T屋は、木曜定休なので行けなかったが近くに出来たので、いつでも行けるようになった。とは言うものの、他の新店に行っている間は、行けないけどね。ちなみに、T屋中央店は、元のCMの跡地にできている。

 そして、プルプルの3条くらい南に出来たG。夏はオープンエアーで、非常に気持ちがいい。テイクアウトもやっている。深夜営業もやっている。場所柄、深夜営業は必要だと思われる。ただし、最近ありがちなカレー屋さんのスープでは無い。かなりあっさり目のスープで、オリジナル、トマト、エビの3種類が有る。開放的で気持ちの良い空間なのであるが、1人でカレーを食べるには、ちょっと無理がある空間である。オープンエアーで気持ちが良かったのは、銭函のSで、夏のテラス席だと、1人でカレー食っていても、何だか良い気分になれる。

 南9条通りのMの跡地に出来たのが、またまたネパールカレーのC。スープカレーとネパールカレーが、旧Mのおしゃれな店内で食べる事が出来る。スープカレー、ネパールカレーとセットの「ネパールカレーセット」を食べてみたが、やはりネパールカレーが凄く美味しいのである。ナンとカレーが別料金で、割と高めの値段設定ではあるが、ネパールセットにすると、少量ずつ色々食べられるので、かなりお得である。さすが、長年ネパールで務めてきたシェフは、違うなーと言ったところであろうか。今年オープンののカレー屋ではNo1かも知れない。

 中央区の職業安定所??ハローワークの北側に出来たのがCMである。以前インド人かネパール人がカレーを出すカフェだったところの跡に出来ている。スープカレーでは有るが、かなりインドカレーに近い感じのスープカレーである。味はいいが、値段が割と高めなのと、辛さの設定の幅が狭いのが気になった。

 豊平区の自転車屋さんのSBの中にオープンしたのが、M36。カレー屋さんというよりもBMX屋さんの中の休憩所みたいな雰囲気である。シンプルなインドカレーは、スープカレーブーム以前の昔のスープカレーを思い出させてくれる。最近こういうカレーに出会っていないよなーという、昔懐かしいカレーでした。ブームになる以前はスープ状のインドカレーを出す店が結構あったと思ったが、スープカレーブーム以降は、どこもRやMSを意識したスープカレー屋しか出てこなくなったので、今となっては貴重な存在かもしれない。自転車屋さんの一角だけに、スープカレーで儲けてやる的な店ではない事が、こう言う味の傾向になったのかもしれない。

 南7条の電車通りの東急ストアじゃなくてディナーベルの北側にオープンしたのがインドカレー&スープカレーのRである。わしが行った時は、昼のランチでインドカレーしか出していなかった。結構な量のインドカレーとナンとドリンクのセットで¥1000で、高いんだか安いんだかという、良くわからない料金設定であった。只、昼時に¥1000でこのカレーを食うのと、他の店で定食を食うのとどちらがコストパフォーマンスが良いかと考えると、???と言う気分である。今の時代、安い定食屋なんて¥500で、そこそこのものを提供してくれる。プルプルのランチの値段は¥750で、2,3年前までは、安い方であったが、周りの定食屋が、安売り攻勢をかけてきたので、今では¥750でも高い部類に属してしまう事になった。Rの場合は、夜遅くまでやっているので、ススキの関係者をメインターゲットにすれば、採算は取れるのかもしれない。

 北24条の、ほぼ中心部にオープンしたのがSの北24条店。明かに、元スナック的な店内で、スープカレーである。昼間の人通りは、無い。基本的にやはり夜のお店なのだろう。何だか最近の店を見てみると、空き店舗を埋めるのに、スープカレー屋をオープンさせるか?的な店が多い気がするのは、気のせいだろうか。昔はスープカレー屋を、オープンさせるのにもっと気合が入っていたような気がするのだが?こんなところにもスープカレー衰退の原因があるのかもしれない。

 西区八軒に鳴り物入りでオープンしたのがEIである。一度聞くと忘れない名前である。しかもE:超人である。スープは、あっさり系とトマト系の2種類である。あっさり系はMS系で、トマト系はR系というところか?値段的にも最近のスープカレー屋の傾向を受け継いでいる。但し、店名と同じI姓の方には、値引きのサービスが有る。つまり、親戚一同でカレーを食べれば、かなりお安い?って事か?

 東区の環状線の東6丁目ぐらいに、昼だけ営業しているカレー屋さんT。何故、昼だけの営業なのか、一体誰にカレーを食べさせたいのか、ちょっと不思議な場所に有るカレー屋さんである。いわゆるルーカレーで、甘口である。子供でも食べられるカレーがコンセプトなのだろうか?

 北区のS 北大店。元のMの跡にオープンしたのがSの札幌3軒目北大店である。味、値段共に、文句無しである。

 清田区のA。北区のインドネパール料理RRの系列らしい。割と標準的なインドカレーである。但し、RRよりも、値段は大人的に成っている。しかし、セットにすると例によって、そこそこの値段でサラダとドリンクがついてくるのでいろいろとお得である。

 中央区の大通り地区の真中にオープンしたのがRC。回りがおしゃれな空間なので、そう言うお店だと思っていたが、かなり「やってしまいました」的なお店である。ビルの一空間に、テーブルと椅子を配置して、なんとなくお店らしい雰囲気にしている気がする。評判のカレーヌードルを食べたが、ラーメンというよりは、カレー南蛮のラーメン版みたいな感じであった。もっとスープっぽい方がワシには嬉しかったが、チキンレッグや挽肉や野菜もたくさん入っているので、かなりの満腹感がある。値段も、そんなに高くは無いので、果たしてこれで家賃が払えるのかと、不安になってしまう。

 ススキの近くのSの支店のS+。Sの隣のビルに、かなり大きいスペースでS+がオープンした。味はSと同じなので、問題無し。こんな時代に思い切った事をしたものだと、ちょっとビックリしました。それだけ自信が有るからだろうけどね。

 澄川の、超有名店Kをちょっと通りすぎたところに出来たK。隣にラーメン屋さんが有るので、ちょっと判り難いが、焼きカレーのお店らしい。割と普通のカレーである。ご飯の上に調理した野菜や肉を乗せて、カレーをかけてチーズを乗せてグリルレンジで焼く、と言うのが基本のようである。ルー自体はそんなに甘くも無く辛くも無く酸味も押さえられており、誰でも食べられるカレーと言った感じである。

 忘れていました狸小路の4丁目のTM。タイカレーとインドカレーの2種類のカレーが食べられるお店です。岡山に本店があるらしい。何故タイカレーとインドカレーのお店が一緒なのかは謎であるが、安くて美味しいカレーが食べられるのは、間違い無い。但し、辛さの選択とかは、普通の範囲内なので、スープカレー屋と同じ物を求めるのは、ちょっと無理である。入り口が狭くてかなり怪しいが、中に入るともっと怪しいので、心臓が弱い人は・・・、かもしれない。いやいや、安心して入っても大丈夫です。片言で現地の人が、オーダーを取りに来てくれます。

 ここまで、ざっと数えて一年間で約30軒のカレー屋がオープンしている。しかしながら、実は閉店した店も同じくらい30軒ほど有る。カレー業界としては、右肩上がりから、右肩下がりとしか言えないところである。全体として件数は変わらないが、5軒オープンして5軒潰れるのとはかなり違う。30軒である。30もの店がオープンして、それとは裏腹に30軒の店が潰れているのである。つまり、全店舗の数を150店としても、20%の店が入れ替わっているという事である。これは、かつてのラーメンブームの時と同じだと思われる。あの時代、新しいラーメン屋が次々とオープンした。ラーメン本もたくさん出た。しかし、それから数年立って、次々と潰れて行った。スープカレー屋も同じように、たくさんオープンして、沢山潰れて行ったのである。もう一年ぐらいは、こんな状態が続くのではないか。ただし、今年はスープカレーだけでなく、インド・ネパール系のカレー屋さんが台頭してきた事が、少なからず希望が持てることではないだろうか。新しいカレー屋さんは、これまでの「ぼったくり系」スープカレー屋とは違い、良心的な値段で、カレーを供給してくれる所が多い気がする。但し、こんな時代なので、お客さんが、どんな選択をしてくれるか、かなり不安である事は間違いない。

 2008年は、カレー業界は「冬の時代」であった。そう思う。2009年は、あまり明るい希望も見えてこないが、インドカレー、ルーカレー、カレーラーメン、スープカレー、カレー○○、カレー××・・・、何とか良い方向に向かうように頑張らなければならない。食べる方としても、作るほうとしても、この不況に勝っていきたいと思います。いや、負けない様にするのが精一杯かもしれないが・・・。

 2008年の締めくくりに半月も掛ってしまった。因みに、12月8日に移転オープンした北3西7のCはちょっと美味しいよ。今年も食べまくるつもりです。

 それじゃ、また。

2009.1.15