玄米さらだのイエローライス

文 村上 義明

 4月の中ごろ、情報誌Jから電話があった。「玄米さらだを使った、カレーを作って見ませんか?」玄米さらだ?なんじゃそれは?玄米?サラダ?話を聞いてみるとホクレンの売出し中の玄米だという事がわかった。とりあえず、その場では検討してみますと言う事で、電話を切った。

 早速「玄米さらだ」なるものを探しに、行き付けの東屯田通りのM正へ・・・。無い。米のコーナーを見てみると、無洗米やら、玄米やら雑穀米やら色々種類がある。世の健康志向は凄いものである。わしは、日ごろ健康志向に興味が無いので、この手の物は興味を持ってみたことがなかった。但し、最近のカレー屋さんはこの手の米を使っている店が増えているのは確かである。実際食べてみて五穀米とか、十穀米とか美味しいものも多いのである。

 しかし、わし自信は玄米初心者である。うちのスタッフに聞いてみるが、玄米に詳しいものはいなかった。ただ、マックスの嫁は、健康に気を使って、玄米を使っているようであった。

 気を取り直して、円山の札幌Fセンターへ行ってみる。すると、あるではないか「玄米さらだ」が!!!米のコーナーに米らしからぬパッケージで、「玄米さらだ」が並んでいたのである。ダテに「玄米さらだ」などと言う小洒落た名前ではない。これが「あやひめ玄米」などと当たり前の名前だとしたら、米のコーナーでは他の玄米に埋没してしまう事は間違いない。(ちなみに原料は北海道米「あやひめ」だそうだ。)米のコーナーに何だか場違いの物が置いてある。お店の人が、置き場所を間違えたんだなと思わせるパッケージ(なんかのスナックかと思った)が、注目を集める原因かもしれない。

 玄米さらだを、デストロイヤーに持ちかえって早速炊いてみる。袋の裏を見てみると米と玄米を2:1で炊く方法と、1:1で炊く方法が書いてある。とりあえずもったいないので玄米少なめの2:1で炊いてみる。そこにスタッフのマックスがやってくる。「あ!!!マスターこれうちにあります。」わし「えっ!!」なんと、マックスの嫁が使っていた玄米はなんと「玄米さらだ」であったのである。ちなみにマックスの嫁は、元プルプルスタッフのじゅんちゃんである。やるな「じゅん」!!マックスに米の比率を聞いてみるがよく判らないとのことである。残念。とはいえ、玄米さらだは、普通の米に比べると高いので、少しでも安くなる様に玄米少なめで、炊いてみる。

 とりあえず「玄米さらだ」が炊きあがる。食べてみると、ご飯のなかに「プチ」「ポリ」「プチ」とおもしろい食感があるのである。これはおもしろいね!マックスが来て食べてみる。「あ、そうそう、これですよマスター!うちで食べているやつです。でも、うちのはもっと玄米少な目かな?」さすが、じゅんちゃん、賢い主婦してますね!!

 「玄米さらだ」、健康志向どうのこうのより、この食感がおもしろい。ひとつ「玄米さらだ」で何かやってみますか?

 とは言っても、炊飯器の制限があるわけで、従来のお客さんの事を考えると、2系統の米を用意するのは大変である。手間もかかるし・・・。

 プルプル店長のとおるちゃんに相談してみる。「リゾットなんてどうですかね?」おー、さすが「とおるちゃん」。面白いね、スープカレーリゾット!!!

 とりあえず「スープカリー粥」で有名なKに、行ってみる。トマトとチーズが程よく混ざり合ったカリー粥である。友人が「カリー粥」が美味しいよといっていたのがわかる。わしは、あまり米は食わないので、カリー粥は敬遠していたのである。何故なら、米を食べるとおなかが一杯になって、カレー屋の梯子が出来なくなるからである。しかし、カリー粥は、食うべきものであると確信した。汗だくに成りながら・・・。満足してKを出る。でも、やっぱり梯子は無理か・・・。腹が一杯だ。

 デストロイヤーに戻って、再び玄米さらだへと立ち向かう。玄米さらだのプチプチ感を強調するためには、米と玄米の比率は2:1ではなく1:1にするべきである。更に玄米は浸水時間が余分に必要らしく、普通の時間でたくと堅めになるので、浸水時間を長めにして、水の量も多めにして炊かなければ成らない事が、わかった。

 新たに、1:1で炊いた玄米さらだを食べてみる。おっ!良いね!なかなかの出来映え。今度はこれを「カレーリゾット」にすることを考えてみる。

 プルプルとデストロイヤーで別々のリゾットを出すことを考える。

 1.トマトチキンベースのチーズのリゾット

 2.シーフードリゾット

 1は現在のトマトチキンに玄米さらだの米を入れて煮こんで、仕上げにチーズを散らす。実際にやってみると、ちょっと具材が貧弱なのと、煮こむうちにスープ感が無くなる弱点が出てしまう弱点が発生。季節の具材を追加する事が必要なので、ちょっとスーパーへ。ぱっと目に飛び込んだのはアスパラガス!!!これだ。早速アスパラガスを買って帰る。アスパラガスをサッと炒めて、再び試作。トマトチキンにアスパラガスを入れ、スープ感がなくなら無い様に、チキン温め用の薄めのスープを予め足しておく。出来あがりにチーズを散らして、出来あがり。

 なかなかいけますね、「スープカレーリゾット」アスパラを入れたことで量感も質感も十分な仕上がり、トマトとチーズの絡まり具合と玄米さらだのプチプチ感がたまらない。ご飯を200gしか入れていないが、スープを吸って膨らんでいるため、満腹感も十分である。

 ここで、情報誌Jから、電話が入る。「玄米さらだの件、どうなりました?」

 わし、「リゾットでも良いですか?」

 J担当者「良いですよ。」

 わし、「もう少し、かかりそうなんですが・・・」

 J担当者「今週中に撮影しないと、間に合わないんですよ。」

 わし、「・・・、もうちょっと待ってもらえませんか。ダメなら来月でも良いです。」

 さあ、もう一つの「シーフードリゾット」の試作の開始。

 デストロイヤーのシーフードカレーをベースにリゾットを試作。しかし、シーフードの出汁が、十分でない。ホタテとエビだけでは、貧弱である。そこで、アサリを買いに行く。アサリを追加して、ホタテとエビの量をふやして、再度チャレンジ、味はまあまあ。だが、全体的に未だ、貧弱である。そこで、シーフードにもアスパラを突っ込んでみる。

 すると、食感も量感もアップ、シーフードの食感の中に、アスパラのコリコリ感と、玄米サラダのプチプチ感、これらが絶妙にマッチして、シーフードの出汁が効いた、シーフードリゾットの完成である。んー、旨い。

 さあ、Jに電話してみよう。

 わし、「リゾット完成しました。」

 J担当者「すいません。もう間に合わないと思って、別のお店にお願いしてしまいました。来月又お願いします。」

 わし、「わかりました。じゃあ、来月お願いします。」

 しかし、来月ってことは、まてよ6月20日だよな。6月20日ってことは、7月まで10日ってことだよな、残りの20日って、7月ってことだよな。夏じゃん!!!!。夏にリゾットは厳しくないか?

 厳しいに決まっているワイ。

 とホホホホ。気を取り直して、またしても、プルプル店長のとおるちゃんに相談。「これは、かみさんが作ってくれた事があるんだけど、「焼きおにぎり」なんてどうですかねー。」さーすーがーとおるちゃーん、夏に焼きおにぎり。ピッタリじゃん。

 デストロイヤーに戻って早速焼きおにぎりを作ってみる。

 デストロイヤーにはグリルがあるので、おにぎりを作って、グリルに放りこむ。まー10分も入れれば焼きあがるだろう。タイマーを10分にセットして、待つ事10分。まだだな。更に5分。まだだ。更に5分。おっ良い感じだ。取り出して食べてみる。いいねー。バリバリっとした表面と、なかがふっくらしていて、玄米さらだのプチプチ感。良い感じである。これにうちのカレーをかけて食べてみる。旨い。

これは、何と言うか、Rの「おこげのカレー」は、こんな感じであろうか?(おこげのカレーはまだ食べた事が無いです。ごめんなさいIさん。理由は、おなかが一杯になるからです。)米のバリバリ感とカレーの組み合わせといい、更に焼きおにぎりの内側のプチプチ感といい。食べていて楽しいのである。これはヒット商品になるかも?

 しかし、おにぎり焼くのに20分である。しかも、プルプルにはグリルが無いので、フライパンで焼くことになる。ガス口を塞いでしまうことに成ってしまう。おにぎりの形を、薄くしたり、フライパンで焼いてみたり、色々やるが、やはり20分掛かってしまう。

 限定メニューとは言え、おにぎり焼くのに20分掛かっていたんじゃ、たまらない。ボツ。美味しいんだけどなー。

 さあ、もう一度、気を取り直して、玄米さらだのサフランライスに挑戦。

 スパイスと玄米さらだと米を入れて、炊いてみる。うーん、今一つ。スパイス感が足りない。食感も今一つ。インドネシア産のサフランが古いせいか、色の出方も今一つである。

 改めて、スパイスの量をふやして、サフランをターメリックに替えて、試作。

 みんなで食べてみる。良いね、スパイスもいい感じになってきたし、もう少しで行けるんじゃないですか?

 やはり、この路線で行くのが良いみたいである。

 但し、見せ方は考えなければ成らない。常にご飯を2系統用意する事は出来ない。通常の営業には極力影響を与えてはいけない。

 1日8合だけの限定とする。(これは、約10食分である)

 早い者勝ちとする。

 曜日を限定する。(土スペ、日スペへの影響は避ける、仕込みも含めて)

 期間は、6月20日から、7月19日。

 と言うわけで、月、水、金のみの開店から10食のみの限定提供、追加料金なしの大サービスに決定。

 更に、試作を繰り返す。

 ターメリックの黄色がきつすぎるので、ターメリックを減らす。バターを追加。

 旨い!ちょっとバターの味が出すぎ。バターが入った事で、スパイスの風味が出やすくなったので、スパイス感もばっちり。クミンのプチプチ感と玄米さらだのプチプチ感が交互に味わえる。デストロイヤーの店長まー君によると、「ご飯だけで食べられる。」なかなかの出来である。あまった玄米さらだは、おにぎりにして持ちかえったほどである。(給料日前は、きついからね)

 更に、バターを減らしてみる。バターを減らした分だけ、塩分が後退して、スパイス感が薄れてしまった。いかん。塩を追加して、更に試作。

 塩分が補充されて、スパイス感が戻ってきた。ほぼ出来あがり。

 本当は、サフランライスって言いたいけどサフランは高くて使えないので、「玄米さらだのイエローライス」の完成。

 いよいよ、Jの取材。

 Jの担当者H氏に事情を説明し、「玄米さらだのイエローライス」を披露。

 H氏は、納豆が食えないそうで、イエローライスだけを試食、ナット挽肉ベジタブルの方は、カメラマンの方が食べて帰りました。H氏は、お世辞かどうか判らないがおいしいといってくれました。

 数日後、ホクレンから電話が、「今回はJの企画に協力して頂いてありがとうございます。」

 玄米さらだを安く卸してくれるとのこと。やった、万歳。材料費は全部こっちもちで考えていたが、安く卸してくれれば、こんな有り難い事は無い。それでも、いつもの米よりは高いけど、損にはならない計算かな?

 ちなみに、いつも使っている米は、蘭越産のほしのゆめで、生産者共同精米と言う業者さんが、蘭越の農家に有機に近い方法で生産してもらった米を精米して持ってきてくれています。

 今回の「玄米さらだのイエローライス」は、ほしのゆめと玄米さらだが1:1の玄米ご飯です。

 とりあえず、お試しなので、いつもの白いご飯の代わりに食べてみてください。

 とは言っても、黙っていては、みんな気が付いてくれないので、「玄米さらだのイエローライス」のPOPを作る事に・・・。

 実は、デジカメが壊れてしまったので、写真を撮る事が出来ない。仕方が無いので、ケータイで取った画像を使用する事にする。わしのケータイで取った画像で作ってみる。

 貧弱である。わしのケータイは、デストロイヤーが出来たときに、無理矢理持たされたもので(わしがデストロイヤーにいると誰からも連絡が取れない。わしは、静かで気持ち良いのだけれども、みんなは、・・・・・。)、画像は非常によろしくない。というか、最近のケータイは、やたらと画像がきれいでビックリしてしまう。

 デストロイヤー店長のまー君のケータイと、スタッフのみおちゃんに「玄米さらだのイエローライス」の写真を撮ってもらい、パソコンに転送してもらう。良い出来の方を採用する。採用が決まったら、イエローライス食べ放題?か。パソコンから写真を見てみると、でかい!!特にまー君の写真は・・・。今使っているパソコンも、ウインドウズ98(古い)の入ったノート型なので、はっきり言って画素数が少ない。その性も有ってか、写真が、でかく見える。みおちゃんのは、何故か縦長の画像で、今一つ。みおちゃん曰く、まだ使い方がよく判らなくて・・・。S社製なので、画像はきれいなはずなんだが、残念。まー君の写真を使って、POPを作成。

 これで、イエローライスを売るための準備は、OK。

 次に、イエローライスのレシピを準備。

 プルプルとデストロイヤーで、同じように提供するために、レシピを作って、両店に配布。

 実は、プルプルとデストロイヤーでは、炊飯器や電源の関係で、微妙に水加減が異なる。このため、レシピにそった上で、各店で水加減の調整が必要になる。調整は、各店舗で行います。

 ちなみに、「玄米さらだのイエローライス」のレシピを以下に、公開します。

 材料(8合分)

  玄米さらだ    4合

  白米       4合

  スパイス(炊飯後取り出すもの)  クローブ(ホール)3g、シナモン(ホール)8g

                       カルダモン(ホール)4g、ローレル(ホール)4枚

  スパイス(炊き込んで混ぜるもの) クミン(ホール)4g ターメリック(パウダー)4g

  バター  30g、塩 1g

 @玄米さらだと白米を軽く2回ほどすすぐ。

  すすぎすぎると折角の玄米が白米になってしまうので注意(そんなことはないか)

 A水位線を7.5合に合わせて、クミンとターメリックを入れかき混ぜる。

 Bクローブ、シナモン、カルダモン、ローレルを入れる。

  ローレルは、半分にちぎる。

 Cバターと塩を入れる。

  玄米は十分浸水させる必要があるので、しばらく放って置く。

 D炊飯

 E炊きあがったら、充分蒸らす。

  ガバッと、蓋をあけて、匂いを嗅ぐ。スパイスの香りがモアッと上がってくるはずです。

  クローブ、シナモン、カルダモン、ローレルを取り除き、全体を混ぜ合わせて、出来あがり。

 以上。

 もし、人気が出たら、正式なメニューにして、50円UPぐらいで提供できればとは思います。

 はて、さて、どうなる事やら「玄米さらだのイエローライス」

 それじゃ、また。

2007.6.19