閉店ラッシュ2016

文 村上義明

 2016年は、村上カレー店にとって、ある意味記念する年になってしまった。他の店の閉店情報とか、よくない情報が耳に入りつつ、プルプルの売り上げが、見る見るうちに、低下していったのである。二月から三月にかけての冬の厳しい時期とはいえ、尋常でないくらい売り上げが落ち込んでいった。新しいメニューの投入など、いくつかの方策を試してはみたものの、売り上げが元に戻ることはなかった。見る見るうちに、村上カレー店全体としての赤字は膨らみ、これ以上の存続は、危険というレベルにまで達してしまった。村上カレー店を、存続するためには、デストロイヤーを閉店して、プルプル一店舗にして、不要な人件費を削減して、規模を縮小するしかないという結論に至ったのである。数年前からプルプル一店舗にしたほうが儲けが出るのは、明らかではあったのであるが、プルプルの売り上げが、一気にここまで落ち込むことは、想像できなかったのである。

 このようにして、村上カレー店の「カレー魂・デストロイヤー」は無残な最期を遂げることになってしまった。しかし、プルプル/デストロイヤーの熱烈なファンである、N氏とI氏が、「デストロイヤー」の跡を継がせてくださいと言ってきたのである。

 最初「新生デストロイヤー」は、元のデストロイヤーと同じ場所で営業する予定であったが、建物のオーナーが家賃を値上げしたいと言い出して、今までの家賃の倍近い値段でないと貸さないと言い出したのである。その家賃で今までと同じように営業したとしたら、潰れてしまうことは確実である。N氏とI氏は泣く泣く「新生デストロイヤー」のための新しい店舗を探すこととなった。新しい店舗は、元ラーメン屋の店舗で、席数は少ないが、格安で借りられる上に、駐車場付きの店舗であった。こうして、新しい「カレー魂・デストロイヤー」は8月3日に、オープンしたのである。

 去年閉店した店としては、デストロイヤーのほかに西28丁目のS、I家のS、HV3、琴似の超老舗Hなど、スープカレーブーム以降の厳しい時代を乗り越えてきた老舗のカレー屋が、あれよあれよと閉店していった年でもあった。新しい店がそれほど増えていない中、厳しい閉店ラッシュとなったのである。

 そんな中で、村上カレー店が、安泰かというと、閉店費用がかかったとはいえ、村上の年収は150万と、生活保護並みの年収しか得られなかったのである。これは、旧デストロイヤーの店舗を片づける事ができず、家賃を余分に払っていたのと、店舗の清掃代に敷金全部かかったのと、ドアの修理代25万を大家さんに払った上に、リースしていたエアコンの買い取り代金12万と、とにかく知らないうちに(いや良く判ってはいたのであるが)、貧乏になっていったからである。

 さて、そろそろ新店チェックと行きますか?

①CS元町イオン店
 元町イオンのフードコートにオープンしたCSの支店。小樽のCSの支店であるが、フードコート内のインドカレー主体のお店です。フードコートなので、店で注文して、出来上がったカレーをフードコートの中で食べる形式です。インドカレーが主体なので、それまでスープカレーが主体だったCSの系列としてとらえていいのかどうか考えるところですが、スープカレーも提供しているので、やはりCS系列なのでしょう。店内では、複数のネパール人が調理しており、最近はやりのインドネパール系のインドカレー店と変わりありません。ただこういう場所でインドカレーが食べられるということは、カレー好きにとっては非常にうれしいところではあります。逆に、ほかのインドネパール系のインドカレー店にとっては新たな展開系が見えてきたというところで、いい傾向にあるのかもしれません。これからは、フードコートにインドカレーが、当たり前になってほしいところではあります。

②北大前の中通りのMバザール
 北大前のスープカレーの有名店Cの裏手の仲通りにオープンしたのがMバザール。2015年12月のオープン時は夜の営業しかやってなくて、なかなか行けなかったのですが、昼の営業が始まったと聞いて、ランチに行ってきました。最近、昼の営業は日曜のみになったらしく、またちょっとハードルが高くなってしまったようです。メニューは、インドカレーと言っても割と南インドカレーチックだったり、昨今の流行のカレー以外の副菜(サブジやアチャール)が多彩だったり、夜は、タンドール系のメニューが増えたりと、店主の好みの料理を、好きなように出すという感じで、ちょっと高いかもしれないけど、面白いインド系の料理が食べられる店として、今後も注目したいお店です。昼のランチプレートが、カレー2種類がついて¥1300と北大周辺としてはちょい高めですが、それなりに面白いもの(副菜やスープ)がついてくるので、がっつり食べたい人以外は十分満足できると思います。今後、こういう「店主ありき」的なカレー屋が増えると、楽しくなること間違いなしなんだけどな?

③菊水のCA
 中之島にあるCの息子さんのお店。Cの支店というよりは、別の店としてとらえたほうがいいのかな?スープ自体は、割とあっさり目のスープで、最近のスープカレー屋の流行で、いくつかのスープの種類があります。スープの種類が増えればそれだけ、間口は広がるのだけれど、それについてくるコアなファンは少ないような気がしてならないのはわしだけなのかな?ドカッとしたホエー豚のハンバーグはおいしいです。辛さの指定は、そこそこ辛くしても大したことはないので、思い切って辛くしたほうがいいかも?中之島のお父さんのお店は、お父さんのキャラクター一発みたいな部分があるので、息子さんにも頑張ってほしいです。

④インド焼きそばM
 北大前の環状通の角にオープンしたのがインド焼きそばM。その昔カレー屋Pのあった場所です。北18条のインドカレー屋Sの系列の焼きそば屋さんです。焼きそばを調理するのはインド(ネパール)人?ですが、ユニフォームが焼きそば屋さんの白衣です。これぞ日印融合とも思えるけど、インド人にしたら変な恰好かもしれない。わしの記憶にある限り、こんな格好をしたインド人にはあったことがない。しかし、焼きそばは、VERRY GOOOOOODです。豚のキーマカレーと、太麺の蒸し麺を見事にまとめ上げた、絶品焼きそばです。辛さの指定が1~3と、その上の激辛(+200)まであり、辛い物好きでも十分満足できる。そのうえ安い、やきそば¥580でスープ+卵焼き+唐揚げで+¥200。近くで良い加減に酔った帰りに、締めの辛い焼きそば。北大生ならこれしかないと思うね?でも最近の奴らは辛いもの食べないからダメか?

⑤札幌A喫茶ついDEに○○○
 西岡のCOOP(有名店Kの向かい)の向かいにオープンした、トマトベースのルーカレーのお店です。基本となるルーカレーに各種具材(肉や野菜)がのったカレーです。辛さの指定はできませんが、調節用の液体ソースが結構辛いので、注意して調整するのがおすすめです。お勧めの激辛ホルモンはキチンと辛いので、辛いもの好きにはお勧めです。他にも餃子や牛すじなどもあり、試してみると面白そうです。ランチタイムは、サラダとカップの味噌汁がつくので、そこそこお得です。

⑥平岸のEカレー
 平岸のちょっと外れにオープンしたEカレー。薄野のSに居た(らしい)I氏がオープンしたお店(らしい)です。基本的にルーカレーのお店です。ただ、I氏の仕込みによって微妙に変わるかもしれないそうです。基本のルーカレーは、ルーの向こう側に使っているスープ=ブイヨンの濃厚さが伝わってくる、凶暴なルーカレーです。もう一つの野菜カレー用のルーカレーは、インドカレーベースの無水カレーライクな無添加カレーでこちらも、見逃すことができないカレーとなっています。できれば2人以上で行って、複数のカレーを同時に楽しみたいところです。ただし、カレーのオーダー取りから提供まで一人でやるので、あんまり大人数で行くと迷惑なので、考えていくようにしましょう。

⑦スープカレーR
 手稲の手稲石狩通にオープンしたのがスープカレーR。以前はルーカレーのお店があったのですが、いつの間にか潰れていたと思っていたら、新しいカレー屋さんになっていました。手ごろな値段で美味しいカレーが食べられる、非常に良心的なお店です。ちょっと粘土が高めのスープカレーは、ダルで厚みを持たせた技ありのスープカレーです。辛さの指定も、辛いのが苦手な人から、辛い物好きを納得させられる十分な辛さまで指定できるようになっています。メニューの数はそんなに多くはないけれど、味とコストパフォーマンスは十分だと思います。スープカレーが高いと考える人には、ぜひ一度食べていただきたいカレーです。近くにあるSと交互に食べてもいいかもしれない。店主のI氏は麻布の名店Sの出身なので味は保証付きです。今後のメニュー展開に期待が持てそうなお店です。

⑧手稲のRNC
 またしても手稲ですが、5号線沿いにオープンしたRNC。名前からして北24のMD/白石のRI系かなと思われますが、ちょっと違う感じがするので、独立した感じかもしれません。味も値段も、MD/RI系と同じ感じです。安心して食べられます。

⑨駅前カレーV
 南平岸の駅前にできた南区のYの系列のお店です。野菜と米を契約農家から仕入れており、あっさり系のスープを引き立てています。辛さの指定は10まであり、6から有料ですが10でもそんなに辛くはないです。有機野菜やコメを味わうためには、あんまり辛くするなということかもしれない。

⑩宮の沢のMカレー
 西区宮の沢の5号線沿いにできたのがMカレー。環状線沿いに同名のカレー屋がありますが、そちらは営業時間が合わない関係で食べられていません。かつて函館のカレー屋さんが入っていた店舗にできていたのがMカレーです。隣がつぼ8で、同じ敷地内に回転すし屋があります。ルーカレーが基本ですが、スープカレーやカレーラーメン、カレーグラタン麺やオムカレーなどもあり、気合が入っているのが伺えます。新しい店はこれくらい気合が入ってないとね!!ルー自体は割と濃厚で、美味しいです。ただし、辛さの設定は、甘口と中辛しかありません。基本のカレーライスが¥390で、ザンギカレーにしても¥750と結構リーズナブル!ザンギがおいしいです。

⑪富岡のSM
 手稲区富岡にオープンしたSM。36号線のKカレーの系列ということです。店の前に数台の駐車スペース(隣のコインランドリーと共有)と裏の通りに2台分の駐車場があります。お勧めのカツカレーが¥680、素のカレーが¥490です。スパイスをふんだんに使ったルーカレーと言う触れ込みでした。辛口、激辛が¥50でそこそこ辛くなります。テーブルに備え付けのミックススパイスを振りかけるといい感じになります。

⑫北海道カリー饂飩K電車通り店
 薄野にある北海道カリー饂飩Kの支店。白いムースの乗ったカレーうどんです。東京で流行っている店の、北海道版ということかな?激辛を頼んだら白いムースが赤くなって出てきました。激辛は十分辛くて満足できます。平べったくて太い麵がいい感じですが、量的に少なめなので、たくさん食べる人は大盛りにしたほうがいいかも。基本の饂飩で¥880で、チキンをトッピングすると+¥200です。丼と蓮華が食べにくいのが玉にキズかな?

⑬M教授
 円山にオープンしたルーカレーの専門店。ベースの素カレーが¥680で、カツカレーにムースを乗せると¥1380。自慢の浜カレーは¥1480。カレールーはバランスの取れたカレーです。浜カレーには、エビ、イカ、ホタテ、ムール貝が乗った上に、ルー本体にエビ油がトッピングされています。このエビ油が、基本のルーと混ざり合っていい味を出します。ただし、浜カレー以外にはエビ油がつかないので、このカレーを食べるためには、どうしても浜カレーを頼む必要があります。浜カレーが高いのは、多分オーナーの地元積丹から、海鮮物を運んでくる手間がかかっているためだと思われます。

⑭A大通公園店
 元町の薬膳カレーAの支店(フランチャイズ?)。味はAなので、保証付きです。ただワシが食べたときは、元町や南22の元祖のAに比べるとスパイス感が弱めかなとも、思いましたが、スペシャルスパイストッピング¥200をすると、Aを超えるスパイス感!!これを覚えてしまうと、これなしでは食べられないかも?値段と量も十分でした。Aのカレーが、大通で食べられるのはうれしい限りです。

⑮アジアンダイニングBL
 大通西17丁目にオープンした小樽のN茶屋の系列店です。インドカレーのほかに、タイカレーのセットや、タンドリー系の丼もの(テイクアウト)なども、あります。夜は、バーとして利用可能なのでこちらもいいかもしれません。味はN茶屋なので、保証付きです。ただ、札幌でよくあるインド/ネパール系のインドカレー屋さんとは、スパイスの配合が違うので、インドカレー好きには、ぜひとも食べ比べしてほしいところです。これであなたも、インドカレー通!!でも、丼ものも気になるな・・・。

⑯SM西11丁目店
 南1西11丁目にあったナポリタン横丁の跡地にオープンしたSMです。富岡のSMと同じ系列の店ですが、富岡で食べた時の3倍くらいおいしく感じました。ルーのコクとスパイス感が半端じゃないです。どっしりとしたルーの質感の向こうに、フルーティーな甘さが感じられ、絶品です。辛さの指定はしませんでしたが、十分に辛かったです。こんなに辛くてほかの人は大丈夫って感じですので、辛い物好きにはお勧めです。カツカレー¥680でテイクアウトの容器代は¥0。オフィスにテイクアウトするにはぴったりのカレーです。

⑰カレー魂D
 南14西14にオープンした、スープカレーのお店です。村上カレー店のレシピを使った新しいスープカレー屋さんです。電車通り沿いのカウンターのみの店です。駐車場が3台分。コストパフォーマンスが異様に高いです。ランチタイムは、¥800、ライチタイム以外は¥950です。出前もやってます。プルプルのメニューは、大体食べることができます。お勧めのお店です。

今年オープンした店に、傾向があるのかないのか?全体としてオープンした店が少なく、方向性も、バラバラです。インドカレーもあれば、スープカレーもあれば、ルーカレーもある。普通の状態に戻ったということなのか?それにしても、閉店した店も多く、かつての札幌のカレー文化の賑わいは、何処にって感じです。昨今の経済状態から見て、そんなに景気が悪いとは思えないのですが(もちろんいいとも思えないのですが)、新しい店が増えないのは、厳しい状況が続いているということなのかもしれません。今年は、少しでも多くの新店がオープンすることを願うだけです。でも、その前に、自分の足元を固めるほうが先か?

それじゃ、また。

2017.1.2