冷やしカレーあります。

文 村上 義明

 最近、スープカレー屋で「冷やしカレー」を出している所が増えている。当然、夏限定では有るが。

 ラーメン屋では、夏になると「冷やしラーメン始めました。」とか「冷やしラーメン有ります。」といった張り紙や、のぼりが立っていたりする。スープカレーは、熱々の状態で食べたいのであるが、さすがに夏はきついという人も居るだろう。わしに言わせると、北海道の夏なんて、大した暑くは無いだろうと、冷やし何とかなんてアマチュアだぜ!!と言いたいところでは有るが、とにかく食ってみない事には始まらない。

 実は、以前 土曜スペシャルで「冷やしカレー麺」というのをやった事が有る。その時は、うちのカレーにスパイスとごま油を足して冷やしカレー用のカレースープを用意して、冷たいチキンレッグを用意して、ラーメンを茹でて冷水で洗い、カレーをかけたのである。ああ、思い出してきた。そうだ、冷たいままだとスパイスが立ってこないのでスパイスの量をふやしたのである。その上4口しか使えないガス口が、麺茹で用に1口使うので、他のカレーを作るのがストップしてしまうのである。誰がもう一度やるかと思ったものである。同じ時期にスパイスバーTでも、似たようなメニューを、出していたなー。

 まずは、S16W9の札幌スープカレーMである。実はここの冷やしカレーは、去年から気になっていたのであるが、スープカレーブームの開店ラッシュに追われて、新店ばっかり行っていたら、夏が終わってしまっていたのである。今年は、開店ラッシュが無いのでらくらくMに行く事が出来た。ありがたいことじゃ。Mへ付くと、ここで一つの問題が、店の買い物がてらMへ寄ったので、当然車である。ちなみに、車には○っくりっきーで買った、ビールと398円の調理用の日本酒が乗っている。Mの前には既に1台の車が止まっていた。しまった、チャリで来るんだった。しかし、良く見るともう1台止めれそうである。わしは、慎重に車道と歩道との段差を気にしながら、バックで1台ある車の横50cmくらいに止めた。しかし、降りてみると、カナリ隣の店にはみ出している。これでは、Mに苦情が来てしまう。あのやさしそうなマスターに苦情が行くのは、極力避けなければ成らない。わしは、車と車の距離を30cmくらいにして、再度駐車し直した。OK、ばっちりじゃん。降りるのはカナリ苦しいけど、これで店に苦情が来る事も無かろう。Mに入る。2組が食事をしていたが、相変わらずマスター1人で店を切りまわしていた。御苦労さまです。迷わず「冷・スープカリー」を注文する。辛さ20で。冷麺が入っているのでご飯は不要。暫くすると、とりそぼろとキムチが乗った「冷・スープカリー」の登場である。

 フォークを使って冷麺を食べる、ごつごつとした冷麺の感触がうれしい。スープをすくってのんでみると、カナリふっくらしたスープである。和風の出汁を混ぜてあるのか、非常に優しい味になっている。なるほど、この感じで来たか?しかし、ここでちょっとした疑問が・・・。ひょっとして、焼肉屋Tで冷麺食うのとどっちが美味しいだろうか。もちろん、Mの方がずっとカレー風味なのではあるが、スープも多いし・・・・。いや、こう言う事に疑問を感じては行けない。なかなかの「冷やしカレー」でした。御馳走様でした。食べ終えて店を出ると、先に出たお客さんで、わしの車の横に止めてあった車の持ち主が待っていた。車と車の間が狭いので、先に出てくれと言う。ギリギリに止めたので、わしが先に出る事になった。歩道と車道の段差を気にしながら、ゆっくりと車を出したつもりであったが、「ガリガリ」と腹をこすってしまった。後ろのお客さんが、申し訳無いという顔をしてこちらを見ていた。しまった、と思ったが、仕方が無い。後ろのお客さんと軽く挨拶をして、その場を去った。

 2軒目は、低価格と独創的なメニューで定評の有る、宮の沢のVである。Vの前に車を止めて中へ入る。入り口のボードにも冷やしカレーの文字が踊る。ここも期待できそうである。わしの他にお客さんが、2組。迷わず「カッペリーニの冷夏冷(レイカレーと読む)」を注文する。暫くして白い皿に盛られた、冷やしカレーが出てくる。Vの冷やしカレーは、パスタである。極細のパスタ、細さはそうめんくらいである。そのパスタがぐるぐると巻かれていて、その上に、トマト、パプリカ、ズッキーニ、ミズナ、鶏肉などが乗っている。見た目も派手でなかなかである。一口食べると、「ぶわっ」とバルサミコ酢の風味が口中に広がる。カレーは結構トマト風味に振られている。トマトの風味とバルサミコ酢の風味が新しいなかなかの力作である。ただし、Vの他のカレーが割りと安価であるのに対して、冷やしカレーの方はちょっと高めになっているのが悔しいところである。しかし、狭い厨房で、全く別の事をするのであるから、「この位は払ってもらおう」という気も非常に実感できる作品である。ただし、辛さの指定が無く、タバスコで自分で辛さの調整をする必要があり、タバスコを使うと酸味が出てきてしまうところが、弱点かな。

 3軒目は、新琴似のT、あっさり風味のスープが評判の店である。中に入ると「冷やしカレーらうめん」の張り紙。これも迷わず注文する。すると、メインの具材を、3つの中から選んでくださいと言う事で、チャーシュー、ささみ、そぼろの中の一つを選んでくださいとの事であった。但し、100円UPで、1種類追加出来るとの事で、100円UPでチャーシューとそぼろを注文する。ここはそのネーミングが潔く「らうめん」である。「冷やしらうめん」なのか「カレーらうめん」なのか?いや「冷やしカレーらうめん」である。暫くして、らうめんが出てくる。見た目は何がどうしても「冷やしラーメン」である。ちょっと冷やしラーメンぽくないといえば、半熟の卵が乗っている位か?一口ラーメンを口に入れると、冷やしラーメンである。と、思ったらラーメンの向こうにカレーの風味がほんのりとしてくるではないか。なるほど、「冷やしカレーらうめん」である。カレーの風味はかなり希薄であるが、冷やしラーメンのカレー風味として食えば、問題はなさそうである。具のチャーシュウは、かなり厚めでボリュームが有る。チャーシューはマストである。

 4軒目は、カレーうどん専門店で有名なOである。ここのカレーうどんの、完成度の高さはカレーマニアなら認めるところである。そのOの冷やしカレーといえば、期待が持てるところである。広い駐車場に車を止め、店に入る。ここへ入るときは、いつも気後れしてしまう。店の構えが立派過ぎて、本当にわしがここでカレー食っても良いのかと思ってしまうのである。しかし、スタッフも、立派に教育されていて、丁寧な接客でもてなしてくれるのである。

 注文して暫くすると「冷やし黒胡麻カレーうどん」が運ばれてきた。皿の所々が黄色くなっていたり、赤くなっていたりする。説明によると、ターメリックとパプリカを振っているので、お好みで混ぜ合わせて食べてくださいと言う事であった。見た目がきれいである。薄茶色の皿の所々に赤と黄色、うどんの上にとり胸肉やきゅうりなどが乗った上に、黒胡麻ペーストの黒が散らしてある。ビジュアル的にはパーフェクトな出来具合である。さすが、イタリアンやフレンチ出身の人達は一味違うぜと思ったのである。味は、美味しい。京うどんのごつごつした歯ざわりに、胡麻とカレーの風味が絶妙に絡み合う、クコノミのアクセントもなかなかである。天かすがなかなかの仕事をしていて、カレーの風味に絶妙な脇役になっているのである。これも本物の「天かす」なんだろうなー。それと、食べるときにエプロンが渡されるのであるが、これは、絶対付けた方が良い。ごつごつした京うどんは、間違いなくはねるからである。まー「わし」のようにカレーの「しみ」など気にしないというのであれば、付けなくても良いです。

 5軒目は、琴似の元祖札幌カリーPである。入った早々、「お久しぶりですー!!」とYさんから挨拶をされる。本当に久しぶりでした。以前、北海道カレーナンチャラに関わっていたときは、RのI氏なんかと、色々と打ち合わせをしていたのですが、ここ2年ぐらい合っていなかったので、本当に久しぶりです。そして、店員の1人から名刺を渡される、2番目の娘さんだそうで、やはり、Yさんに似ている。ついでにYさんとも名刺交換。なんと、Yさん「代表取締役」になっているではないか。ああ、あこがれの「代表取締役」、わしは、恐れおののいてしまったのである。実は、冷やしカレーを食べ歩いているんですと説明して、「スープカレー冷やしぶっかけ五目麺」を注文。辛さは4番の激辛、ちゃんと辛さの指定が出来るのが嬉しい。

 厨房の中で、麺の湯切りをしている様子が見える。暫くして、出てきたのは見た目はほぼ冷やしラーメン、で横に「たれ」がついてくる。辛さが足りない場合は、唐辛子で調節するようになっている。この「たれ」をちょっと味見してみると、Pのカレーの味がする。しかもかなりトマトの風味が効いている。と、思ったら。レモンも入っているそうだ。ラーメンに「たれ」をぶっ掛けて、一口食べてみると、おカレーだ。

 一口食べて、トマト風味のカレーの味がバシッと口の中で広がる。スパイス感もしっかりしている。さすが、Yさん、わかってらっしゃる。そう、冷たいとカレーのスパイス感が出てこないのである。このため、スパイスを増量しておかなければ、いつものスパイス感が得られないのである。Yさんに「これまでで一番カレーらしいです。」と告げると、「そうなのよ、冷たいとスパイスが出てこないのよねー。」とのこと。さすが、よく判ってらっしゃる。今回の冷やしカレーで一番は、多分Pの「スープカレー冷やしぶっかけ五目麺」だと思う。にしても、名前が長いのが難点かな?

 冷やしカレーマニアには、マストな一品です。

 ところで、Yさんに、「冷やし納豆カレーなんておいしそうじゃない?」と言われてしまった。ふむふむ、なるほど これだけ納豆カレーの店として名を売っているのであるから、わしも「冷やし納豆カレー」をやらない手は無いか?

 まず、低温でのスパイス感を補うために、クミンとコリアンダーの量を倍にし、マスタードを追加する。カレーを冷やし、具材を用意する。納豆は予め醤油を混ぜておく。

 どんぶりの底に、ご飯を敷き詰め、挽肉、納豆、大根下ろし、なめたけ、トマト、なすの揚げ浸しを乗せて冷やしたカレーを、上からかける。混ぜ合わせながら食べて行く。納豆と挽肉を混ぜる。おっ、ナット・挽肉ベジタブルじゃん。更に、大根下ろしとなめたけを混ぜる。なめたけご飯だー。ナット・挽肉ベジタブルとなめたけご飯を混ぜる。これはいけるねー!!しかし、スパイス感が足りない。これはこれで美味しいのだけれど、「また食べたい!」と思えるだろうか?ちょっと疑問である。何にしても、今一つ「カレー」っぽくないのである。どちらかと言うと「冷やし納豆どんぶりカレー風味」と言う感じである。Yさんの作った「スープカレー冷やしぶっかけ五目麺」のカレーらしさには勝てないのである。残念。(ブラックペッパーが足りないのかなー?)

 最後に、村上カレー店Pの土曜スペシャル「冷やしキーマカレーうどん」を食べてみる。わしは、基本的にスープ工房であるデストロイヤー勤務なので、Pの土スペはそうそう食べる事が出来ない。そこで、デストロイヤーの仕込み時間を利用して、Pに食べに行こうと思っていたのであるが・・・。この日は、あいにくの雨で、湿度が高く不快指数の「高いこと」この上ない日であった。ちなみに朝、スープの火を入れて、汗だくになり。昼は、カレーを作りながら、汗だくになり。仕込み時間では、サンボールの仕込みで、汗だくになり。やっとの思いで、Pにカレーを食べに行こうとしたら、Pのカレーの残量が少ないとの事で、カレーと具材を持って、車でPへ。しまった、時間が無い。忙しそうなPの中村店長にお願いして、「冷やしキーマカレーうどん」をテイクアウトする。

 やっと食える「冷やしキーマカレーうどん」、うどんの上に挽肉、大根下ろし、しそ、ささみ、ナスの揚げ浸しが載り、その上から、冷たいカレーがかかっている。一口食べる、と言うより、一口すする。(うどんなので)うどんの歯ごたえは、Oの京うどんとは比べ物にはならないが、まーそこそこか?しそと大根下ろしが良い仕事をしている。スパイス感は、やはり物足りない感がぬぐえないが、そこそこカレーの味がしている。中村店長によるとスパイス感はあまり出さないように作っているとの事で、そういう振りかたも「有り」かと、ちょっと納得。ただ、冷たい分だけ、塩味がもう少し強い方が良いのかもしれない。(これは中村店長も認識していて、来週からは改善する予定です。)

 ここまで、6軒の冷やしカレーを食べて見て思うことは、「冷やしカレーは難しい」この一言である。

 そして、6軒中、5軒で、わしは、わし以外の人が「冷やしカレー」を注文しているところを見たことがない。

 ひょっとして、「冷やしカレーは売れない?」のかもしれない。

 今年の気温の影響も有るのかもしれないが、難しい上に売れないのであれば、本当のカレー好きしかこの難問に挑戦しないのではないか?

 わしは、思います。「冷やしカレー」の新たな挑戦者が更に増える事を期待します。(売れないかもしれないけど)

 それじゃ、また。

2007.8.4