本日のスープカレーのスープ

文 村上義明

 「本日のスープカレーのスープ」 言わずと知れたベル食品のレトルトスープカレーである。いままで、NKフーズからK、M、T、Rなどレトルトのスープカレーが発売されてきた。しかし、それはあくまで専門店の味をレトルトで再現するというものであった。しかし、ベル食品のそれは違った。大泉洋プロデュースによる、スープのみのカレーである。何と具が入っていないのである。調理する人が考えたなら「具が入っていないというのは、完成前の状態である。」と考えるところであるが、まさしくそれは、買った人が完成させるスープカレーなのである。

 これは、試して見ないわけには行かないだろう。

 中を開けて見ると、レトルトカレー、スパイス、アイデアメニューの冊子が入っている。

 スパイスの成分を見てみると、クミン、コリアンダー、フェンネル等カレーのメインスパイスが入っているだけである。マジスパのレトルトのように辛みが入っているわけではない。あくまで最後に振りかけるマサラの役割である。と言うことは、辛さを調節するためには、自分でカイエンペッパーなどを用意しなければならないということである。

 アイデアメニューの冊子には、7つほどレシピが載っている。

 1.チキンカレー

  チキンをキツネ色にこんがり焼き上げます。・・・・・チキンをこんがり焼き上げるのはかなりの仕事だと思う。

 2.麻婆カレー

  厚揚げとナスを炒め・・・・。お好みでチーズを添えてもGOOD! これは手軽でおいしそう。

 3.ラタトゥイユカレー

  オリーブオイルで野菜とベーコンを炒めます。・・・ ちょっと安易かな?

 4.シーフードカレー

  魚介類を・・・。オリーブオイルで玉葱を炒め、ボイルした魚介類を・・・。 これも旨そうである。

 5.ヌルネバカレー

  お鍋にスープ、オクラ、なめこを入れ、火にかけます。野菜に火が通ったらOK。納豆とすりおろした大和いも、温泉玉子を添えましょう。  良いのか?これで。

 6.キャベコンカレー

  器にキャベツ、ベーコンを入れ、電子レンジで約3分加熱。一度、器を取り出してスープを注ぎ、さらに2分加熱するだけ。 ・・・・・。

 7.つるつるフォーカレー

  フォーを茹で、・・・・。アサリの口が開いたら完成。・・・・ フォーが入ってなくてもおいしそう。

 レシピを読んだだけだと???の部分も多く、怪しげであるが、写真と一緒に見るとかなりの説得力である。

 シーフードカレーなんかは、中島公園近くのSの日替わりカレーを髣髴させるような写真である。

 とりあえず、味を確かめるためにはチキンカレーが一番である。

 チキンレッグをキツネ色にこんがり焼くのは手間がかかるので、店で使っているチキンレッグを使うことにする。手間がかかっていないわけではない(圧力鍋で1時間煮こんだものである)。ジャガイモ、ニンジンも店で使っているものを代用。茹でる手間が省けてちょうど良い。レンコンと茄子とピーマンを炒めて、「本日のスープカレーのスープ」を入れて出来あがり。

 一口食べてみると、なかなか美味しいのである。添付のスパイスを振りかけてみると、かなり行ける感じである。

 200gという量にかなり不安を抱いていたのであるが、こうやって具材と供にさらに盛ってみるとそこそこの量である。良く考えてみたら、通常のレトルトカレーは、具が入って250gというのがほとんどである。安売り用のカレーは200gだったりする。だから、スープだけで200gというのは、妥当な線であるかもしれない。(うちの冷凍カレーのスープのみ300gは、多すぎるかもしれない?)

 はっきり行って、美味しいスープカレーである。傾向としては、Rのトマト風味を弱くした感じとでも言おうか?Vを優しくした感じといおうか?札幌スープカレーの人気店の標準を抜粋したような味である。これならば¥500近い値段も納得がいくものである。

 札幌スープカレーを知らない人に食べさせた場合にも、かなり雰囲気を説明できる代物である。

 さすがベル食品である。ジンギスカンのたれの味がすると評判であるが、わしにはわからなかった。以前ラムカレーの隠し味に、ジンギスカンのたれを使ったことが在るが、明らかにそれとは違うと思う。でも、ベル食品の人が、袋に詰める直前に、これが入ってないと「うち」の製品じゃないとか言いながら、ジンギスカンのたれを一滴ずつ垂らしていたら、それはそれで嬉しくなってしまう。

 ここまで美味しいカレーを手に入れて、あれを作らないのはイケナイなと言う思いが、沸沸と沸き起こってきたのである。

 それは、「納豆・挽肉ベジタブル」である。

 鍋に鳥の挽肉と「なめたけ」、ニンジンを入れ炒めた刻み茄子とオクラを入れる。

 普通は、刻み茄子の代わりにイモが入っているのであるが、ここは敢えて刻み茄子にする。いわゆる「ナトナス」と言われているものである。

 店ではオーダーを速く通すために、オーダーを厨房に叫ぶのであるが、この時に使われるのがこの呼び方である。

 チキンが2つのときは、「チキチキです。」 ナットが2つの時は「ナトナトです。」と通すのである。

 しかし、在るときお客さんに真似されて、

 わし「何になさいますか?」

 お客さん「ナトナトです。」

 わし「・・・・・・・・・・・・・」

 これでは、辛さもご飯の量も聞けなくなってしまうではないか、かなり困ってしまった。

 お客さんにお願いです。「ナトナトです。」とオーダーしないで下さい。トホホホホホ。

 ちなみに「ナトナス」とは、ナット・挽肉ベジタブルのイモの代わりに刻み茄子を入れたカレーのことである。

 さあ、準備は出来た。

 本日のスープカレーのスープを、鍋に入れて具材に火を通す。

 全体に火が通ったらいよいよこいつの出番である。

 知っている人は知っているが、うちの納豆カレーといえばマルカワ食品の、挽き割り納豆である。

 温まったカレーの上に納豆を乗せる。

 納豆を乗せたら、勢い良く納豆を混ぜ込んで、器に注いで出来あがりである。

 思ったとおりであるが、見た目はうちのカレーそのものである。当たり前である、使った材料は全てうちの店、純正のものである。

 食べた感じは、かなり違っている。やはり雰囲気としては、Rの納豆カレーに近いかもしれない。何かが足りない感じがしてしまうのである。よーく考えて見ると、味付けが上品なのである。うちのカレーはもっと甘味も、塩味もきついのである。そこで、手近に在ったナンプラーで、味を足してみることにした。すると、かなり近づいたではないか?さすがに店で出したらバレルケド。代用品として考えたらなかなかのものである。しかも、人によってはこっちの方が美味しいと思う人も居るかもしれない。ナンプラーが無い場合は、醤油で十分だと思う。

 恐ろしい食べ物である。こうして実験して始めて気がついたのである。このカレーが¥500でよかったと。

 もし、ベル食品がこのカレーを¥300くらいで出していたら、つぶれるカレー屋が続出してしまうだろう。

 いや、それは多分 大泉 洋氏が許さないだろう。なにしろ彼はあまりのスープカレー好きであるが為に、「本日のスープカレー」なる写真集(¥1600)まで出してしまっているのだから・・・。

 てっきりカレー本だと思い買ってしまったワシは、毎晩「ワー!洋ちゃんが、こんなにたくさん。」などと言いながら、カレーのレシピを泣きながら読んでいるのであった。

 ベル食品の「本日のスープカレーのスープ」は、以上のようにかなりの出来である。値段もかなりの出来である。

 お金に余裕の在るスープカレー好きは、是非とも色々試してみるべきだと思う。

 これで、スープカレーがもっと盛りあがれば、楽しいこと間違い無しである。

 それじゃ、また。

2004・11・25