納豆カレーコレクション

文 村上義明

 今スープカレーブームは、とどまる所を知らない。新しい店が次々と現れて来たり、有名店では、2号店や3号店を出したり、大きな箱に移転したりと、どんどん増殖しているのである。

 増殖して行って、飽和状態になるのかもしれないという不安を抱えつつも、新しいお客さんが次々と増えてきて、まだまだ行けるぞという気持ちにもなれるのである。

 こんな状態の中、新しいカレー屋で納豆カレーがあるのを発見してしまった。知り合いでもなんでも無いカレー屋である。わしは、不安になった。これで良いのか納豆カレーである。

 ここ2ヶ月間、土曜スペシャルで、3種類のカレーを提供している。しかし、客の半分くらいは、スペシャルカレーなど見向きもせずに、納豆カレーを注文するのである。これで良いのか納豆カレー。

 わしは、納豆カレーの食べ歩きを開始したのである。

 まず、北区のKである。

 Kの店主のH氏は、御存知のように琴似のRの味を作った人である。わしも尊敬する調理人の1人である。

 Kの納豆カレーは、基本的に挽肉と合わせるタイプの納豆カレーである。しかし、納豆と挽肉の量がうちのカレーより少なめである。このため、スープをスポイルするかしないかのぎりぎりの線で、極めてきわどい味である。

 Kのカレーは、わし的には大好きなカレーである。しかし、納豆カレーにするとスープの味がスポイルされて今一つの気分にさせられてしまうのである。後に、もっとスープの濃いBNCで納豆カレーを食うまでは、この気持ちは変わらなかったのであるが、BNCの納豆カレーを食った後はKの納豆カレーも、十分ありだと確信するようになったのである。

 次に、開店して間も無い中央区のKSである。

 始めてここのカレーを食べた時には、上手くまとまって良く出来たカレーだと思ったのである。

 その近辺に既に2軒のカレー屋があるので、カレー激戦区になったなーと感じたものである。

 KSの納豆カレーは、基本的に挽肉と合わせるタイプのカレーである。

 しかし、入っている納豆と挽肉の量が非常に少ないのである。食べた時に納豆臭さは無いものの、食べ進んで行くと、納豆と挽肉がミックスされてきて、わしは何を食ってるんだろうと言う気分になったのである。

 納豆と挽肉を入れると確かにスープの味がスポイルされてしまうのであるが、そこを気にして納豆と挽肉の量を減らすと、カレーというよりは納豆汁に近い物になってしまうのである。

 しかし、ここが問題である。納豆汁が好きな人は、この感覚が美味しいのである。

 ここに行きつくまでに結構かかってしまった。そう、納豆カレーを食べる人には、実は2種類居るのである。

 一つは、納豆と挽肉を合わせた妙な味に取りつかれた人達。

 もう一つは、納豆汁が好きな人達である。

 前者は、普通のカレーに納豆を入れても美味しくないねという人達である。

 そして後者は、あちこちのスープカレー屋で納豆をトッピングしたりする人達である。

 次に行ったのは、中央区のBNCである。

 ここのカレーは、これでもかってくらいスープが濃いカレーである。

 納豆の入ってないカレーは、スープカレーかラーメンかと言うくらい濃いスープである。しかも、辛さもビシバシと決めてくれるお店である。

 ここの納豆カレーは、納豆を食べさせる納豆カレーである。そう、挽肉は入っていないのである。しかも、丸大豆納豆である。しかし、他の具が納豆に負けないくらい、これでもかって位、入っているのである。超豪華納豆汁と言った雰囲気である。しかし、最初に言った通りスープが濃いのである。

 この納豆カレーを食って、はっきり言って「わしは感動した。」。

 うまいのである。物凄く旨い納豆汁である。納豆と他の具のバランスが良いためか、納豆臭さを感じさせないのである。いや、嘘である。納豆臭さは感じるのであるが、それ以上に野菜やスープやスパイスが勝っているのである。

 このカレーを食ったときに、Kの納豆カレーも非常に納得のいくものに感じられたのである。

 挽肉の入っていない納豆カレーで「納豆を食わせるスープカレー」として、わしが始めて美味しいと感じてしまったのだから、超一級のカレーだと思う。恐るべしO氏。

 次に行ったのは、豊平区のPである。

 ここの納豆カレーは、挽肉と合わせるタイプのカレーである。

 ここは、納豆の炒めカレーとかもやっていて、おもしろい店である。

 以前、納豆の炒めカレーを食べて美味しかったので改めてスープタイプの納豆カレーを食べてみることにする。

 ここの納豆カレーは、肉の食感やスパイスの使い方が違うにしろ非常にうちのカレーに近いのである。うちのカレーよりブラックペッパーやクローブが強く出ており、スパイス好きにはうちのカレーより旨いと感じると思う。

 実際わしなんかは、うちの納豆カレーより旨いじゃんと思ってしまったほどである。

 

 最後に、東区のHSである。

 ここのカレーは、納豆カレーで無いカレーは、普通のスープカレーである。最近、江別から移転してきたのであるが、江別に食べに行ったときは、玉葱が多いどちらかと言えば澄川のKに近い味だったような気がするが、先日食べたらDに似てきたような気がした。どちらもワシ好みなので、納豆カレーも期待していた。

 ここの納豆カレーは、納豆汁系の納豆カレーである。黒大豆の大粒納豆とチーズが入っているのである。割と甘めのスープに黒大豆納豆をチーズと絡めて食べると言うものである。

 ただし、他の具が少ないためか、甘めの納豆汁カレー風味みたいになって、今一つの感が否めない気がした。

 他に琴似のRの納豆カレーは、北区のKとほぼ同じである。

 これらのカレーを食べて、どれが一番という言い方は出来ないが、味の嗜好は、大体つかめた気がする。

 納豆カレーを、納豆を食べさせる側から順に並べてみると、以下のようになる。

 BNC > HS > KS > K、R > プルプル > P

 つまり、スパイシーな納豆カレーが食べたい人には、Pがお薦めである。

 特に、納豆とオクラの炒めカレーはお薦めである。

 納豆汁に近い納豆カレーが食べたい人は、BNCがお薦めである。

 ただし、BNCは、納豆カレーが無い日もあるので注意が必要である。

 また、逆に納豆汁に近いカレーが食べたいのであるなら、MSなどで納豆トッピングするのも手である。

 先日、土曜スペシャルで納豆カレーに対抗すべく、新しい納豆カレーの開発に挑戦してみたのであるが、かなり手ごわいことが発覚したため、今回は見送った。

 元祖納豆カレーの山小屋では、カレーに納豆、野沢菜、鰹節を入れているそうであるが、そう言うことも加味した上で、納豆挽肉ベジタブルを超える納豆カレーは出来上がるのであろうか?

 永遠の仮題になるかもしてないけど、もう少し挑戦してみても良いかなと、思っている今日この頃である。

 夏から始めた、納豆カレーコレクション、こんなに時間がかかってしまったのに、結局出口が見つからないままで終わってしまった。恐るべき納豆カレー。

 てなわけで、それじゃ、また。

2003.11.3