プロジェクトD(デー)
文 村上 義明
プロジェクトD(デー)とは?それは、赤字の続く村上カレー店の内側から沸き起こってきた。3ヶ月連続の赤字で、村上カレー店は、衰弱しきっていたのである。元気でがんばっているスタッフの中にも、疲労の影がうっすらと忍び寄ってきていた。いつまでこんな状態が続くのだ。皆の中に焦りが見えかけてきたのである。
デストロイヤーの売上が伸びなければ、「プルプル」はもちろん「デストロイヤー」もろとも村上カレー店が崩壊してしまう。そんな危機感が、みんなの中にあった。じゃあ、どうすれば良いんだ。プルプルは納豆カレーを売り物に成長してきたのであるが、デストロイヤーには、それに匹敵する武器が無いのである。武器の無いデストロイヤーは、デストロイヤーとは言えないのではないか?(いや、レスラーのデストロイヤーは、武器が有っても無くても強かったような気がするが・・・・)
デストロイヤーの武器となる、新しい定番メニューを作らなければならない。
ここから、プロジェクトD(デー)は、始まるのである。(Dを”ディー”などと読んではイケナイ)
村上カレー店系列としては、やはり納豆を前面に押し出すべきという意見も出るが、それもどうかと思われる?
@納豆の種類をそろえる。
挽き割り、丸大豆、小粒、黒大豆 等々
A納豆のメーカーをそろえる。
M、O、A、それぞれ挽き割りの粒の大きさや、糸の引き具合が微妙に異なるのである。
ちなみに、うちの納豆カレーに一番合うのが、Mの挽き割りペア納豆であることは、知る人ぞしる事実である。
B挽肉の種類をそろえる。
鳥挽肉のほかに、豚挽き肉、合びき、ラムなど・・・
C土スペで実績の有る「豚納豆」を復活させる。
・・・・・・・・・・。
いや、納豆カレーにこだわる必要は無い。
とりあえず、土スペで人気が有るのは、豚カレーである。
ここは、ひとつ豚カレーで攻めてみようか、と言うことで開発の方向性は決まったのである。
しかし、通常のメニューに豚カレーを登場させたとしても、何が潜んでいるか判らないし、何が売れるのかわからないし、メニューの改良の時間が必要である。
それには、やはりスペシャルカレーとして、お客さんからの声をフィードバックさせる必要があるのではないか。
土曜スペシャルだと、プルプルと競合してしまうし、これから更に激しさが増すであろう土曜日の仕込みに影響を与えてしまう。ここは、やはり日曜日か?
日曜スペシャル・日曜スペシャル・日曜スペシャル
3回書いてみたけど、やはり日曜スペシャルである。
ただし、日曜スペシャルには、ある種の危険な賭けが潜んでいる。
日曜日に来るお客さんというのは、ある種「ハレの日」のカレーを食べる人達である。毎日カレーを食べる人達ではないのである。(中には毎日の人も居るのであるが)
そう言った人達にサンプルになってもらって好評だったとして、平日のお客さんがそれについていけるだろうか?不安は残るが、日曜スペシャルで試してみるのが一番影響が少なくフィードバックしやすいので、日曜スペシャルに賭けてみることにした。
日曜スペシャル第一段は、6月6日である。
プロジェクトD「日曜スペシャル」最初のメニューは、何になるのか。
ここからは、日記形式で開発の様子を綴ってみようと思う。
5月30日
日曜日である。開発期間は一週間。あれ?これは、昔の土曜スペシャル単発版みたいではないか?
あの苦悩の一週間の連続が、2年ぶりに戻って来るのか?厳しいぞ!!!!!。
とりあえず、豚肉を煮こんでみる。
土スペの豚の調理法を参考にして、玉葱と針ショウガを加えて煮こむ。豚肉は、道産の豚を使いたかったが、カナダ産しかなかったのでとりあえず試作をしてみる。
出来あがった豚肉は、ほろほろとしてなかなかの出来具合である。
しかし、玉葱はとろとろになって、カレーに入れると全く存在感が無くなってしまう。カレーに入れて食ってみる。針ショウガの辛さが刺激的である。0番レベルで食べる人達にはカナリの辛さになってしまう。これではイケナイ。円山周辺の人達は、まだ辛さにはなれていないのである。出来るだけ辛さ控えめでも食べることの出来るカレーにしなければイケナイ。
成功とも失敗とも言えないが、うっすらと何かが見えてきたような気がした。
5月31日
昨日の残りの豚を、キャベツと供に煮こんでみる、更に仕上げに紅ショウガを乗せてみる。
なかなか行けるではないか。紅ショウガ好きにはタマラナイ一品である。
針ショウガなしにして、紅ショウガのみにしたら、食べやすいかもしれない。
6月1日
道産の豚肉を肉屋さんから取り寄せる。100グラム¥110で少々高いのが気に掛かる。定番メニューにするのであるから、出来るだけ原価を押さえなければ成らない。
今度は、臭み消しのショウガとクローブと八角を使って煮こんでみる。
なかなかの出来である。八角の香りが豚肉と合っているような気がする。
豚の五香粉煮込みみたいな感じに仕上がった。
もう少し他の人の意見が聞きたいところである。
しかし、頼りになるはずのキンゾーは肉がダメなのである。(残念)
明日、他の人に食べてもらって、意見を聞くことにしよう。
6月2日
試作の豚カレーを、プルプルへ持っていって食べてもらう。
豚のほろほろ感と紅ショウガが、牛丼っぽさを引き立てていてなかなか好評である。中には、牛肉ですかと聞いた人も居るらしい。・・・・・・?。
なかなか好評であるが、緑ものがインゲンなので目新しさがないという意見もあるし、千切りピーマンが良いとか、ねぎを載せるのもよさそうであるが、それじゃ土スペだよねという意見も有る。
もうすこし、改良の余地が有りそうである。とは言え、豚の仕込み自体はこれでOK。
あとは、何か新しい野菜なり具材を追加すれば完成である。あしたは、デストロイヤーが休みなので、具材探しでもしてみようと思う。
6月4日
新しい具材として、そらまめ、さやえんどう、ヤングコーン、れんこんを試してみる。
そらまめは、予め柔らかく煮ておく。
ヤングコーンは、缶詰である。そのままでは、少々水っぽいのでちょっとだけ炒めてみる。
キャベツと豚とその他の具をいっぺんに入れてみる。
かなり豪華な出来あがりである。これだけ入っていれば文句無しであるが、スープ大盛り用のどんぶりに入れなければならない。定番にするのであるから、普通皿に収まらなければならない。
それぞれの具を豚と供に食べてみる。
そらまめ:悪くは無いがいまいちピンと来ない。
さやえんどう:色的には良いが、ぱっとしない。
ヤングコーン:おもしろいが、豚との相性がいまひとつ。
れんこん:歯ざわりが良好、豚とキャベツの口休めにはちょうど良い感じである。
今回は、れんこんで行ってみようと思う。あとは、お客さんの反応を見てから決めて行こう。
6月6日
最初のプロジェクトDは、豚ショウガカレー。
豚の角煮とキャベツ、イモとニンジン、れんこんをカレーで煮こんで仕上げに紅ショウガを散らす。
お客さんの反応は、かなり好感触。ただし、混んでいる間のお客さんからの反応はわからなかったのが残念。
豚カレーの割には、ショウガが効いている性か、くどくは無いとか。緑ものが少ない。あとは、悪くは無いけど・・・という意見もあり。れんこんが、大好評で豚との相性が良いという評価を受ける。まだ、改善の余地は有りそうである。
定番メニューの、第一候補としては合格というところか?
問題はこの先である、豚ショウガを越えるメニューは一週間で開発出来るのか?
6月7日
プロジェクトD第2段は、キーマカレーである。
知っている人は知っている通り、村上カレー店の挽肉は鳥の挽肉である。ナット挽肉ベジタブルもこの挽肉が無ければ生まれなかったのである。ということで、とりあえず豚を挽いてみる。
豚肉は、豚ショウガで使った豚肉である。挽肉に使うには贅沢な肉である。しかし、手持ちの豚肉はこれしかないので、とりあえずこの豚を使ってみる。
まずは、鳥の挽肉と同じように調理してみる。
グリーンピースと余っていたソラマメを入れて、豚キーマを作ってみる。
一口食べると、豚臭い。
当たり前である、豚肉を挽いたのであるから、豚臭くて当然である。しかし、かなり豚臭い、安いシュウマイの中身だけを食べているような、妙な豚臭さが口の中に残る。鳥とはかなり違う。豚のくどさが残りちょっと問題がある。豚のあくの強さは、ラム肉並かもしれない。
豚キーマ、ちょっと手ごわいかな?
6月8日
豚挽肉に、ヨーグルトを加えてみる。
豚臭さが、かなり押さえられて良好である。鳥挽肉のキーマカレーと同じようにナスを炒めてカルダモンを加えてみる。美味しいではないか。これなら行けそうである。
しかし、現在 鳥の挽肉をヒーヒー言いながら作っている上に、更に豚の挽肉か?
そこで、スタッフの大ちゃんから一言。「豚挽いた後は、油すごいっすよー!!。」鳥の挽肉と違い豚の油はきついのである。ミートチョッパーの洗浄が大変である。
これは、困った。デストロイヤーの仕込みが、大変である。今日は鳥挽肉、明日は豚挽肉。それなら未だ良いが、朝は鳥挽肉、午後は豚挽肉などとなった日には、もう地獄である。
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しかし、やってみる価値はあると思う。
とりあえず、この路線で進めてみて、評価を聞いてから判断するべきであろう。
6月10日
豚キーマをやる前に、実は食べておかなければならないカレーが有ったのである。
それは、納豆豚挽肉カレーである。
その店は、札幌ファクトリーの近くに有る。某雑誌社の人から、新しいカレー屋情報として教えてもらったTである。
先週、Tでチキンベジタブルを食ったのであるが、メニューを見てビックリ、納豆カレーが2種類あるのである。納豆豚挽肉ベジタブルと納豆鳥挽肉ベジタブルである。
なんと、納豆カレーの挽肉が選べるのである。いかに納豆カレーが一般化したとはいえ、挽肉が選べるとは・・・・。これを食わずして、豚キーマはあり得ないのである。
何故なら、豚キーマに納豆をトッピングすれば、ナット・豚挽肉ベジタブルになってしまうからである。
Tに入り、納豆豚挽肉ベジタブルを注文する。
出てきたカレーは、ナット・挽肉ベジタブルの豚挽肉版であった。納豆好きには、タマラナイ一品である。なかなか美味しいではないか?と、店員さんの顔を見ると、プルプルの常連さんだったお客さんではないか。さすが、見事に納豆カレーを再現している。納豆カレーファンには、このTは必食である。
ただし、スパイス感が少々足りないような気がしたのである。そうか、豚キーマカレーは、よりスパイシーな路線で行く事にしよう。そうすれば、納豆をトッピングしてもスパイス感が十分な、新しい納豆カレーが出来あがるのである。
あー、又 納豆カレーになってしまうのか?????
シクシクシク。
6月11日
豚キーマの試作品をみんなに食べてもらう。プルプルにはテイクアウト用の容器に詰めて送り出す。わし自身も、もう一度試食してみる。
美味しいのでは有るが、全体的に重たい。それが、ほぼ全員の意見であった。確かに、鳥挽肉のような軽やかさは無く、ずっしりと重たい味である。いかにも、4本足と言う重さである。まー、それがいいという人もいるかもしれないが、ここはもう少し軽くしたいところである。
ケンは、仕上げにヨーグルトを散らしたらと言う。豆豚の時の手法である。レモン汁も効果があるらしい。これは、もう少し試してみる余地がありそうである。
ちなみに、まだ豚キーマに納豆をトッピングするまでは、辿りついていない。残すは、後一日。明日には決めなければならない。納豆トッピングまでは、辿りつけないかもしれない・・・・。
6月13日
いよいよ豚キーマの出番である。
豚の重たさの改善の為に、ヨーグルトやレモンを使用したがどうもしっくり来なかった。ちなみにキンゾーは、レモン汁をたっぷりと入れて、茄子やら色々入れた上でこれなら十分軽いと言いながら、豚キーマの凄いカレーを食っていた。
茄子の変わりに、トマトを入れることで、重さを減らし酸味で軽さを強調してみた。納豆のトッピングもなかなか行ける。
お客さんの反応も上々である。原価も安くつく。これなら行けるかもしれない。
しかし、更に来週へとプロジェクトDは、続くのである。
6月14日
さて、次のプロジェクトDであるが、またしても豚の挽肉を使ってみようと思う。なぜなら、安いからである。ここ最近、レッグの値段が高騰してきて、原価がかなりアップしてきている。何としても原価を押さえなければならない。
気づいている人がいるかもしれないが、次はコフタである。何の事は無い、ミートボールである。
老舗のAのようなコフタカレーが出来たら良いと思うのである。
豚挽肉に、スパイスを混ぜ込み、ヨーグルトで煮てみる。
大きくすると、食べ応えも有り、見た目も良いが、火の通りが悪くなる。大小2種類のコフタを作り煮てみた。
カレーに入れると大きい方は、かなりごつい感じである。
食べてみる。スパイス感があってなかなか良いぞ・・・。しかし、でかい方は中心部が未だ生だった。シクシクシク。
とりだして、フライパンに乗せ中まで火を通し改めてカレーに入れる。
味は良いが、やはり重たい感じがする。
明日又試してみよう。
6月15日
昨日の失敗を踏まえて、小さ目のミートボールにする。何のことはない。豚つくねである。
スパイス感を控えめにして、今度はヨーグルトとトマトピューレを使って煮てみる。
少し多めに使って、他の人にも味を見てもらう。
トマトピューレを使った分だけ、重たさが無くなり良い感じに仕上がった。
もう少しスパイス感があったほうが良い感じである。
キンゾーに聞いてみると、良い感じだけど、豚が食べれない人にはちょっと辛いかもしれないとのこと。そう、キンゾーは、豚は食えないが挽肉なら食べられると言う人なのである。
明日は、もう少しスパイス感を増して、キンゾーでも食べやすいカレーにしてみよう。
しかし、昨日のお客さんは豚キーマの納豆カレーを食べたいと言っていたなー。
問題である。・・・・・・・・・・。どうしようか?
6月16日
今日は、仕込みに追われていたため試作が出来なかった。
しかし、店のスタッフに豚つくねとナット豚挽肉カレーのどっちが食べたいと聞いたところ、どうやらナット豚挽肉カレーの方が人気があるらしい。そりゃー村上カレー店であるからしようが無いが・・・。どうするか、豚キーマの次は、やはりナットカレーで行くべきなのか?
悩むところである。
6月18日
豚つくねの試作がほぼ完了。他のスタッフに食べてもらったところ、好評である。
しかし、掲示板の書き込みにもある通り、世間ではナット豚挽肉ベジタブルを望む声が大きい。
ここは、やはり納豆で行くしかない。
豚つくねは、来週へ持ち越しだ。
6月20日
いよいよナット豚挽肉ベジタブルの出番である。
お客さんの反応は、そこそこであるが、やはりナット挽肉ベジタブルに人気が集まる。
ナット豚挽肉ベジタブルを食べた人の反応は、悪くは無いのであるが、やはり2番煎じに過ぎないと言うことなのか?
作るほうも、いまひとつ気合が入らない。
結果的には、先週の豚キーマを超える事が出来なかった。
スタッフの中でも、鳥挽肉のほうが納豆に合うと言った声が上がっている。確かにそうかもしれない。
6月22日
豚つくねの開発を再開する。
今週は、デストロイヤーにしかない武器を使ってみることにする。
それは、グリルである。
デストロイヤーの厨房には、実はグリルがある。
これは、元もとの備え付けのガス台に付属していたものであるが、メニューの作り方がプルプルベースになっているため、今まで使ったことが無い。
カレー屋なら、すぐにタンドリーチキンを作ってみたくなるところであるが、そんな時間的余裕が無いので、今まで稼動したことが無かった。
先週試作した豚つくねをプルプルスタッフに食べさせた所、スパイスがきつすぎると評判がよろしくなかった。
そこで、今日はスパイスひかえめで、豚つくねをヨーグルトに浸けこんで焼いてみることにする。
グリルに火を点し、内部を高温にした状態で豚つくねを入れ10分。
こんがりと焼けておいしそうである。そのまま食べるとなかなか美味しい。
カレーに入れて食べてみる。美味しくはあるが、今一つパンチ力が足りない。
スパイスを控えめにしすぎたか?
6月23日
北区のKのH氏が食べに来てくれたので、昨日の豚つくねをおまけで入れてみた。
H氏も、ミートボールが好きなようで、ミートボールの中にチーズを入れるとなかなか良いよと、アドバイスを受ける。チーズを入れるのも有りだよなーと思いながら、確かに手間はかかるぞと思ってしまった。どうせならもっとデストロイヤー的なものを入れてみたいが、もっとデストロイヤー的なものとは何だろう?
試作を再開、前日の失敗を踏まえて、スパイスの量をちょっとふやしてみる。
更に、浸け込み用のヨーグルトに、ニンニク・ショウガ・レモン汁を混ぜ込んで見る。
再度、グリルで焼いてみる。
なかなか美味しい。悪くは無いぞ。キンゾーがこっそり肉汁をすすって、何か入れましたと聞いてきた?
わし「レモン汁入れたよ。」
キンゾー「この肉汁おいしいわ。」
カレーに入れてみる、なかなか良いかもしれない。
しかし、やはりもうひとつ何かが欲しい気がする。
6月24日
今日は、デストロイヤーが休みなので、試作は無し。
北区のネパール料理屋Rに行く。
日替わりカレーとカバブを注文する。この店は、ネパール人(と思われる)のやっている安くカレーが食べられる良い店である。カレー(ナンつき)¥690でカバブ¥160を頼んでも、合計で¥850である。激安である。ちなみにタンドリーチキンは¥250である。あー北区に住みたい。
問題は、カバブである。とりのつくねであるが、しし唐のようなものが入っている。
そうだ、ねぎだ。豚つくねにはネギでしょう。
あしたは、ネギで再挑戦。
6月25日
新たに、豚つくねにねぎを入れて再挑戦。
しかし、厨房の中は、土スペやら休み明けの仕込やら何やらでごった返している。
わしも、鳥胸肉の仕込みをしながら、豚つくねの試作。グリルに火を入れ中を温めたところで、ねぎ入り豚つくね(ネギ豚ボール?)を投入。
暫くして、グリルの内部を確認、良い具合に焼けている。もう暫くだ、と言うところで鳥胸肉が仕上がる。はっと、時計を見ると既に時間が過ぎていた。慌ててグリルを開けて見ると、やはり焦げていた。
急いで、グリルから豚つくねを取り出す。焦げてはいるが、食べられない感じではない。
そのまま食べると、ビールのつまみにちょうど良さそうである。
カレーに入れてみる、昨日までの豚つくねと違い、ネギのおかげで味の平坦さが、無くなっている。成功である。
後は、この豚つくねと野菜の組み合わせの問題だけである。
今週も何とかなったぞ。
6月28日
昨日の豚つくねカレーも、結構好評だったらしい。
わしは、休みで店にはいなかったんだけど、手応えは結構あったと聞いている。
さて、来週は何にしようか?
とりあえず、手持ちのネタが無くなってしまった。
それに、そろそろ定番に向けての日曜スペシャルを固定して行かないと、いつまでも試作を続けて行くわけにも行かないし・・・。悩ましいところである。
しかし、豚つくねに合わせた「そらまめ」があまりまくっている。困った。
6月29日
豚つくねは好評であったが、それ以外にものも更に試してみる必要がある。
とりあえずは、冷凍のイカを買って来て見た。
カレーに入れてみる。あまり美味しくない。いやもっと言うと、不味い。
イカ好きの大ちゃんも、食ってみたので聞いてみると「いやー、美味しくないです。」わし「どっちかって言うと不味いよねこのイカ!」大ちゃん「言っちゃって良いんですか、味しないっすよー。」その通りである。
このイカはダメ?
6月30日
気を取りなおして、冷凍のイカを油で炒めてから食ってみる。やはり不味い。このイカはダメ!!!!!!
7月2日
別の冷凍のイカを買ってくる。
今度は、あまり加工されていないロールイカを買ってみる。短冊に切り、筋を入れてちょちょっと炒めてからカレーに入れてみる。イカの味がする。これこそイカである。
このイカとは別に、鮭をヨーグルトに浸けこんでグリルで焼いてみる。
焼けた鮭を、キンゾーとつまんでみる。キンゾー「浸けこんだ割には、どうかなって感じですね。カレーに入れたら判らなくなってしまいますね。」わし「そうだね。カレーに入れたら一緒になっちゃうねー。」
試しに、カレーに入れてみる。出汁は出るがヨーグルトの風味なんか判らなくなってしまった。
鮭は、そのまま焼いたほうが良さそうである。
7月4日
いよいよシーフードカレーの出番である。
朝、シャケにフェンネルと塩を振り、グリルで焼き、ほぐして鮭フレークを作る。
イカは、大き目の短冊に切り、切れ目を入れておく。
臭み消し用のココナツミルクも用意しておく。
シーフードカレーのオーダーが入る。
イカとエビを炒めて、ホタテと鮭フレーク、カニかまぼこ(カニではない、ちょっとしたギャグ)、イモ、ニンジン、ピーマンとココナツミルクを入れて、カレーを作る。
出来あがり間際に、ふのりをちらし、仕上げる。
お客さんの反応は?鮭フレークの評判がなかなか良い。
イカがちょっと堅いとの従兄弟からの意見もある。イカはもう少し小さい方が良いかもしれない。
全体として、好評でお客さんの食いつきもなかなかである。判りやすいからだと思われる。
豚メニューとは別に、シーフードはもう少し洗練させて定番メニューに追加したいところである。
7月5日
シーフードカレーが、ほぼ出来あがったところで、再度豚カレーに挑戦。
今度は、豚バラを使ってみようと思う。肉を見てみる。やはり脂身が多い。
鳥胸肉と同じように調理してみるが、油がかなり多くくどい。難しい所である。
しかし、豚バラは安いのである。何とかできないものか?
7月6日
豚バラ肉を、酢醤油で煮てみる。
なかなか良い具合である。脂身のくどさも気にならない。(気にする人には気になるところではあるが。)
カレーに入れて食べてみる。
豚を酢で煮たのが気にならない。ほんのり酢の香りが漂ってくるくらいである。逆に物足りなささえ感じてしまう。
試しに酢を加えてみる。ぐんと味が引き締まる。これは、なかなか良いぞ。
酢豚の線で、もう少し試してみよう。
7月8日
テレビ欄で、昆豚カレーの文字を見る。かなり気になる。
豚と昆布を酢醤油で煮てみたらどうだろう。
昆布に酢の香りが移って、良いかもしれない。
明日試してみよう。
7月9日
豚と昆布を酢醤油で煮こんでみる。豚にも昆布にも酢の香りがうっすらとついてなかなかの出来あがりである。
カレーに入れてみる。味的にも昆布の旨みと染み込んだ酢の感じが微妙に溶け合って、なかなか良い感じに仕上がっている。ただ、昆布がとろとろになってしまうのが難点と言えば難点である。
また、昆布がとろけてしまうため、見た目が今一つではあるが、その辺は組み合わせの具材で何とかしよう。
今度は、ぶたコンブベジタブルだ。
7月11日
朝 ぶたとコンブを酢醤油で煮こんで、仕込み完了。
安売りで出ていたパプリカを切って、色付けの野菜にする。
しかし、ぶたコンブの強敵が現れる。キンゾーの日曜スペシャル「ほぐしチャーシュー」である。
今日 わしは、休みなので直接感想を聞くことが出来ない。どうなることやら。
7月12日
やられた!!ぶたコンブは6食しか出ていない。「ほぐしチャーシュー」にやられてしまった。
お客さんの意見も、ちょっと変わっていておもしろいねと言う程度だったらしい。残念。
昆布の酸味が新鮮で、自信が有ったのではあるが・・・。インパクト不足?。
来週は、何とかせねば。
7月13日
キンゾーから、ぶたコンブのネーミングに問題があるという意見がでる。
確かに、得体の知れない雰囲気が漂っている。
もう少しぶたコンブを進化させて、別のネーミングで試してみよう。
試しに、こうや豆腐をぶたと煮こんで食べてみる。今一つ・・・。腹は膨れる・・・。
7月14日
ぶたコンブの昆布を千切りにして量を減らして、コンブの存在感を減少させてみる。
千切りにした分、カレーとのなじみは良くなった。存在感は薄くなったが、味的には問題なさそうである。
新しい具材として、竹の子を入れてみる。タイカレーには定番であるが、スープカレーでも最近は、普通に使われてきている。ぶたとの相性も良い感じだ。
この路線で、進めていってみよう。
ちなみに、今日は弟の誕生日である。メールするのは面倒なので、ここにこっそり書いておこう。
ハッピーバースデー和明!!!
読んでないか?
7月15日
今日は休みなので、他のカレー屋さんへ行ってみる。
北区のLである。豚の角煮に関して、評判の店である。
出てきたとろとろ角煮は、豚バラにしては確かに脂身も少なくとろとろに煮こまれた肉である。数量限定なのも納得が出来る。
食べやすいし、くどくも無い。おまけに相変わらずカボチャがうまい。ここのカボチャは、薄切りのカボチャをからっと上げているのであるが、1枚しか入っていない。このカボチャなら、もう2、3枚欲しいところである。わしだけか?
何よりもスープが良い。さすがである。
デストロイヤー・プルプルも安定してこの位のスープを作れないといけないな。
7月18日
ぶたコンブのリニューアル版は、「ぶた角煮カレー」である。
あえてわかりやすい名前にする。
内容的には、豚角煮4切れとコンブ少々、イモ、ニンジン、レンコン、竹の子、ピーマンである。
11時半の開店と同時に、数組のお客さんが入ってくる。
どのお客さんのぶた角煮がらみの注文である。やはり判りやすいのが受けたようである。
こんなに反応が良いのは、プロジェクトD、始まって以来である。
昼の営業で、豚角煮は売りきれてしまった。恐るべし「ぶた角煮」の名前。
やはり豚角煮の線で、もう少し詰めて行った方が良さそうである。
7月21日
豚角煮をもう少し詰めると言うことで、酢の変わりに梅干を使ってみることにする。
思い出すのは、琴似のRの「梅ささみ」である。サッパリ感が感動的ですらあった。
しかし、今回は全く逆で、豚のくどさを梅の風味で押さえようというのである。
梅干をほぐして味を見ていく、結構な量の梅干が必要である。
梅干とコンブで豚を煮て行く。
豚だけを食べても、なかなか良い感じである。
カレーに入れてみる。おー、これは良いぞ。酢のときのさっぱり感も良かったが、梅のコクみたいのがプラスされていて、味に深みが有る。後はコスト的なことも考えなければならない。
明日は、休みなので安い梅干でも探しに行くとするか?
7月23日
ふっと、梅干+酢で煮こんではどうかと思い立つ。そうすれば、コストの上昇も少しで押さえられるのではないか?やってみると梅干の風味が肉を優しく包みなかなかの出来映えである。
肉だけを食べてみると、梅干だけで煮こんだときとは、やはり味は落ちる気がするが、問題の無いレベルである。
カレーに入れて梅干だけで煮こんだ豚肉と、梅干+酢で煮こんだ豚を比べてみる。カレーと合わせるとほとんど判らないくらいである。
この方法で行こう。決定。
7月25日
豚角煮カレー(改良版)である。
食べに来たプルプルスタッフのケンもマー君も、大絶賛だったらしい。(らしいと言うのは、わしはバンドの練習で休んでいたからである。)
お客さんの食いつきも良好で、14:00頃には完売してしまったらしい。
もう豚角煮しかないでしょうという感じである。
7月29日
2ヶ月間に及んだプロジェクトD、結論は2つの新メニューである。
豚角煮カレーとシーフードカレーである。
豚角煮は、梅酢とコンブで豚を煮こんだ、デストロイヤーならではの豚メニューである。
シーフードは、普通のシーフードに鮭フレークを出汁に使った、これまたデストロイヤーならではの北海道的なシーフードカレーである。
8月からは、この2つのメニューが、定番メニューとしてデストロイヤーに登場する。
はたして、これらのカレーでデストロイヤーが人気店に成れるかどうかは、これからの我々の努力に掛かっている。
仕込みは、新メニューの出具合を見て調整して行くことにしよう。厳しい所では有るが・・・。
あとは、どうやって多くの人にアピールするかである。
これは実は秘密であるが、某ラジオ局の土曜の午後の有名な番組に、デストロイヤーが出ることになっている。
とにかく、もっと宣伝しないとイケナイのである。
それじゃ、また。