スープカレービジネス2005

文 村上義明

 2005年一体どのくらいのスープカレー屋がオープンしたであろうか?

 2004年は、ざっと30軒くらいだったのであるが、今年もそれと同じ位のカレー屋がオープンしているのではないだろうか?

 2005年にオープンしたカレー屋の特徴と言うのが、大体の場合経営母体がついているということではないだろうか?昨今のカレーブームに乗って、すすきの界隈や飲食チェーンの資本が、スープカレービジネスに参入を始めたのである。

 このことは、スープカレーを食べる側に立ってみれば、非常に嬉しいことでは有るのであるが、その半面、独創的なスープカレーが出てきにくくなってきているのは確かである。実際にそういう店に行ってみると、大体の場合、MSやR、P/Vの味を元に亜流に組み立てて供食しているところが多い。

 それが悪いとは言わないが、もっと自由に味や具材を組み立てて札幌スープカレーが盛り上がってきたことを考えると、もっと多様化して欲しいところである。

 今年は、過去を振り返るための資料をあまり残せなかったので、多分に漏れがあるかもしれないがこの一年でオープンした店を振りかえってみようと思う。

 2005年の早い時期にオープンしたのが、山の手のGである。知っている人は知っているのであるが、老舗のSの厨房を仕切っていたK氏の店である。わしとも仲が良いのであるが、定休日が木曜日であるため、未だ数度しか行ったことが無い。知人によるとSの頃よりもスパイス感が少ないと言う意見があるが、スープが太くなった分だけ、スパイス感が少なくなったのではないかと思う。この辺は好みの問題では・・・。

 次に白石のAの支店のR。今年の流行りとして、いわゆるスープカレービジネスに参入した店の支店がオープンすると言うことだろうか(Dの澄川店、Sのすすきの店など)。このRも焼肉屋さんがオープンさせたAの支店としてオープンした。かつてこの場所は、10年前のMに始まりKなどカレー屋が入れ替わり営業してきた場所である。その後にインドカレーとスープカレーのRがオープンしたのである。味的にはインドカレーと言うよりもMSなどを意識したオリジナルのスープカレーである。割りとワシ好みの味で、オープンしたての頃は良く行ったものである。

 異色のところでは、とんこつのスープを使用した元祖トンコツカレーHである。カレーを一口食べれば判るのであるが、カレーと言うよりも明らかにラーメンのそれに近いのである(まあ当たり前のことでは有るが)。一口食べて、「あー麺が欲しい。」と思ったのは、わし1人では無いと思う。ただし、近くにPがあることを考えると色々と難しい気がする。今後の展開に期待したいところである。紛れも無くスープカレーの新しい味のひとつであるから。

 白石のK。近くにK気分やA、Pなどスープカレー屋が結構有るのであるが、なかなかの味を出している店である。実はKが入る前もこのテナントはカレー屋だったのであるが、いつのまにか無くなっていた。結構なカレー激戦区であるが、それに負けないだけの味を作り出していると思う。確認は出来ていないがシーフードのカレーが割りと挑戦的なメニューで気になっているところである。気にはなっているのであるが、他のカレー屋めぐりで忙しくて再食できていないのが現実である。シクシク(ちょっと遠いし)。

 中央区のK、以前Rと言う吉田拓郎ファンのカレー屋が有った所に出来たのがKである。始めて食べた時にスープが非常に美味しかったので、印象に残っていた店である。と思ったら西18丁目の近くに引っ越してきたしまったのである、西18丁目近辺は今やスープカレー混戦状態である。

 引っ越してきたK、去年オープンして札幌駅高架下に2号店、ファクトリーにV3店をオープンしたH、焼鳥チェーンプロデュースのLT、老舗のS、もう少し南のK、円山では北区から進出してきたS氏プロデュースの円山Lと、村上カレー店系列のDに、老舗のM、ここで上げただけでも8軒もあるのである。もう北区並のカレー屋密集地帯である。しかもいわゆるスープカレービジネスの店が半分を占めるのである。いや、もっとと言うべきかもしれない。そうである。いま円山の住人はスープカレービジネスのターゲットとなっているのである。何よりも円山の住人は、金持ちである。食い物に対して「金に糸目はつけない。」様に、わしからは見えるのである。円山のイタリアン/フレンチの店の多さは他の地区と比べて、比較に成らないのである。当然、今イケイケのスープカレー業界が目を付けないわけが無い。(そう言えば、山の上に有ったCSも引っ越して来たっけ。)

 しかし、問題が無いわけではない。円山の住人がスープカレー如きに、多額のお金を落としてくれるかどうかである。イタリアンやフレンチの場合、素材やそのシェフの作り出すソースに対して多額のお金を払うのであるが、スープカレーの場合、まだそのレベルまでは行っていないのが実情である。せいぜいラーメン屋レベルである。誰かが言っていたが、スープカレーは2極化しつつある。一つは低価格庶民化でもうひとつが高価格高級化である。村上カレー店などは明らかに前者であるから、円山での生き残りは難しくなって行くのかもしれない。

 以前書いたが、大通りから西11丁目までの間に今年に入ってからたくさんのカレー屋がオープンした。道東のK、銭函のKプロデュースのK’s、飲み屋さん経営のM、すすきの資本のおしゃれなS、SMの下のC、東急ハンズの隣のD、ダイニングバー経営でカツ丼屋の隣のB、もう少し南に行って串揚げが魅力のS、大通りの戻ってSの支店のカフェV、もっと大通りよりの丸井の隣のSLなど、新しく出来た店のほとんどがスープカレービジネスに参入してきた企業の店である。どの店も内装が立派で、値段設定やメニューの作り方も納得のいくものである。当然そこには、スープカレー参入前のノウハウが見事なまでに生かされているのである。

 今まで、スープカレー屋といえば、内装もメニューも手作りで、店主の意気込みがびんびん伝わってくるものであったが、新しく出来たこれらの店は、全てを「そつ」無くこなしているのである。それが悪いとは言わないが、スープカレーの新店めぐりをしている身としては、ちょっとつまらないなというのが、本音である。

 南区に出来たK、以前薬局の隣のPという店であったが、新しくKという店に生まれ変わったのである。ワシが行くと既にバレバレで、カレーの味とか質問されてしまった。話を聞くとGのK氏の知り合いでした。始めは今一つの感がぬぐえなかったが、数ヶ月後に行ってみると食べやすくて判りやすい美味しいカレーになっていた。南区の方は是非とも一度食べてもらいたいものである。

 同じく南区の、藤野の入り口のF。スープ自体は非常に美味しく、イモがマッシュポテトでHに似ていたのと、ニンジンが堅めに茹でられていて印象的だった。「ニンジンが堅めですねと言ったら、わざと堅めに茹でているのですと怒られてしまいました。」ここも、もう一度行って見たい店のひとつである。

 西区のM、宮の沢からほど近い所にオープンしたM。ここもGのK氏の紹介で訪れたところである。味的には最近の流行りの味である。いわゆるMS、Rなど既存のスープカレー屋の良い所取りである。ただし、良い所取りの悪い所は、その店独自の味が出し難い所である。その店独自の味が決まっていれば、その店について来る御客さんが、必ず出てくるものであるが、そうゆうコアなお客さんが着き難いということであろうか。これだけスープカレー屋が増えれば、平均的な味から離れた部分を欲しがる客も出てくるはずである。

 清田区も最近スープカレー屋が増えてきた地区である。伏古のHSの支店、K気分の南側のF。以前はAの支店とSしかなかったことを考えると、倍に増えたのではないか。

 HSの支店では、新しいスープを食べたのであるが、昔からのスープと異なり最近流行りのインドネシア系のスープが出てきてちょっとビックリしたのを憶えている。Fは、P/VやRを意識したスープだったように思う。最近には珍しく、もう一度食べてみたいと思わせる味だった。但し、メニューのなかに野菜カレーが無かったように思われるので、肉が食べられない人にはお薦めが出来ない。

 大谷地のMプロデュースのM。大谷地駅直決のビルのテナントとして入っているのであるが、ルーカレーの店と認識しておいた方がよいだろう。ワシが行ったときスープカレーも有ったのであるが、「キーマ納豆」だったので、スープの味はサッパリわからなかった。残念。

 環状通り沿いの、豊平区役所近くのT。オープン初日に行ってみたのであるが、未だ不慣れなためか、料理の出てくるスピードや、お客様の捌き方が、だいぶ今一つであった。ただ、底上げ式になっている特注の皿に関しては、面白いと思う。Vの皿を参考にしたのかもしれないが・・・。

 手稲方面に目を移してみると、スープカレー屋ではないが、インドネパール料理のSが銭函の駅のまん前にオープンした。基本的にはインドカレーの店である。店内は海が見渡せて、なかなかのロケーションである。カレー自体は、ネパール人が作っているのでそれなりの味が楽しめる。(いやどちらかというと美味しいたぐいである。)海を見たい上にカレーを食べたいむきには、絶好のスポットである。

 スープカレーとワッフルの店C、手稲駅の南側のスーパーの地下駐車場に車を入れ、スーパーの2階へ向かうと、そこは、居酒屋などが入っている空間であるが、昼に行ったためシャッターが閉まっていて異様な雰囲気、その片隅にスープカレーとワッフルの店Cは、あった。扉を明けると、中は喫茶店のような保育園のようなちょっと変わった空間だった。店の人に「スープカレーありますか?」と確認した上で店に入る。暫くして出てきたカレーは、割りと標準的なスープカレー、一口食べてみると美味しいのである。店の雰囲気とあいまって、妙な美味しさで一杯に成った。味的には酸味の少ないRの味でマスタードが利いているのかシャープな辛さが際立った美味しいカレーであった。これで、店の外見や内装がもっとちゃんとしていれば・・・。等と思いその場を去ったのであった。

 札幌駅周辺では、東急の南側に出来たS。ビルの地下へ入っていくと小奇麗な店内が覗けた。しかし、あまりカレー屋らしくない。どこかが変だ。中に入ってハッと気がつく。椅子が無い。そう、スタンディングカレーバーなのである。ただし、駅のスタンド蕎麦屋とはかなり雰囲気が違う。何と言ったら良いのだろうか?これでいいのか?カレーは悪くないだけにこれからに期待したいところである。

 そして、既に閉店してしまった伏古のH、中央区の知事公館向かいのT、どちらも美味しいカレーを出していただけに、残念である。

 おっと、すっかり忘れていたが、白石のR大サーカス、ここはもうスープカレー屋の次のレベルを示唆しているに違い無い店である。R軍団の総長I氏が設計から関わったR大サーカス。以前一緒に飲んだときに、これからのスープカレー屋は、サービスの質も料理の質も「ファミレスレベル」にして行かなければその未来は無いというようなことをいっていたのであるが、まさにそれを実践して見せたのが、R大サーカスである。

 明らかに、家族連れを意識した店内、メニューの作り方・・・、難を言えば、駐車場が倍あるともっといいのかもしれない。I氏は、明らかにスープカレー屋の次のレベルを示して見せたといえる。

 ただし、スープカレービジネスに参入してきた企業がどこまでスープカレー業界を盛り上げてくれるかは、不安が残るところである。かつてのエスニックブームやもつ鍋ブームみたいにならなければ良いと、最近は真剣に考えてしまうことが有る。

 ざっと、記憶に残っている店だけで29軒新しい店が出来ているのである。おっと、まだ食べていないK経営のPHをカウントしていないので、30軒かな?

 少なくても、月2件ペースで新しいスープカレー屋が出来ている。しかも、その約半数は、いわゆるスープカレービジネスへの新規参入企業である。恐ろしい時代になったものですが、残りの半分は、やっぱりスープカレー好きの店主達が自分の力で店を立ち上げてきていると考えると、これはこれでまた楽しいと思います。

 今年も、カレーを食いまくろうと、年の初めに新たに誓うのであった。

 ちなみに今年のカレー初めは、BBでした。O氏ご馳走様でした。

 それじゃ、また。

2006.1.2