スープカレー is DEAD.

文 村上 義明

 相も変わらず、スープカレー屋がオープンしている。週一回2軒ほど回るのであるが、食べて安心すると又新店がオープンするという状態が、ここ2年ほど続いていると思う。確かにスープカレー屋は初期投資が少なく、安価に開店する事が出来るのであるが、それで大丈夫なのだろうか?ふと、不安になってしまう。

 最近の傾向としては、美味しくて売れている店の味を基本にして、2店足して2で割ったり、3店足して2で割ったり、4店足して5で割ったりと、どれも似たり寄ったりの感が、否めない。スープカレーマニアとしては、いささか物足りない状況が続いている。

 東屯田通りの東急ストアの向かいのZ。カレー屋ではないのであるが、カレー風の料理が食べられる。食欲をそそるメニューが並ぶ。最初は店の人のお勧めを頼むのが良さそうである。ワシが行ったのは、未だ冬だったので、広い店内に対して、ストーブが貧弱で寒い思いをしながら食したのを憶えている。その後、ある有名カレー店の女性に話をしたところ、「あそこは美味しいけど、寒いから冬はダメよー。」と言われた。やはり美味しい店は侮れない、AのMさんが常連さんだったとは。

 最近、同じ店でスープの種類を幾つか用意する店も増えている。Dの黒スープ、赤スープ、L支店の各種スープトッピング、Kのオリエンタルスープなどなど。同じ店でさまざまな味が味わえるのは、毎日食べる分には嬉しいが、スープカレーを食べ歩く分には少々きつい感がある。しかし、ラーメン屋で言えば、味噌、塩、醤油の3味があるのが当たり前なので、これもありかなと・・・・。但し、スープカレー屋に関しては、味の種類の表現がそれぞれ違うので、食べる方も気をつけないと、好みのカレーに出会えなかったりするので注意が必要である。

 スープカレーではないが、デリバリー専門のインドカレー屋BB(東区)も注目である。カレー屋でデリバリーといえば、インドカレーのMが有名であるが、M以外で専門というのは、始めてであると思われる。味はインドカレーのMに味(スパイスやスープ)を足したような味で、なかなか美味しい。これからのカレー界の新しい形態を探る上で、重要な店だと思う。

 スープカレーを鍋で提供する店も増えてきた。すすきのと西18丁目に店舗を出すBB。北24条のTC。特にTCは、鍋の熱さと表面の油分の共同作業で冷め難くなっているので、最後の最後まで熱々で食べられる。味的にも、近くにVがあるためか、負けるとも劣らない味を提供している。そういえばTCも、スープトッピングが有ったと思うが、未だ試してはいない。TCは、牛スジのカレーもあって、スジ好きにはタマラナイ。スジといえば、元祖TカレーのHのもつカレーもなかなかだったと思うが、近くにPもあるし、何かもう一押しが足りないような気がしている。がんばれHちゃん。

 野菜や食材にこだわった店も増えてきている。実は、ワシはこの「こだわった」といういい方が嫌いなのであるが、あえてこの「こだわった」を使います(みなさんこだわっているらしいので・・・)。元のKSの後にオープンしたV、確かオーガニック野菜にこだわった店だったように思う。麻布のGSの支店GSC(旭町)や、競馬場の東側のC等。野菜や食材に対して、こだわる=制限を加えるというのは、地産地消の点から見ても、有意義であるのであるが、その分 原価を引き上げるという、危険性をはらんでいる。うちの店も「どこどこ産の地鶏を使って何々農場の野菜を使ってカレーを作りました」とやりたいところでは有るが、1杯750円のカレーではそうはいかないのが現状である。

 スープカレーの相場は、どうも最近一杯¥1000円になっている様である。どこの店に行っても具が、これでもかと盛りだくさんで、これで¥1000円なら、納得といえるのであるが・・・。札幌のラーメンは、大抵¥750くらいであるが、東京などでは¥550くらいだったような気がする。これは、札幌のラーメンは麺、スープ、具材の量が多いからで、決して札幌のラーメンが高いわけではない。というか、東京の¥550のラーメンに、¥750の札幌ラーメンのようなものを期待すると、気が抜けるので注意が必要である。同じ事が、スープカレーにも言えるのである。北区から宮の沢に移転したVは、低価格で食べられる良心的なスープカレー屋さんである。店内もきれいに成ったし、これからもっと頑張って欲しい。店側としては一杯¥1000円のスープカレーは、非常に楽なのである。30%を原価率とすると、原価に300円もかけることが出来るのである。以前あるカレー屋さんが「原価を考えないでカレー作りたいよねー。」とこぼしていたが、まさに原価はカレー屋を運営して行く上で、避けては通れない線なのである。これを¥750円で30%とすると225円である。75円あったらカレーの見栄えが違ってきます。何が言いたいのか?カレー特集のときに、絶対に他の店よりもおいしそうに見えるのである。

 そういえば、HWのスープカレーランキングでPが2位になってしまった。有り難いやら、あり得ないやら・・・。選んでくれた審査員やその他の人々に感謝。ありがとうございました。ではあるが、Pの2位はおかしくないか?評価項目のスープのおいしさ、具のボリューム、見た目の美しさとか、明らかに他の店に申し訳ないくらい高すぎます。他の店のみなさん、ごめんなさい。それにしても、V・PのS氏やIのW氏は選考を拒否したのかな?常連の店がランキングされていないと気になってしまいます。

 カレー屋の立地と言うのも非常に問題があるところである。近くに人が集まるところがあればそれなりの集客が期待出来るのであるが、そんなところは家賃が高いのである。かといって、郊外に場所を求めるとなると、駐車場が必要である。各種飲食店にとっては、6月の道交法の改正は少なからず影響を受けているようである。白石のPPは、ちょっと離れたところに駐車場を確保している。山の手のCは店舗前に数台の駐車場、北5条西野線のMは店舗前に数台と店舗裏にも駐車場があるらしい。清田のCSは、店の下が駐車場。北23条のCは、駐車場が無いが、近くに有料駐車場が有る。東区のOは、店の隣のアパートの前が全部駐車場である。スープカレーを食べに行く場合、まー大抵の場合、2〜3人が良いところであろう。1組2名とすると、席数20のカレー屋では、店を満席にするために10台の駐車場が必要になってくる。ほぼあり得ない。資金力の有るカレー屋ならそれぐらいの駐車場を確保出来るであろうが、個人経営なら無理であろう。辛いところである。

 街中にもカレー屋がすこぶる増えた、なにより大きいのは、Sの中央進出である。その他に、タイカレーのC、Tカレー本舗、Tのすすきの移転。AAの支店AAFDのオープン等。街中は駐車場が無くても人がたくさん居るので、集客率は抜群のはずである。しかし、家賃が高いのである。プルプルの厨房であるデストロイヤーを検討したとき、中心部も検討したが、家賃が高くて手が出なかったのである。家賃だけでなく敷金や保証金なども高かったような気がする。中心街のカレー屋さんたち、頑張ってください。

 さて、結構な数のカレー屋を食べ歩いているが、ここ半年でこれは!!!、という新しいカレー屋に出会っていないのである。スープカレーマニアとしては、非常に淋しいところである。マニアの食べ物だったスープカレーが、雑誌などのマスメディアを通して、確実にファンを増やして行って、ついにはスープカレーブームにまで上り詰めたのであるが、その先が問題だった。

 スープカレーに定番みたいなモノが出来あがり。大手の資金力の有る企業が、売れる店と味を作り、それを更にたくさんの人が食べ・・・。その繰り返しでスープカレーはメジャーな食べ物になってしまったのである。メジャーが悪いということではない。メジャーに成る事で自由度が狭まり、新しい冒険が見られなくなってきたのが悲しいところである。

 あるネパール系のカレー屋さんで、スープカレーを注文してみた。暫くして出てきたのは、平均的な札幌スープカレー?なのである。何が平均的というかと言うと、一口食べてハウスのスープカレーのT????の味がするのである。ここはネパール人のお店のはずであるが・・・。ひょっとして、ネパールの人がスープカレーのTを食べて、スープカレーとはこういうものだと、勘違いして(いや勘違いではないのだけれど・・・)その味を真似したのかもしれない。スープカレーの食べ歩きの楽しみと言うのは、いつどこでどんなカレーに出会える事があるかもしれないという、期待に満ちた旅なのである。しかし・・・・・。ネパールの人がスープカレーをどんな風に解釈して、提供してくれるのかと言う期待があったのだが・・・。恐るべしハウス。そのうちインドにスープカレー屋のチェーン店が出きるかもしれない。スープカレービジネス万歳。

 スープカレーが、こんな風になってしまったのは、スープカレー屋のせいでも有るし、スープカレーマニアのせいでもあるし、マスコミのせいでも有るし、スープカレー自体のせいでもある。

 その昔、ロックは死んだと言われたことがあるが、ロックと言う音楽は今でも存在するし、爺が未だに元気にロックしているバンドもある。しかし、ロックは死んだと言われた時点で既にロックは死んでいたのだと思う。ロックはその昔、最先端の音楽であったが、その範囲を広げて行くうちに肥大化し先端性をどんどんなくして行ったのである。もちろん、あくまで最先端を担う音楽家もいるのであるが、一般的にはその先端性を失ってしまったのである。

 スープカレーも、マニアの食べ物から、若者の食べ物になり、スープカレーブームで世の中に知れ渡った。その間に、独自のスープカレー路線を歩むものが居たり、インスタント物が出たり、先端性を追い求める店が出来たり、チェーン店でスープカレーが提供されたりと、色々である。つまり、既にスープカレーは先端性を失っており、マニアからは愛想をつかされているのではないだろうか?

 スープカレーは、どこに行こうとしているのだろう。

 スープカレー is DEAD?

 スープカレー is DEAD.

2006.7.27