別府温泉狂想曲 喜劇 地獄めぐり 〜生きてるだけで丸もうけ〜
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先月に引き続いての松竹座です。
昨年、好評を博した「浅草パラダイス」の出演者でおくる人情喜劇。
舞台は別府温泉。
地獄巡りを考案したという、商人 油屋
熊八という人物をモデルに
作られた劇のようです。
この日は、歌舞伎仲間のエミカ嬢と一緒でした。
彼女とは人に言えない公演も(笑)、何度となく観にいった仲ですが、
一緒に行くのは実に2年ぶり。『乾いて候』以来です。
彼女が一緒だと、開演前に余裕があった試しがない。
案の定この日も、立ち寄ったマクドナルドが混雑してて時間がかかり、
それでも完食するという食い意地の張りようはお互いさまで(爆)、
またもや、超バタバタで会場入り。
第一部
座席に駆け込むや否や劇がスタート。
ゆっくりと電気が落ちていく。やがて、──
「身投げだ〜!」
「飛び込んだぞ〜!」
暗転の中、客席からいきなり叫び声がして、役者たちが現われる。
懐中電灯で辺りを照らしながら、男たちがステージに上がってきた。
ヤクザの若い衆と思しき数人。夜の岸壁で人影を探している様子。
板の上と客席の垣根が取れてこういう演出は大好き。
全員ステージに上がったところで、一人が最前列の客に懐中電灯を当て、
「いたぞっーーーー!!」
すかさず、全員がその客を一斉に照らす!(爆笑)
一瞬の間。
「あ、ちがった、トドだ……(激爆)」
その客はサッと打ち捨てられて、劇は進行していく。
やがて、──
中央に置かれた巨大な岩に、せりが仕込まれていて、
ふんどし一丁の男が現われる。
ぽちゃぽちゃっとしたその体型(笑)。
紛れもなく勘九郎さんのご登場でございます〜。
波で岩場に打ち上げられたという設定らしい。
口からぴゅっと水を噴出して、息も絶え絶え。
しかし、なんて可愛らしい体型だろう(爆)。
続けて、頭にわかめをくっつけた、ボロボロの柄本
明が岩上に姿を見せる。
互いの無事を喜ぶ二人。
勘九郎さん扮するふんどしの男は、
「生きてるだけで、丸もうけ!」
と、この劇のテーマとも言えるセリフを残して、再び海原に飛び込む。
スモーク流れる床には、まな板大の板が仕込まれていて、
袖よりスタッフがそれを引っ張る。
ふんどし男はせわしく手足を動かし、泳ぐ格好をしながら
上手へとはけていきました〜。
柄本さん扮するわかめ男、それに続こうとするも、
反対に押し流され、こっちは下手へ。
しかし、 冒頭から人格を捨ててます(笑)。
スモークに浮かぶ勘九郎さんのお尻が……もう、最高にプリティ!(爆)
こっちは生身なもんで、it-manどころの話じゃございません。(爆爆)
it-man :
石井竜也4枚目のアルバム『浪漫』の限定盤についてくるオブジェ。
かわいく、ちょっぴりエッツなお尻で話題沸騰した。
二人が流れ着いた別府には、町の有士、沖原
権造の異母姉妹たちが、
意地と見栄の張り合いを続けていた。
この沖原権造なる人物、相当の女好きだったらしい。
朝酒と酢だこが大好きで、前妻と後妻のほかに妾との間にも娘がいて、
この三姉妹が実に仲が悪い。
前妻の娘、松子が波野
久里子。後妻の娘、竹子が渡辺 えり子。
そして、妾の娘が、梅子が藤山
直美、という配役。
なかなかに濃い〜(笑)。
三人とも旅館を経営しているが、とりわけ松子(波野 久里子)と竹子(渡辺 えり子)
は表通りに店を構え、激しく競い合っていた。
格式ある旅館を経営する松子に対し、地元ヤクザの石持組を束ねている竹子は、
カンカン娘といった風の踊り子を擁して派手な商いをしている。
一方、妾の子梅子(藤山 直美)は、二人の姉から冷たくあしらわれて、
ひっそりと小さい旅館を経営している。
彼女は、「別府に来る客はすべて自分のお客様。」という思いで、
地味ながら心のこもったもてなしをしている。
港に船が着き、一人の娘、珠江が里帰りしてくる。
演じるのは菊五郎と藤 純子の娘、寺島 しのぶ。
すらりとした大変美しい人でした。
彼女が4人目の娘であることが、劇の後半で発覚するのですが、
ここでは、松子(波野 久里子)の店で大番頭として切り盛り
している、善吉(笹野 高史)の娘ということになっている。
そんなところへ、あの二人組みがやってくる。
株で大損して流れ者になった、黒酢屋 彦八(勘九郎)と、
文士くずれの 蟹沢 六平(柄本 明)だった。
ヤクザ、遊女、芸者、代議士、入り乱れてのとんだ狂想曲の幕開けでした〜。
温泉を盛りたてようとする、温泉街の人々と、
その利権を独り占めし甘い汁を吸おうとする代議士、ヤクザ。
そして、4姉妹の人間模様を絡めて、勘九郎、柄本の活躍を描いてゆく。
アドリブ、内輪受けの嵐で、客いじりもふんだんにあり、終始大変楽しい舞台でした。
また、大物役者といえども、無傷でいることを許さない(笑)、徹底したコメディーで、
特に波野
久里子さんをあそこまでいじるとは〜!
と大変に驚きました。
さて、劇の中で、六平(柄本明)は、3つの湯が一丸となって
別府を発展させていくべきだと、素晴らしい主張をする。
この時の彼の言い方が最高。
幼稚園生がものを言うような言い方のため、出演者からさかんにチャチャが
入れられる。
「だから、誰が〜?」、「どうやって?」
藤山
直美のチャチャが入るたびに、最初からセリフを言い直す。
最初は体全体を使って説明していた柄本さんが、次第に小さくなっていって、
最後は床に這いつくばって、指で図を書くようにしての説明になっていく。
このあたり、勘九郎さんは演技を忘れ、素で受けておりました。
恐らく、客席から拍手をもらうまで、何度もやらせるという段取りかと
思われる。
柄本さんが床に這いつくばり、みみっちく説明を始めたところで、
客席から大きな拍手が起こり、出演者も一緒に拍手〜。
やっと許してもらってました。
梅子の宿に泊まっているお微行の客がいた。
いかにも大企業の社長という風情。実は森永製菓の社長だった。
《何で実名が出てくるん〜?? 笑》
ここの宿は、温泉を楽しむため、お酒は一人2合と決めてある。
それを聞き入れず、大企業の社長ということを鼻にかけ、社長はお酒を要求。
ここで、梅子は社長に意見する。
「親は、みんな自分の子供が立派な人になって欲しいと願ってるもんです。
そして、一生懸命働いたお金で、森永のキャラメルを買うのと違いますか〜?
ところが何です〜?
その社長が、『そこを何とか』だの『悪いようにはせん』
だの……、そないな言葉聞いたら世の親は何とガッカリすることでしょう。」
その後で、雪印も引き合いに出され、場内は拍手喝采。
《この中に関係者いたらどーすんの?》
と、ちょっとビックリ。
そこへ、新しい別府の名物を考案した、彦八と六平が駆け込んでくる。
名付けて『名残り紐』。出港する船上の人と見送る人の間に投げかけられる
別れの紐でした。
森永の社長は、いいアイデアだと出資の協力を申し出てくれ、よろこぶ二人。
片足立ちにバンザイして叫んだ言葉は「さすが〜、グリコ!」
《おい!^^》
それに呼応した藤山 直美の表情も最高だった。
やがて、名残り紐は見事に当たり、別府港の風物詩となっていく。
さて、松子のところへも、お微行らしき二人組みが来ていた。
会社を聞くと、なんと、宝塚の社長だという!
これで上を下への大騒ぎとなる。
温泉街の繁盛のために、宝塚のレビューをしようという話になり、
3姉妹は色めき立つ。
ところが、この社長、宝塚は宝塚でも、宝塚花壇。
つまり花屋の社長でございました(笑)。
第二部
スタートは宝塚のレビューから。
蓋を開けてみて初めて、宝塚違いだったことが発覚し、
仕方がないので自分たちで舞台に立っていたのでした。
その前に、石持組の若い衆が客席に下りて来て、それぞれ通路のあちこちに正座。
両横の客と挨拶など交わしつつ、一緒に開幕を待つ。
華やかに幕が開き、宝塚歌劇の始まり〜。
マリーアントワネットのような巻き毛のお姫様、渡辺
えり子登場!
これには場内も大受け!
そして、男装の麗人、波野 久里子
のなんとハマっていること。
寺島
しのぶはスタイルもよく、身のこなしもまるで宝塚。
そして、出た!
大階段の最上段に巨大な円形の風車をつけて現われたのは、藤山
直美だ〜。
客席も一気に笑いの渦。
見ると、客席でみていた若頭役のでんでんさんが、
楽しそうに隣の客に話し掛けている。
ひとしきり、華やかなレビューが繰り広げられた後、
本ステージにせりで上がってきた芸者姿の3人。
もしや……(笑)
くるりとこちらを振り向くと、ぽちゃぽちゃ女形の勘九郎!
しわしわ女形の笹野 高史、気持ち悪〜い 柄本
明。
3人の揃い踏みでございます〜!
勘九郎さんの何とも愛嬌のあること!
これを見せられたら、まじめに女形やってるのを見ても、
思い出して笑ってしまいそう。
大役者の忘年会での余興でも見ているような、考えように
よっては贅沢な出し物です(爆)。
すると、それまで客席で見ていた石持組の若い衆が、
いきなり3人に座布団を投げつけ……(笑)
幕が下りて来て、3人が幕の外に取り残される。
笹野、柄本を見て、噴出しそうな勘九郎、
「あんたたち、ヒドイわねぇ〜」
笹野を捕まえては、「何よ、この喉仏?!(爆)」
笹野さん、喉仏をひくひくと動かして見せる。
「いや〜ねぇ、まるで鶏ガラじゃないの〜!」
調子に乗った勘九郎さんは、笹野さんのかつらをスポンと取って
石持組の若い衆に被せてしまったり、まさにすき放題って感じ。
台本には <自由にどうぞ>
とでも書いてあるのだろうか(笑)。
再びかつらを頭に乗せられた笹野さん、そのかつらはぐらぐらで、
勘九郎、柄本両方から遊ばれて大変〜^^
やられ放題の笹野さんが、勘九郎さんに言い返す。
「鶏ガラ、鶏ガラって言うけど、アンタちょっと太りすぎじゃないの?」
「そうよ、最近、食べすぎで太ったのよ。」
「何よ、このお多福みたいな化粧〜」
ここでも勘九郎さん、素で笑っている……^^
「何言ってんの〜、私だってアンタたちが相手だからこれくらいでやってるけど
玉三郎とやるときはもっとバッチリ決めてるわよ。」
(客席) 拍手〜!!
舞台は変わってここは松子の旅館。
笹野さん扮する、大番頭善吉が、松子のメイクを落すところ。
手鏡の前に座った松子の顔に、善吉が、セメントでもつけるように
クリームをバッシャっと乗せる。
まるで、生クリームをかけられたような感じ^^
《これって、ドリフ?》
「さあ、お嬢様、お化粧を取りましょうね……。
それにしてもお嬢様があの大階段からすーーっと
下りてこられたときは、八千草 薫
かと思いましたよ…」
善吉は手を動かしながらも、ずっと喋り続けている。
「お嬢様、お口、<ウゥーーー>ってしてください。」
松子、口を尖らせる。
善吉は口紅を取り始める。その手つきが最高〜!
松子の顔はすごいことになっている(爆)。
波野 久里子さんもとんだ災難です^^
仮にも新派を支える大女優ですからね〜。
今度は蒸しタオルを顔に乗せて、お顔のマッサージ。
その手つきがまた〜〜(爆)
文章にするとニュアンスをうまく伝えられないのがもどかしい。
相手が彼女程の大物だから出せる可笑しさなんでしょう。
とにかく、最高に笑わせてもらいました。