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中村勘三郎襲名披露
四月大歌舞伎
- 昼の部 -
2005年4月17日 歌舞伎座
<レポート>
2〜4月前半が超多忙な時期だったので、相当ストレスが溜まっていたのですが、
久しぶりに新幹線に揺られ、歌舞伎座へ。ゆったりとしたいい時間を過ごすことができました。
前日の夜に東京入りし、銀座からホテルへ歩く道すがら、歌舞伎座の前を通りかかると、
派手な黄色の垂れ幕に、ニューヨークで撮影した巨大看板が目に飛び込んできました。
す、すごい……(笑)
夜道をぶらぶらと歩きながら、期待が高まって行きます。
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翌朝、開演前の雰囲気を楽しむために少し早めに会場へ向かいました。
朝の歌舞伎座の景色は夜と違い、すがすがしいものでした。
東京の桜は散りかけでしたが、看板には桜の枝が飾られていて季節感があります。
当日券を求める人たちがもう長い列を作っています。
開演一時間前の歌舞伎座全景です。 当日券を求める人などもうたくさんの人 が集まっていました。 |
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十八代目中村勘三郎襲名披露の垂れ幕 が掲げられています。 |
横手の売店でお弁当を買い(この日のお昼は襲名記念幕の内弁当です^^)、
開演前の歌舞伎座前の風景を何枚か写真に収めてから会場へ入りました。
売店もたいそうな賑わいで、各種襲名記念商品や生写真が飛ぶように売れていました。
会場に入ると、大きな「中村座」の提灯。
左右の大尽席には桜の枝が飾られています。
そして定式幕は、柿・白・黒の中村座のものでした。
会場左手に据え付けられた看板。 ニューヨークで撮影されたこの型破りな 看板に道行く人の視線が集まります。 |
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この日のお昼は、襲名披露弁当。 大変美味しゅうございました。 |
■ひらかな盛衰記
勘太郎が品のいい若殿を好演していました。
それに絡む、弟役の海老蔵もユーモラスな悪漢を演じ、対照的な兄弟の様子がよく出ていたと思います。
海老蔵はどんどんお父様の声に似てきています。
■京鹿子娘道成寺
勘三郎の襲名披露演目。最初に幹部俳優が扮する坊さんたちがズラリと勢ぞろい。
そのリーダー格の坊さまは、なんと芝翫さん。襲名公演ならではの配役です。
その他、左團寺、勘太郎、海老蔵など豪華な顔ぶれに、見ている方もうきうきしてきます。
この坊さんたち、修行にあまり熱心でない、おかしみのある設定です。
そこへ、花道から一人の美しい白拍子の娘がやって来ると、会場からは割れるような拍手。
福々しい勘三郎の女形姿、愛嬌たっぷりに客席に微笑むと、和やかな笑いが沸き起こります。
口々に、「あれ、女でこざります。」「美しい娘が来ましたぞ。」と、沸き立つ坊さんたち(笑)。
「…… 何だか、この度十八代目
中村勘三郎を襲名した
あの勘三郎さんによく似ておりますな。(笑)」
娘が白拍子と分かると、口々に舞を所望。
芝翫さんが厳かに金の烏帽子を娘に与え、「これを付けて、おん舞い候らへ。」
と促すと、深々と勘三郎が頭を下げて、烏帽子を受け取り、舞い始めました。
京鹿子娘道成寺といえば、もっぱら玉三郎のを見ていたのですが、
玉三郎の道成寺は美しさあでやかさの中に、花子の怨念や鬼気迫る思いがひしひしと伝わってくるのに対し、今回の道成寺は、どちらかと言うと、襲名のご祝儀的な演目で、理屈抜きに楽しめました。
勘三郎さんの舞いは、表情は可愛らしいものの、足腰はしっかりとして、
激しく大きな動きでも少しのブレもない力強さがありました。
まあ、女形の舞と違ってもともと立役だし体系もがっしりしているので流石に力強いです。
ヤフーオクションで手に入れた席が一階のいいところだったので、
《手ぬぐいゲットできるか?!
》と期待していたのですが……
残念ながら私の二つ左の人のところへ飛んでいってました。
その方がほどいていたのを見ると中村屋の格子柄と「な」と「ら」の文字が入ったものでした。
そして、またまたお坊さんたちが登場。
「いやいや、いいものでござりまするな。」と口々に花子の舞をたたえる坊さまたち。
その中で、「そもそも舞いの始まりとはどのうようなものがご存知でござりまするか」
と左團次さんが問い掛けます。
目が合った長男の勘太郎が引っ張りだされるのですが、そのときの勘太郎さんの
「ええ、またぁ?」という困った表情が面白い。
そもそも舞いの始まりは、お国歌舞伎に端を発し……と舞尽くしの言葉遊びが始まりますと、
長い台詞をきれいに淀みなく言う勘太郎さんに大きな拍手が起こっていました。
最後は「シュウ"マイ"」「きりきり"まい"」「おし"まい"」と親父ギャグも真っ青のオチで、とっても楽しい一幕でした。
今回始めて知ったのは「押戻」という場面。
花子が鐘入りした後、その鐘を坊さんたちが引き上げてみると、恐ろしい鬼の形相になった魔物が姿を現わします。腰を抜かさんばかりの坊さんたち。
そこへ現れたのは元気になった市川團十郎、成田屋でした。
あの独特の声が花道の奥から聞こえ、姿を現した時は大きな拍手が起こってました。
しかしまあこの配役の豪華なこと!
かつて仁左衛門襲名の時に、團十郎さんと勘九郎さんと三人でNHK番組の対談で、
「お互いに何かのときは喜んで協力し合おう、お客さんが一番喜ぶことだから。」
と言っていたのですが、まさにそんな感じの舞台で大満足でした。
■与話情浮名横櫛
仁左衛門と玉三郎の名コンビによる退廃的な美しさのある狂言。
私にとっては久しぶりに見る"仁"&"玉"コンビだったのでとっても嬉しゅうございました。
鳶頭
金五郎の役で勘三郎も登場し盛り上げてくれました。
本来なら守り立ててもらう側の勘三郎が、逆に仁左衛門を守り立てる役柄で登場するところが、ニクイというか奥ゆかしいというか……。
土地の親分の妻妾であるお富と、商家のぼんぼんのが出会う「木更津海岸見染の場」は、
二人の心の動きをスローモーションな動きで表し、それはもう、うっとりするような美しさでした。
数年後、二人が再開する場面。与三郎は年齢からすると海老さまくらいの方が役に合ってるのでしょうが、
年齢だけでないところが歌舞伎の芸の力なのでしょうか。
強請りたかりを生業とする身の上になった与三郎にどことなく品のよさが漂います。
玉三郎のお富は、逆に仇っぽさ玄人っぽさが際立っていて、特にたかりにきた男をぞんざいにあしらう演技に、素性がにじみ出ている感じ。二人の演技には若手では出せない奥深さを感じました。
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