1990年4-7月号 No.29「POP IND'S」Interview

「パンキッシュな名前とはうらはらに完成されたメロディーを持つバンドThe Shamrockが4月21日ポニーキャニオンより3rdアルバム『Hello, Hi, How Are You?』をリリースする。60年代から70年の初頭のブリティッシュ・ポップの香りを残しつつ90年代の音を模索する2人高橋一路と山森正之に新作を中心に話を聞いてみた。」


 

■シャムロック・プロフィール
86年それまでの4人編成から高橋一路(Vo.G)、山森正之(Vo.B)の2人のユニットでシャムロックとして活動し始める。88年シングル「It's My Love」でポニーキャニオンからデビュー。現在まで「WHO LOVES ME?」「Real In Love」の2枚をリリースしている。90年4月21日3枚目のアルバム「Hello, Hi, How Are You?」(ポニーキャニオン)のリリースが決定している。ポップなメロディーと完成度の高い音作りには定評のあるバンドだ。

▼ミュージシャンにとって、3作目は色々な意味を含めて重要なものだといわれますが、シャムロックにとってこの3作目の仕上がりの感触はどんなものでしょうか。

[山森正之](以下山森) そういわれてますが、特に3枚目だからという意識では作りませんでした。シャムロックはバンドなんだという意識で、2人だけれどもバンドらしさを出せればいいなとは思いました。楽曲も特に変に意識してないしね。ただ詞に関してはもっといままでより幅をひろげたいと思いました。当り前のラヴ・ソングばっかりっていうのはやめようと。

[高橋一路](以下高橋) 個人的には、今まで割りとボカして書いているところがあって。その辺はもう少しはっきりしようと思いましたね。だから、楽曲に関しては今までどおりの考え方でメロディーを重視したものになってるけど、詞には変化をもたせました。詞は時間かかってます(笑)。

▼今まではどうもバンド名と音が合っていないというか、個人的にはそのギャップが好きだったんだけど、ある人に言わせれば、やっぱり楽曲の持つひびきが甘すぎるという……。

[山森] 確かにレコードは、特にライヴとくらべると甘くなってるとは思うけど、その時はそれでもいいかなあと思ったりもしてて。でも今思うと音は満足してなかったですねやっぱり。音そのものも、アレンジも甘くなっちゃってたよね。

[高橋] 曲も詩も甘かったんだよ、やっぱり。でも俺は甘いから悪いとは思わないな。それはしょうがないんですよ。ジャム聴きながらベイシティ・ローラーズを聴いてきちゃったっていう歴史があるからね(笑)。どこかできれいなメロディーを作ろうとしてるからね。

▼メロディーを重視すると、どうしてもミドル・テンポの曲になってしまうということは、やはりあるんですか。

[山森] だいだいはね。やっぱり。

▼シャムロックの世界はそのこだわりによって成り立ってるとは思うけと、僕は"もっとイケ〜"なんて心のどこかでいつも思ってました。いままでは。だからシャムロックについてはちよっと消化不良気味だったというか。

[山森] 高橋はヘソまがりなんです。

[高橋] スタイルを決めすぎる流れがあるけど、その逆をやりたいっていうか。だから消化不良になるのかも知れないですね。岩本さんにとっては。でも今回の作品に入っている『リバー・サイド』って曲は、けっこう自慢のたねというか、ここ2〜3年ではこういう曲はなかったと思うな。だから俺は、この曲を聴いてもらわないと始まらないけど『リバー・サイド』のようにバンドやっていければいいと思うな。最後の方に入っている『I Love You』っていう曲もそうなんだけど、バラードでもわざと歪ませたギターでバッキングをやるとかね。

▼そうですね。今回は前2作よりはバンド名に音が近づいたっていう気がします。でもデモテープを聴いてカッコイイなあ〜って思った部分が、仕上がっちゃうと妙にしっくりと落ち着いたものになってしまっていたのは残念だったんです。あれはやっぱり英語でうたっていたのを日本語に直したからでしようか。

[山森] それは、できることなら日本語には変えたくないですよ。ま、日本でやってるんだからしょうがないけど。

▼今回のアルバムタイトル『Hello, Hi, How Are You?』はもうリバプールっぽいっていうか。そういうのねらったんですか。

[山森] 別に60年代のタッチをねらったっていうんじゃないんですけど。ま、純粋に"もう一度こんにちわ"っていいたかったんですよ(笑)。なんていうか、音の判断基準っていうのが60年代にあるんですよ。あの頃のものがけっこういいものだったし。あの頃とくらべてどうなんだろうって思いますから。

▼シャムロックの方向性自体が60年代にあるわけではないんですね。

[高橋] 60年代は狙ってないんだけれど、結果的にどうしてもあそこが基準だから、そういう風になっちゃうんだろうね。もうしょうがないねこれは。でも僕は70年の初め、ディスコブームまでの2〜3年までは好きですよ。

▼だったらもっとフーとかムーヴとかまでやっちまえっていうのは僕の希望ですけど(笑)。シャムロックは90年に存在するバンドだからフーやムーヴ、あるいは未来的なものをやったって、やっぱり90年の音である訳だから、突き抜けちゃっても単なるモノマネでは終わらないと思うんだけど…。

[高橋] それをいうなら僕は50年代に行くな。曲は50年代の方がいいよ。でもシャムロックはこれからも2枚、3枚と作品は作っていくから……。それは今じゃなくてもいいと思うんですよ。

▼でもその60年代には何があったんだろう、シャムロックにとって何が魅力なんだろう。

[高橋] やっぱりたいくつしてなかったんだよなあ。何やってもいいような時代、土壌があったように思いますね。音楽的には楽しいですよ。商業的には難しいかも知れないけど(笑)。

▼それから、シャムロックってファッションがどこかビートルズ的ですよね。あれってなんか損をしてるような気がするんですが。ビートルズのコピーバンドがもっている変なものをひきずっちゃってるというか。

[山森] ビートルズと思ってやってる訳でもないし、そういう風に受けとめられちゃうかも知れないっていうのも分かるんだけど、あの恰好というかスーツが好きなんですよ。ただそれだけなんです(笑)。

[高橋] あからさまにビートルズを意識しでやってきた人達ってけっこういたけど、みんなみっともなかったりしたんですよね。本当に。あれとは全然違いますよ。

▼そう考えるとシャムロックってとっても難しい挑戦をしてるんですよね。一番アイデンティティーの確立をするのが難しいことにあえて臨んでるというか?

[高橋] もういい曲を作るしかないですよ。

[山森] 結局楽曲に尽きるんですよね。も、今度のアルバムが売れるしかないでしょ。やっぱりこういうものがヒット・チャートに入れないと音楽界は次に行けないんですよ。

▼売れたらそのままの姿でステージの上でTVを壊したり車をつぶしたりして下さいよ。

[高橋] その時は僕のテレビを使ってもいいから、もっと大きなのを買ってほしい(笑)。

[山森] とにかく『Hello, Hi, How Are You?』を聴いてもらうことです。これにつきます。

[高橋] これを聴いてくれて、どこかで体がピタッとかゾクッとかしてくれたらいと思います。これからもそういうものを作りたいですね。

[山森] 新鮮なものを作り続けたいですね。初めてきいた「シー・ラブズ・ユー」とか「バイ・バイ・ベイビー」とかの感じが出ればいいと思います。

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「ホントMODSって言葉、禁止語っていうくらいに出てこないね。へんなのー。」By 山森

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