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こもれびのこびん


木漏れ日の庭で
ままごとをした
土で作ったクッキーと
葉っぱを浮かべたお茶
タオルを髪の毛にみたてて
長い髪のお姫様を演じた
きらきらした木漏れ日が
余計に思い出をかすませる


木漏れ日の庭で
虫かご片手に蝉をとった
あの細いもみじの細い幹に
いつもとまってた
薄く透き通った羽根の
ちいさなつくつくぼうしは
とてもすばやくて
今もなかなかつかまらない
ゆらゆらした木漏れ日が
余計に景色を遠くする


いつもそこには何かがあって
何かがいて 特別だった
今も煌く木漏れ日は
余計に記憶をひきずりだす


久方ぶりに戻った木漏れ日の庭は
やっぱり 木漏れ日の届く
緑の庭だったのだけれど

大きな夏みかんの木が
そう大きくなかったことを覚えた季節
懐かしい庭に変わった

木漏れ日の庭にあった
何かがいなくなったのか
私が何かを無くしたのか
たぶん 時がたったのだろう

あの日かぶったタオルと
同じくらいにのびた髪が
何か言いたげだった

木漏れ日の庭で
そっと瞳を閉じ
耳を澄ます