うた


合唱が その歌声が
こんなにも 泣きたくさせる


溶け合った声をきいて
ふと 瞳を閉じると
やわらかな風とひだまりが泳ぐ
放課後の音楽室
ちょっとくすんだカーテンと
ぼろぼろのピアノカバー

たったふたりで始めたのに
いつしかピアノを囲んでた
ちっちゃな歌の輪


合唱が その歌声が
こんなにも泣きたくなる


それは
あの溶け合う声に
海に 光に
もどれないことを
思い知らされるから


それでも

容赦なく 目の前の歌声は
思い出と溶け合って
1本のつるとなり
するすると心に入ってきて
詰め込んだ
おもちゃばこの隙間から
きらきら光る
硝子玉をひっぱりだしてしまう


鳴り止んだ歌声に
現実に戻ってくると
慌てて まぶたの奥にしまう

硝子玉が溶けて零れぬように
もう1度 まぶたをおろし
ゆっくりと立ち上がる


合唱が 歌声が

こんなにも 泣きたくさせる