やどかりのこびん


磯辺の岩場の映像を見ては
その小さな命の溜まり場に
そっと あこがれた
同じような 子どもたちの背中を見て
かすかにだぶる ちいさな私


風と雨が舞い踊る海
初めての潮干狩りは
台風の中

採れたのは たくさんの
やどかりだけ

それでも

やどかりしか採れなかった
ちいさなばけつには
夢があふれていた


次の日の穏やかな朝
動かなくなった やどかりに

「海でしか生きられない」
その言葉が その意味が
頭をかけめぐった

それでも

今でも外の流しの下に眠る
青いちいさなばけつには
大切な 大切な
想いがあふれている


「海ってすごいでしょ」
どこにいったのかもわからない
記憶の中だけの
絵日記のやどかりが


そう教えてくれた気がした