ゆきのこびん


理科室から持ち出した
小さな虫めがねの向こうで
瞬く間に消えていく
てのひらの ゆき

きっと宝石か何かだと
思っていたような気がする
冬の日

ゆき っていう
宝物が降ってきた


めずらしく早起き
うす暗い空の下で
ゆきだるまになった
まっしろな ゆき

ちょっと汚れたゆきだるまは
墨の目と鼻と口で
これでもかってくらい笑ってた
冬の日

ゆきっていう
笑顔が降ってきた


今年も ふと窓の外を見れば
めずらしく ゆき

机にうつぶせて
ぼんやり


ゆきっていう
思い出が降ってきた
冬の日