◇2003年/佐渡国際トライアスロン◇
(レース:2003/9/7・執筆日:2003/9/4,10)
※画像を追加してあります。
佐渡へ。 2003/9/4
明朝4時、佐渡へ向けて出発します。
そのまま向かうのではなく、東名から神奈川の川崎市を経由して、
関越道をとおって新潟港へ向かいます。
まぁ、その、彼女を迎えに行くわけで。
片道950kmになります。ひゃあ。
新潟港といえば、最近ホットな話題が...。
そう、北朝鮮からの貨客船、万景峰号が今、停泊しているはずです。
去年ふたりで鹿児島に行ったときには、奄美沖で撃沈されて引き上げられた北朝鮮の不審船を見れたし、
なんか北朝鮮の船の話題に事欠きません。
明日出航予定らしいけど、例によって出航が遅れたら、見れるかな。
というわけで、日曜日、レースです。
スイム3.8km、バイク180.2km、ラン42.195km。完全燃焼してきます☆
調整はさっぱりだけど、危惧していた体調はかなり回復しました。
いま四の五の言ってもしかたないので、気持ちを切り替えて出発するのみですね。
焦ってもしかたない!
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I've been a ASTROMAN!! 2003/9/10
9月7日。佐渡で、熱く、燃えてきました。
丸半日に及んだ俺のドラマは、無事ゴールゲートをくぐり、エンディングを迎えました。
佐渡国際トライアスロン。
「アストロマン・アストロウーマン」と銘打ったこのレースは、
スイム3.8km、バイク180.2km、ラン42.2km、トータル226.2kmにわたって、
佐渡島全体を舞台に繰り広げられます。
「アストロ」とは、「星・宇宙」という意味の接頭語で、
...なんで佐渡のレースがアストロマンなのかはよく知らないけど、
ハワイをはじめとする「アイアンマン」や宮古島の「ストロングマン」といったものと同じです。
今年は19歳から70歳までの590人が出場。
午前3時半起床。朝ご飯食べます。まだ真っ暗だよ。
大会会場に着いて、さっそく準備に取りかかる。
トランジションエリアは照明ついてるけどやっぱり薄暗くて、なかなか苦労します。
6時。ブラスバンドが鳴り響き、スタート!!
天気は曇り、気温は22℃。ほんの少し肌寒いくらいだけど、泳ぎ頃の水温。風はなく波はなし。最高のコンディションです。
590人の一斉スタートで、少々のバトルがあるものの、先は長いので、激しいバトルになることはない。
一辺1300mの正三角形のコースを右回りに1周します。
あっというまに最初のターンのブイ。ほんと、泳ぎやすい。
先はまだまだ長いので、ゆっくりとしたスピードでゆったりと泳いでいく。
そう、今回の俺の第一目標は、完走。12時間以内をもくろんでます。
おそらくいつもの練習のクールダウンくらいのスピードだと思う...体力のロスを最小限に抑えて泳ぐ。
1500m通過。ぜんぜん疲れはなし。ショートのレースだとスイムはここでおしまいなんだよね。
どれくらいのペースで泳いでるのか、タイムを確認したかったけど、
こんなところからタイムにこだわりたくなかったので、そのまま行ったわけで。
みんな刺されるって言ってたクラゲもいない。前を行く人が代わりに刺されてくれてるのかな。
やがてふたつめのターンブイも通過。
顔に当たる海水に、だんだんと刺激を覚えてきた。ちょと苦しい。
やがて、日本選手権の選手にどんどん抜かれていく。
ロングディスタンス日本選手権は、俺のカテゴリー(Aタイプ226.2km)よりも距離が短く、スイムは2.5km。
俺より45分後にスタートした彼らに、合流地点を過ぎてから、圧倒的なスピードで抜かれていく。
いやぁ、とてもついていけません。さすがだ。
スイムゴール。手元の時計で1時間19分台。上出来じゃん!!
バイクにトランジット。
いつものレースと同じく、先行く選手をガンガン抜きまくります。
でも登りでは無理せずインナーに落として回していきます。
まだまだ先は長いんだからね。
...と。
30km地点くらいから、ほとんど独り旅。
スイムが得意でバイクが苦手というような感じの、俺が抜ける選手は、もう大概抜いてしまったんだろうな。
60kmほど。
足が重い。大腿部に疲労が溜まってる。
ううう、ここまでDHポジションでけっこう踏んできたからなぁ...まだ3分の1しか来てないってのに。
少しずつ、後ろから抜かれ始める。
珠洲での教訓を活かし、早め早めに補給食と水分を摂っていく。
それにしても、素晴らしい景色。
上り坂と空がくっついてるんだよ。
コースのすぐ脇を流れ落ちる滝、珠洲の見附島をも凌駕するような大きな岩の島。
果てしなく広い空と海。いい天気です。
気温はあまり高くなく、25℃くらいかな。日射しは少しきついけど、風が涼しいので、ことのほか暑さは感じない。
水をかぶると、ときどき寒いくらいだ。
100km地点...かなりしんどい。腰も痛くて疲労も溜まり、DHポジションを取り続けられない。
何人もの選手に抜かれていく。速度も30km/hを切り始める。
こ、この俺が、バイクでこんなに抜かれていくなんて...。
これが、ロングのレースの難しさなのか...。
(←上り坂、だいぶんきつい...DHバーのパッドの部分をにぎってますね...。)
120kmほど行ったくらいかな、30人ほどの大集団に抜かれていく。
なに、この集団は?? ものすごいドラフティング集団。
ずるすぎるぞまったく!! いくら移動マーシャルがいないからって!!
スイムが苦手なデュアスロン系の選手たちが上がってきたんだろうなと、思う。
...でもこれについていけば、だいぶん楽なはずだ。
逆に言えば、この集団についていかないとずっとつらいままだし、
バイクラップが確実に30番ほど下がる。
悪いけど、俺もつかせてもらうか。
なんとかふんばり、ペースを上げて食らいつく。
こうやって、集団ができあがって、膨らんでいくんだろうな。
集団についているうちにペースはあがったけど、足が回復してきた。
上り坂でも前に出られるようになってきたので、今度は俺が積極的に前で引く。
中にはくっついてるだけで、まったく集団を引こうとしない人もいる。ちょっと頭に来る。
俺が前に出たときは、この大集団をなんとかしたかったので、ペースを上げてふるいをかけたんだけど、
誰もついてこずに今度は俺が独り旅になってしまって、どうせまた上りや向かい風で追いつかれるから、
ペースを落として集団の後ろに戻る...こんなことをくり返してしまった。
集団になると、エイドステーションがしんどい。
スピードがバラバラで落ちるし入り乱れるので接触や落車の危険性もあるのだが、
そのあたりみんなうまくて、事故は起こらない。俺もやりやすい。
この人たち、関東の人なのならおそらく大井埠頭とかでしょっちゅう当たり前に集団走行してる人たちなんだろうな。
でないと集団の恩恵なんてわからないだろうしね。
でも、俺のほしいものが、ことごとく前の選手に取られてしまうことがある。
水がほしかったのにアクエリアスになってしまったり、バナナ1本しか取れなかったこともあった。まいるね。
エイドステーションで、集団が結構ばらける。
俺は一度大きく遅れてしまい、集団に戻るのにずいぶんペースを上げざるを得なくなり苦労したことがあった。
逆に言えば、エイドステーションでアタックをかけて集団を振り切ることも可能というわけだね。
なんか、気のせいだろうか、向かい風のきついところとか、峠の手前とか、
そういう厳しいところでばっかり集団を引いていた(引かされていた?)ような...。
集団からひとり抜け出したまま、バイク最難関の峠、150km地点の小木の峠へ。
いちおう最難関となっているけど、珠洲の大谷峠に比べれば傾斜も緩く、距離も短い。
この辺だけは前日にクルマで下見していたので、気負いもなく快調に飛ばせた。
上りであえいでいる選手を次々にパス、下りも無難に下り、峠を越える。
大したことなかった。
途中、なにかが、ヘルメットの穴から頭に侵入!!
ものすっげぇ痛い!! 思わず「いたたたたたっっ!!」と叫んで、コース左によって止まって、ヘルメットを脱ぐと。
でかい蜂が一匹、地面に落ちた。これ、クマンバチじゃん!!
なんか蜂のほうも痛かったらしくて、蜂も地面でバタバタしてたけどね。
去年の珠洲では上り坂で蜂にカラまれるし、長いレースはどうも蜂に縁があるな。
とにかく刺されなくてよかったよ。
峠を越えてからはフラットなんだけど、かなり向かい風がきつい。
スピードは25km/hくらいまで落ちて、非常に厳しい。
ふと気づくと、俺の後ろに5人ほどついている。でもぜんぜん前に出ようとしないんだなこれが。
ひたすら俺ひとりにひっぱらせてるんだよ。例の集団の中にいた人だろうな。
前に出てくれと後ろにサインを送っても反応してくれない。
10kmくらいひっぱってへばったところで、ようやく何人かが前に出てくれる。
やれやれこれも作戦かよ?? ありなのこういうのは??
というかこのレースは、ドラフティング禁止レースなのよ。
まぁいいや、ここからは最後までつかせてもらうぞ。(←自分のときは棚に上げる、この都合の良さ)
そのまま6人でバイクをフィニッシュ。
アベレージを見たら31.2km/h、なかなかのペースで行けたな。
集団のおかげだな。でも距離が189km以上あるのはなぜ??
ランに入って、バイクのグローブとバイクパンツをまだつけていたことに気づいて、応援してくれてた彼女に渡す。
ははは、なに焦ってるんだ俺は☆
足はもうすでにパンパン。でもここから42km、走るんだよな...。まぁ気持ちは元気だけど。
5km地点のエイドステーション。時計を見たら、ランスタートしてから30分ほどたっている。
いちばん「走れる」と思える距離地点でキロ6分かよ!!
このペースで行ったらランは4時間12分...ああ、こんなものなんかな。
10km過ぎた時点で、ついに歩く。マメが潰れたな。大腿筋の疲労もピーク。
距離表示が5kmごとにあるんだけど、その5kmがなんとも長い。
3kmおきぐらいにある次のエイドステーションまで...という感じで、とぼとぼと走っていく。
今にも止まりそうなスピードでのラン。暑くないのがせめてもの救いだ。
水を大量にかぶると、鳥肌が立つほど寒い。
中間地点前の折り返し。大音量のB'zの「熱き鼓動の果て」とともにアナウンスされる俺の名前に、ぶるぶると興奮。
す、すげぇ。まだがんばれる...。
いちばんきつかったのは、20kmから30km。
何度も歩き、立ち止まり。女性選手やハイパーなおじさんたちに、ぼこぼこと抜かれていく。
足の裏の痛みが激しく、走り込み不足を痛感する。腕をキープする上腕の筋肉も痛い。
そういえば珠洲が終わってからほとんど走ってないし。
西日が眩しい。前の選手が向かい陽で黒く見える。ずいぶん陽が傾いたな...。
雲ひとつないいい天気。蝉が鳴いている。秋の入口の気配の佐渡で、俺はなにしてるんだ...。
でもね、ロングのレースをこうやって心から堪能している俺がいることも、たしかに気づいていた。
こうやって長い時間をかけて少しずつ距離を踏んでいく楽しみ。これこそ醍醐味。
「いま俺は、ロングのレースを走っている!」
「このつらさこそ、ロング独特のおもしろみ、これを求めて、なんだろうな、きっと」
いいタイムと順位を求めて走っているはずなのに、早くゴールしてしまってはもったいないという気にさえなっていた。
自分が、地面と、太陽と、自然と、地球と、一体になっているような感覚を、肌と心で、感じる。
30km手前のエイドステーションで、コーラとバナナを補給。
ここまでランではCCDしか補給してこなかったが、回復を願って別のものを補給。
その後、トイレに入っておしっこ。
と、しばらくして突然、筋肉が走れるような感覚になった!
なんだ、結局カリウム不足だったのか? それとも吸収の早い単糖類が必要だったのか??
どっちでもいいや、とにかくあと12km。
時計を見たら、スタートから10時間40分が過ぎている。
キロ6分で、12時間切れるか?? 切って見せろ、ここから勝負!!
ラスト12kmは、ほとんど勢いでした。エイドステーションで補給の時以外は、今走れる最高のスピードで走っていく。
ここまで呼吸で苦しいことはほとんどなかったけど、ここにきて少し息も苦しくなってきた。
先行く選手をひとりずつ抜いていく。初めてまともに走れていると思える。
両側田んぼの、なにもない開けた道を、ひとりで走り続ける。
あと5km、11時間33分。あああ、12時間はわずかに無理かな。
残り3.5km、最後のエイドステーション。あとちょっとだ!!
サングラス越しの景色が、だんだん暗くなってきた。西日が商店街に隠れる。
残り1km、すごい歓声!!観衆の応援の人たちとハイタッチをかわしながら、ペースを落とさずに駆け抜けていく!!
最後の角を曲がり、直線に入った!!ゴールゲートのあるグラウンドに入る直前に、無常にも時計は12時間を経過...。
カウントダウンの放送が聞こえる。あああ、悔しい。でもまだ、最後まで!!
彼女が伴走してくれる!! ついにゴール!! 歓喜に震える。やったぞおおお!! キスを交わす。
12時間00分33秒。590人中、118位。(写真では「43秒」になってるけど、公式記録は「33秒」)
あと33秒縮めたかったけど、まぁよし。初ロング初完走だしね。
陽は大きく傾き、会場は夕日に包まれていた。午後6時。
よくやったよ...自分でも、そう思う。最高!!
自分ももちろんだけど、この大会の運営スタッフやボランティア、盛り上げてくれる地元の人たちも最高っちゃね!!
大会の規模はすごいもので、まさに大きなお祭りです。
見知らぬ選手とも普通に話しかけて共感できるこの感動は、ショートにはないロング独特のものだね。
次々とゴールしてくる選手たちを迎える人たち、この盛り上がりは制限時間いっぱいの午後9時まで続く。
完走者全員が勝利者という、トライアスロンの原点が、ここにはありました。
俺には、ショートのレースより、こっちのほうが、向いてるような気がしました。
ショートのレースから逃げるわけではなく、俺の求めるものがロングのほうにこそあると、思えたわけです。
翌日の閉会式の後、帰路につきました。
佐渡の人は温かく、景色は素晴らしく、空気は澄んでいて、食べ物は最高にうまい。
もうしばらくいたかったけど、しかたない。
またこよう。冬になったらこのあたりは、雪でまた違う景色になるんだろうな。
両津港から新潟港へ船で移動、そして高速道路・関越道で南へ下り、東京練馬まで。
環八から246号へ、川崎市内へ。帰ってきた。行きと同じコースを帰ってきましたよ。
もちろん新潟から富山や金沢・福井を通って大阪に帰った方が近いんだけど、
今回行きしで、彼女を連れていくために川崎市を経由し、帰りもそのコースというわけです。
彼女の部屋で一泊し、火曜日に東名から名神・近畿道・阪和道を経由して、今朝泉佐野に到着。
金曜日明け方から今朝まで、往復2000km、クルマでのレースへの旅。
長かったけど、ほんと楽しかった。いろんな知り合いもできたし、いい思い出ができた。
体はぼろぼろだけど、気分は最高に充実しています。最高の自分に、酔っています。
もうしばらく、余韻に浸っていたいけど、そろそろ現実に戻らないといけないようです...。
明日からまた、研究室へ...。
♪VoA/album"VALENTI"
!俺が佐渡で風になった日、長良川ではインカレが...。大体大は二連覇したようです。これについては、また今度。
☆スイム/3.8km、1時間19分44秒の171位。
☆バイク/180.2km、6時間04分05秒の74位。スプリットは7時間23分49秒で85位。
☆ラン/42.2km、4時間36分44秒の185位。総合では12時間00分33秒で118位。(590人中)