サカタルージの「マレー半島の男」
第七話『エロい男』

  12月31日
昨日はここ、ホア・ヒンまでたった25Hの歩行だったため、すごく楽に歩け、昼1時にはもう着いてしまった。
そして今日は12月31日、大晦日。ここまで5日間歩いてきた体を休めて、新年に備える意味で、もう1泊ここに泊まることにした。
「それならチャーアムでもう1泊したらよかったじゃん!」という思いが込み上げてくるのだが、
あの高いホテルにもう1泊泊めて!なんて言えないし、やっぱり今は歩く事だけ考えなければいけないのである。

ここホア・ヒンは日本人観光客もかなり多い白い砂のビーチが有名な観光地である。
が、海はそんなにきれいではない。ちなみに「ホア」は頭、「ヒン」は石という意味だ。

部屋でじっとしているのももったいないから、ビーチに出てみた。
このビーチではなぜか馬に乗るのが流行っているようで、外国人観光客を乗せた馬がビーチを行き来している。

大きなホテルのビーチで腰を下ろしていると、その乗馬屋の男と2人の日本人観光客らしき女性が払うお金でもめているのが聞こえてきた。
「えぇっ!うっそぉっ!高いっ!」って日本語で騒いでいたが、どうせ事前にちゃんと交渉しなかったのだろう?
と彼らの方を観察していたが、どうやら乗馬屋の男の大きく開いた鼻の穴とニタついた口もとを見ていると、彼が「ダマしてます的な男」であることは間違いなさそうだ。

と、そこへ乗馬屋の同業者がやって来た。当然彼の肩をもつのだろうと思っていたら、
いきなり手綱を離し、ダッシュでニタり乗馬男に飛び蹴りを食らわせた。そしてボコボコ殴り始めたのだ。
すぐに回りの人たちに止められていたが、
「ああいう金持ち観光客相手の仕事をする人たちのなかにも、やっぱり善悪の区別がつく人がいるんだなぁ!」と、
なんかスっとした気分。

今日は1日のんびりしたから、体は楽になったハズである。
夕飯は特別、大晦日ということでいつもより少し豪華にチャーハン、サラダ、イカ焼きを食べた。

夜は今年1年間を振り返ってみようかとベッドに入ったが、思い出すのはチャーアムのニッドの事ばかり。
っていうか、チャーアムを出てからずっとその事ばっかり考えてしまっている。末期だ!



1月1日 元旦

「サワッディー ピーマイ!(明けましておめでとう!)」
今年の目標は何といっても『シンガポールまで歩く』である。

新年初日の歩行は25H先のプランブリという町までだ。
7:15に出発し、12:30には到着。

途中、休憩中、自転車でシンガポ−ルまで行くというドイツ人と会った。
「お互いがんばりましょう!」と分かれたが、方法は違っても、目的を同じくする人に会うと、やっぱり励みになる。
その後、歩くスピードが上がった。

そんなルンルン気分で新年の歩行を楽しんでいると、道路脇の草むらの陰に写真らしきモノを発見。

「??  ウッ!ウォ〜〜〜〜ッ!!フガフガ!!」

何とそれはタイ人女性のヌード写真だった。それもプロマイドのような写真ではなく、
放送禁止級の生写真だ。もちろんそんな写真はここタイでも御法度である。



パッと前方を見ると、「あっ、もう一枚、うっ?まだ先にもあるヨ!」って感じで、
結局、15Hの間に30枚程が落ちていた。車に轢かれて死んだイヌのそばに落ちていたモノを除いて、全て拾った!

ホテルに入り、拾い上げた最高のお年玉の数々を見ながらふと考えた。

それらは全部、道路左脇(タイも日本と同様、左側通行)、15kmの間にほぼ等間隔で落ちていた。
その写真の持ち主(エロタイ人野郎)がバンコクから南へ遊びに行く途中に捨てたことが分かる。

そして、写真が捨ててあったのはボクが歩いているすぐ横の草の上だったから、
車高の高いトラックなどから捨てるのは、落下地点にバラつきが生まれてしまうため、車高の低い車=つまり普通のセダン車。
友達の運転するボロ車の助手席に座りながら、写真一枚一枚にお別れをしたのであろう。
もし、外車だったら運転席から運転手本人が捨てたことになるが、
あんなモノを見ながらの運転は注意力散漫になってしまいかなり危険だろうし、
外車を買える程の財力があれば写真の二次元に甘んじている女性じゃなくて、
本物のキレイな女性で楽しんじゃうだろう。

さて、この信号がまったくない道路では、だいたいどの車も時速80km位で走っている。
ということは、一枚につき、約20秒間のお別れ時間があったと考えることができる。

「フッ!20秒も!!相当な思い入れがあったんだなぁ!!」

「待てよ!もしかしたらボクのように歩きながら、一枚一枚捨てていったとしたら、、。」
「フフッ!そんなエロい男はいないでしょう!!  ??」

って新年早々のビッグなお年玉に感謝しながらベッドの上でニタニタするボクであった。

ここまでの行程
バンコクからの総歩行距離:218km
マーライオンまであと:1753km


(続く)


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