2.いまどきの子供たち
「世界の昆虫博2002」へ行って来た。
地元の公園内にある博物館での催しだったのだが、7月20日〜9月1日までという、
この辺りの小中学校の夏休みに合わせた日程だった。

標本を見せるコーナーと、実物を見せるコーナーがあり、
実物のコーナーでは、ヘラクレスオオカブトのような、買えば数万円もするような
高価なものはケースの中のを見せるだけ、それほど高くはないコーカサスオオカブトなど
には実際に虫に触れることのできるコーナーがあった。

私が行ったのはもう期間も終わりの頃だったので、触れるコーナーにいる虫たちはかなり傷んでいた。
昆虫の足の先にはかえしがついているので、昆虫がしっかりと木にとまっていると、
手に持ちたくてもなかなか木から離すことができない。
無理にすると手や足はもぎ取られてしまうのだ。
子供たちはそんな虫たちの痛みも知らずに、手に大きなカブトムシやクワガタを持ち、
得意げに写真を撮る。
そして手足をもぎ取られた虫たちは人工的に設置された木にしがみつき、
ともすると足の先がないため木から落ちてしまうのだ。なんともマヌケな姿で。

ある小学生くらいの少年が、1本の木にしがみついている大きめのカブトムシに、
これまた大きめのクワガタを接触させていた。
クワガタのはさみはカブトムシの頭を挟んでギシギシいっている。
私は思わず「わざとやってるの?」と口を出してしまった。
自然の中で、昆虫同士が出会って、そういう状況になったのなら何も文句は無い。
でも明らかにその少年によって作られたシチュエーションによって1匹のカブトムシが殺されかけている。
一寸の虫にも五分の魂・・・
ちょっと厳しいかとは思ったが、少年に自分のしていることをよく考えてみるように説得し、やめさせた・・・のだが。
喧嘩をけしかけられたクワガタは容赦しない。
私にビビッた少年が手で離そうとしても、クワガタの挟む力が強すぎてなかなか離すことができない。
かわいそうなカブトムシ・・・。
しばらくしてどうにかクワガタはカブトムシを放したようだった。

それから数分後、同じ少年が別の木のところで何かしている。
今度は1本の木に普通サイズよりも少し大きいカブトムシやクワガタを集めてとまらせているのだ。
まさに喧嘩をはじめようとしている虫もいる。
それを面白がるように他の子供たちも集まってきて、ちょっとした人だかりになっていた。
うちの子供たちもその中にいた。
うちの子供たちは、持ちやすいようにムシを置いてやらなければ持つことができない。
だから大きい子達がそういうことを仕組んでいるのを好奇心の目で見ていたらしい。
またまた余計なことかとは思ったが、
「1本の木にこんなに集めたらいけないと思わない?他にも木があるんだから、
離しておいてやらないとみんながよく見られないでしょ」
と言って、虫たちを離れた木に散らばしていった。
人だかりは自然と消えていったが、ほんとにこんなことでいいのだろうか?

喧嘩をするところを見るのはそんなに面白いのか?
虫たちの喧嘩・・・すなわち殺し合いにもなる。
そういうものを見て喜ぶというのは、心が病んでいる証拠ではないか?
最近、信じられないような事件が世間を賑わしている。
動物虐待・・・犬や猫などにも目を覆うような仕打ちをする者もいる。
やはり心を病んでいるのだろうか?
自分よりも弱いものを傷つけて、殺して、快感なのだろうか?
どう考えても異常だ。

うちでもカブトムシを飼っている。
繁殖させるにはオス1匹にメス2匹で飼うのがいいと聞いたので、ひとつのケースにはその割合で、
もう1つのケースには残りのオス3匹くらいとメス1匹だったかな?を入れておいた。
ずっとケースの中を見つめているわけではないので、目を離していた間に事件は起きたらしい。

あるオスのカブトムシの「角だけ」が転がっていた。
驚いてケースを開けて調べてみると、そのオスのカブトムシはズタズタに引き裂かれて死んでいたのだ。
同じケースにいれておくと、こういうこともあるのだ。
こういう姿になったものを、子供たちに見せたくは無いので、慌てて処分した。
私はなんだかそのカブトムシがかわいそうになった。
私がケースを増やすのがイヤだったので、そんな目にあってしまったのだ。
その数日後、繁殖用のケースのメス2匹が、やはりズタズタになっていた。
仕方のないこととはいっても、やっぱりかわいそうだな〜。
もしかして、私もあの少年と同じことをしていたの?
生きることの厳しさを見た気がした。

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