4.掃除機の憂鬱  〜アトラスの悪夢〜

今日は掃除機販売の「アトラス」について斬ろうと思う。
そりゃもう見事な悪徳商法で、うちも鮮やかにやられた。
やられるほうもアホなんだけど、あの洗脳技術は見事である。

はじめに女性の声で電話がかかってきた。
初めての相手に警戒しないよう、年配の女性の声である。
「アトラスと申します。布団やじゅうたんの出張クリーニングサービスのご案内です。
失礼ですが、奥様でいらっしゃいますか?お仕事はおもちでしょうか?
お忙しくて家事をこなすのも大変じゃないですか?
でしたら当社の訪問クリーニングサービスはいかがでしょうか。
ご家庭内の3箇所の掃除を1000円でお引き受けします。
和室・洋室・ふとん・換気扇、何でも3箇所選べます。」
うう、3箇所千円てのはオイシイ話かもしれない。
日頃頑張っているんだもん、これくらいいいかもね。
こうして日時を約束して、事は始まったのだ。

商品名はseafortという水フィルターの掃除機。
ごみやほこりだけでなく、ダニやその死骸、垢など、何でも
水フィルターに閉じ込めてしまうという。
じゅうたんや床だけではなく、布団などにも有効らしい。
水フィルターだから、一旦吸い込んだゴミは外に出ないし、
むしろキレイになった空気を排出するので、空気清浄機の機能も兼ね備えているという。

約束当日やってきたのは、きっとティーンエイジの頃はツッパリだったと思われる
ちょっとだけいい男の若いデモンストレータだった。
まずは普段使っていないじゅうたん敷きの部屋からやってもらった。
普段使っていないということは、掃除もそう頻繁にはしていない。
でもまだマンションも新しいのでそんなに汚れてはいないはず。
ひととおり丁寧にそうじきをかけてその兄さんは言う。
「奥さん、まずいですよ。これは普通の家の全体を掃除したくらいの汚れです」
「え、ウソ!」私はこの「奥さん、まずいですよ」という言葉にコロリとやられてしまったのだ。
しっかり者を自負している主婦の琴線に触れる言葉「奥さん、まずいですよ」!!
これぞアトラスマジックだ。

引き続いて隣のじゅうたんの部屋にとりかかった。
ここではこの掃除機のいろんな使い方を紹介しれくれた。
たくさんある部品をいろいろと使って、こーんな細かいチリだって逃がしませーん!
というのをアピールしていった。

販売員の兄さんの懇切丁寧なデモ付き説明により、それが優秀な掃除機であるかはわかった。
さて、その優秀な掃除機、お値段はいかに???
「いくらくらいに思いますか?」と逆に訊かれて、
せいぜい10万円くらいのものだろう・・・と思うが、
相手への配慮も加えて「20万円くらいですか?」と言ってみる。すると!!
男「!!!とんでもないですっ!!!40万円以上するんですよ!」
私(@@;;;「そんなに高いなら、買えません」
男「じゃ、レンタルでどうでしょう?月々¥*千円くらいでできますよ」
私「んんんーーー」でも高い買い物を即決するのをためらった私は
 「今夜考えさせてください」と言ってみた。すると
男「それじゃだめです、皆さん必ず電話すると言いながらほとんどそのまんまになるんです。」
私「ぜったいに電話しますから」
男「今決めていただければ、このパーツ(掃除機の約1/3ほどの価値を占める)を
  もうひとつお付けします。床用と布団用分けて使えば衛生的ですよ。」
私「そうですか・・・じゃあ・・・レンタルで・・・」
男「ありがとうございま〜す♪」

てなわけで、見事にハマッタのであった。
品物はその場で置いていった。
重くてキョーレツに場所を取る機材たちであった・・・。

約半年後、長期に渉って使うにはやはりレンタルでの使用は不経済、どうせならまとめて払って
しまったほうが後腐れなくていいかしら・・・。
そんなバカなことを考えた私は、その掃除機の代金(約41万円)を一括精算してしまったのだ。

それから数日経ったある日、何気なくテレビを見ていると、夫が言う。
「あの掃除機、うちのと似てるね」・・・ドッキー!!!
テレビの解説者によると、
「せいぜい5万円くらいしか価値のないものを40万円前後で売っている。
 水フィルターという珍しいものなので、一般人はその価値を知らず、コロっとやられる。」
まさにコレだよ!!うわー、どーしよう・・・。

その後、知り合いの弁護士さんに相談したりしてみたけど、
クーリングオフの期間はとっくに過ぎているし、販売のときにクーリングオフについての
説明及び書面を受けているので、どうにもならない。
こうして一般の人の目に触れる機会のあるところで、真相を語るしか術はないのである。
といっても、こんな微弱なHPで訴えたところで、何人の人にアトラスの悪辣さ
(私のバカさ、ともいう)をわかってもらえるだろう。
後からwebで検索してみると、あらあら「アトラス」の被害者はゴロゴロいて、
みんなHPで書きまくり〜。(そだよなー、こんなの許しちゃおけない!)
私はいつか誰かがどうにかして、この悪魔の会社から被害者に賠償金が支払われるように
してくれるときのために(他力本願な私です)購入時の書類をまだ捨てずに持っている。

家族にはもちろん言えない・・・きっと母は卒倒してしまうだろう。
でも母はインターネットとは無縁の人なので、この事実を知る術がない。
しかし父はインターネットをたまに利用している。
何かの拍子にこのページを見つけ、これを書いたのが私だと気づかないとも限らない。
もしも、もしもここを読んでしまったら、お父さん!お母さんには内緒にしてね!!

母は私がその掃除機を引っさげてマンションを引き払って実家に入ったときも、
私がご立派な掃除機を持ってきたことは知っている。
だが使い方が難しいし(覚えるのもめんどうらしい)、重くて振り回すのも大変なので
使う気にもならないらしい。
今は私専用の物置の中で静かに眠っている。
このままどこかで引き取ってくれないだろうか・・・。

余談になるが、昨年の11月から会社内で私の所属が変わった。
その新しい部署での業務は、「アトラス」という、掃除機とは全く関係のない商品の開発に
関連するところであった。
何か、アトラスという名前と強い絆で結ばれているような気がしてならない。
これじゃ忘れたいのに当分の間忘れられないよ。
会社で毎日「アトラス」という文字を見、「アトラス」という言葉を聞くたびに、
私にはそれが「水フィルターの掃除機だよ!」と聞こえてならない。

ああ、早く捨てたい・・・

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