5.U型便座の考察

ご存知、様式トイレの便座にはO型(含む特殊型)とU型がある。
一般にO型は家庭用、U型は公衆用に多く使われているらしい。
ではなぜO型とU型が存在するのだろう?

U型については、本来男性用に作られたものらしい。
調べてみると、いろいろな説がある。

その1)男性が小用を足したとき、便座を上げないですると
   最後の一滴で便座の前の部分を濡らすことになるので、
   便座の一部を取り除いて作ったという説。
   家庭用はたいてい便座を上に上げて使用するので、O型でも問題はないそうである。

その2)トイレがもっとも発達したといわれるギリシャ・ローマ時代に、すでにO型とU型
     をした便器があったとか。この時代は腰かけ便器が使われていて、U型はイスがUの
     字にくり抜かれた形、O型はイスの中央がくり抜かれた形で、その下につぼを設置
     するようなスタイルだった。
   日本では昭和35年に公団住宅にU型便座の洋式トイレを採用したのだが、
   モデルとなったアメリカでは、O型は家庭用、U型は公共用して使われていた。
   そのわけは、大柄な男性がO型便座に腰かけると、前の部分が便座に触れる場合があり、
   それにより伝染病が流行したことがあったため。
   それ以来、公共のトイレにはU型便座が採用されてきた。

という説があるので、

その3)欧米のものは前が割れず、丸くつながっている。日本でも使われていて、
   O字型、または、前丸、と呼ばれる。
   この型のものを男性が小用で汚すまいと思ったら、便座を持ち上げなければならない。
   U字型はその不便さを解消し、いつでも誰でもが気持ちよく使えるように、
   と繊細な配慮から生まれたもので、さすが日本人は欧米で開発されたものの改良は
     うまい。

1)2)については今までにもその他の方面から同様の話を聞いているので納得がいく。
おそらく2)は信憑性も高い話であろう。
しかし3)についてはどうも疑問が残る。 2)の説とも一致しない。
してみると、どうしてもU型は公衆の男性用で、女性用・家庭用にはO型を使うのが妥当だと
考える。なのに、いくら公衆とはいえ、女性用のトイレにまでU型を使うのはいかがなものか!

ちょっといい病院や羽振りのいい会社、デパートなどでは、「暖房洗浄便座」になっている。
それらはみんなO型が変形した特殊型だ。
でも普通レベルの会社や公共施設の女子トイレについては、ときどきU型のものが見られる。
これには納得がいかない。いや、どうしてもその訳がわからない。
なぜに女性用にU型を用いる必要があるのだろうか?
女性用トイレにU型を起用することで、どんなメリットがあるのか、教えて欲しいものである。
もうこれは、そこを手がけた業者の在庫処分の対象にされたか、
あるいはO型を発注するのが面倒だったため、いっしょくたに発注したとしか考えられない。

かくいう私の会社の女子トイレも、洋式トイレの便座はU型である。
やはりうちの会社の施工担当部門もアホだったということだ。
ところが・・・

2号館の西側トイレだけは、なんと!「暖房洗浄便座」がついているのだ。
しかし、このトイレには通常の「音姫」はついていない。
「音姫」とは、いわゆる発射音を消去するために流す水を節約するために擬似音を流す
TOTO製の機械の商品名である。
いまどきの女子トイレはこの「音姫」がついていることがかなり多くなった。
でも何度か2号館西側トイレを使ううちに、ボタンがいっぱいついた「暖房洗浄便座」の
操作盤に音符のマークを見つけた。
そしてよく見ると「音姫」と書いてあるではないか!
「暖房洗浄音姫便座」っていうのは、私もここで初めてお目にかかった。
さらに、この2号館西側トイレは、トイレに付随する洗面所も都心のデパート並みのキレイさ
なのだ。鏡はオシャレなデザインの丸型で、水道は自動で温水も出る。
温風で手を乾かすハンドドライヤーもある。
しかし一歩のこトイレ(洗面所)から外へ踏み出すと、そこは2号館という現実に引き戻されて
しまうのだが。

会社の2号館、それは紛れもなく「工場」のなれの果て、現場を事務所にしたような建屋である。
平屋建ての屋根は今でもギザギザハートの子守唄である。
自慢じゃないが、私はこの事業場内では一番新しい4号館にいる。
しかしそこでも単独の「音姫」が壁にとりつけられているだけで、便座はひんやりとした「U型」
なのである。それがなぜに、最新建屋(といっても10数年前の作品)である4号館ではなく、
殺伐とした2号館の、それも西側だけに?
本館ならば、わかる。
本館には外部からの来客も来るし、ショールームよろしく当社製品をディスプレイして体験利用も
できる部屋もあり、上階にはふかふかの絨毯敷きの応接室などもある。
受付嬢だって、ピンク色のかわいい制服を着た外注のおねいさんたちなのだから。

だが2号館であるがゆえに、その真実を知る者は少ない。
私は朝の出勤時に4号館まで行くのに、この2号館を通っていく。
外を通るよりも寒くないし、出勤時刻に通すカードリーダーも、一番正門に近いからである。
そして長い廊下を歩き西側に出ると、4号館に入る前にこの2号館のご立派なトイレを使う。
清々しい、朝の「気分爽快ああそうかいルート」になっているのだ。

これからトイレを修繕をするところは、みんなこのような造りにしていくらしいが、
不況のさなかに、どこまで続くかは疑問である。
私のいる4号館など、なまじ新しいだけに、そういった手入れでチェンジアップされるのは
一番最後になることだろう。

U型便座からは著しく話が逸れたが、業者並びに施工担当部門は覚えておいて欲しい。
女性はU型を使いたくないのである。
便座だけでもいいから、早くO型に取り替えろ、このヴォケ!

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