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『西郷隆盛』:永久革命家の掲げる理想国家

西郷隆盛の史伝完成のために

生涯に数多くの史伝作品を手がけた海音寺潮五郎さんですが、その晩年のほぼ全精力を傾けて取り組んだのが西郷隆盛の史伝です。この作品は通称、長編史伝『西郷隆盛』と呼ばれ、海音寺潮五郎さんの絶筆となった作品でもあります。

海音寺潮五郎さんの西郷隆盛に関する史伝作品は多岐に渡っているため、別途その全容を紹介する予定ですが、ここでは当初、学習研究社から出版された『西郷隆盛』(長編史伝とは異なる作品)を取り上げて、海音寺潮五郎さんの持つ"西郷隆盛像"を見てみることにします。

西郷隆盛は明治維新最大の立役者で、幕末から明治維新に至る動乱時代に多く現れた志士達の中で、最初期から最後まで活動し続けることができた、つまり暗殺や戦死など、道半ばで非業に倒れることがなく生命を保つことができた唯一の人物でもあります。 その西郷隆盛は、海音寺潮五郎さんに言わせれば
 "永久革命家"
なのだそうです。この言葉は、現状に満足することなく、さらに進んだより良き社会を目指して、常に新たな活動に着手し続けていくという生き方を指しているのだそうです。

西郷は"永久革命家"であるが故に、
・江戸幕府末期には倒幕維新活動に尽力し、
・明治に入ってからは遣韓問題(いわゆる"征韓論"問題。ただし、海音寺さんは西郷自身は"征韓"という言葉は使っていないと説明している)の責任者になることで不完全燃焼だった維新の不足を補おうとし、
・最後には西南戦争の旗頭として担がれ、結果的に賊将として死ななければならなかった
と述べています。

西郷隆盛の国家観

その"永久革命家"西郷隆盛はいったいどんな社会を理想とし、どんな国家を実現したかったのか?海音寺潮五郎さんの解釈は以下の通りです。



「南州翁遺訓」を精読して、私は西郷の理想とする国家観をまとめてみました。
「わしは欧米諸国は野蛮国じゃと思っている。国が富み、兵が強く、汽車が陸を走り、汽船が海を走り、電信が一瞬にして信を数百里の遠きに伝えようと、何でそれが文明国なものか。これらの利器はもちろん今の世には必要なものではあるが、その存在は文明と野蛮とを分けるものではない。真の文明国とは、外には道義をもって立ち、内には道義の行われる国を言うのだ」
(『西郷隆盛 王道の巻』より)

少しばかり理想的に過ぎ、決して実現が不可能な社会なのかもしれませんが、このような国があれば私は迷わずそこに住みたいと思います。

さて、海音寺潮五郎さんの『西郷隆盛』(学習研究社)の最後は以下の文章で締めくくられています。最近では西郷隆盛が映画や、ドラマ、小説等で取り上げることも少なくなっているかもしれませんが、もう一度見直して、現代の日本人にあらためて知ってもらいたい人物だと思います。



彼の理想は日本を道義国家たらしめることにあったと見てよいと思います。
だから、彼は英雄としては最も異色の人物だったのです。すべて英雄は功業の人です。功業の人でない英雄はいません。しかし、彼は英雄でありながら、功名、富貴を見ること浮雲のごとく、その志向するところは、堯・舜・禹・湯・文王・武王・周公・孔子等の東洋的聖人だったといえます。江戸時代三百年の儒教教育がこんな英雄を生んだのでしょう。お隣の中国にはあるかも知れませんが、他の国には全然ありません。日本でも一人ですな。彼だけです。
(『西郷隆盛 王道の巻』より)


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