パソコントランスポート

 デジタル再生にはプレーヤがキモで一体型から、セパレートへ更にトランスポートの重要性を感じてトランスポートもオリジナル品を開発したが、生録の経験から2002年ぐらいからパソコンを使った再生の優位性を感じ、CD盤の直接再生からパソコンを使用したHDDデータの再生へと移行してきた。

 今となってはパソコンを使ったデジタルトランスポートも市民権を得たような感じになってきたが、当時はまだパソコン?という感じで何がどう効くのかも暗中模索だった。結局今でも先達が不在の部分は自分で試していくしかないという分野だ。
 デジタルといえどもアナログプレーヤと同じ様にコンポーネントパーツが多いが、どの機材も音に影響があることが解ってきた。大きく言えば
 
 1.CPU
 2.インターフェース
 3.再生ソフト
 4.クロック
 5.電源
 6.HDD(インタ−フェース)

 などであろうか。これから比べればケーブルや設置などは影響無いとは言えないがまだ比較的少ないと思われる。

 1.CPU
これは代々ノートパソコンを利用してきた。デスクトップも考えられるが音響上ファンレス仕様にしなければならないことや(当時はまだ静音パソコンが無かった)SW電源が気に入らなかったため(ノートでも内部昇圧はSWだが)ノートしかいい選択手がない。ミニITXでトランス駆動も検討したがまだ実現していない。
 試してみると機種やOSでも音は変る。どれが良いかは好みもあるので何ともいえないが、クロックはインターフェースが最低駆動できるぐらいの省電力タイプが良さそうである。というか数世代前の中古ノートで済ませているのが現状か。
 ポイントとしてはCDドライブ等電力を食いそうなものは無い方が良い。外せるものは出来るだけ外す。外部ディスプレイ、内蔵CDドライブ、外付けマウス、キーボードなどもなし。メモリーも余計には積まない。バッテリーも充電電力をかけないように外す。LCD表示も再生中は消すなども効果がある。音楽データはどの道内蔵HDD容量では足りないし、音的にも外部HDDの方が良い。今ならシリコンドライブも良いかもしれない。OSチューンは門外漢などで不明。この辺も効きそう。

2.インターフェース
 これがなければ話にならないのがインターフェース。デスクトップならオンボードや内蔵カードもあるがやはり外付けが良いだろう。ノイズの点もあるが、電源がPCと共通でSWなのはいただけない。これは高額品のLYNXでも同じ。その価格分、外付けで電源を強化した方がマシな音がすると思う。
 ワードクロックも必須だがそうするとかなり機種が限られ、インターフェースもIEEE1394にすると更に機種は限定される。私は当時Firefaceが無かったのでMulifaceになってしまったが、今ならFIREFACE400あたりが無難だが結構お高い。余計な機能は必要ないのでローコストで聞き専の音の良いインターフェースが出ないかと思っている。M−AUDIO、ECHOあたりが次点か。

3.再生ソフト
 あまり気にかけられていないのが再生ソフト。ハードは皆投資するが、ソフトは何となくかけ難い風潮があるが、結構肝心な点だ。フリーソフトはほとんど試したが、残念ながら本格的なものから比べると私が満足が行くものは一つも無かった。本格的な物は数も少なくSamplitude(Nuendo)、Cubase、LogicSoundTrack(これはYAMAHAに吸収された)、Protoolなどが大所だがそれぞれを試せる機会は無かったが縁あってSamplitudeを使っている。これとてVerUPでVer8で大分変った。今はV10とかでどうなったかは不明。Protoolは高額で無理だがCubaseは興味がある。ただし、こちらはCPUリソースを食うので難しいところ。

4.クロック
 これはワードシンクのマスタークロックのこと。元は機器間のfs合わせの意味だが音質向上の意味で使っている。マスタークロックで重要なのはジッタで世に言われている経時偏差はほとんど意味が無い。とはいえ経時偏差が少ないものは確かにジッタも少ない傾向があるが、本質的には違うのは心得ている必要がある。ジッタも通常はスペックになっていないので、カタログ上で見られるは位相ノイズぐらいしかない。ルビジュウムなどの原子クロックが最高とされるが、途中の分周段、PLLなどを考えると一概にそうともいえない部分もある。
 むしろクロックも電源が重要なのはあまり知られていない。原振素子並に電源に注力しなければならない。現在はMicrocrystal社のOCXO(オーブン型電圧コントロール水晶発振器)を使用。

5.電源
 個々にも書いたが何事も電源が肝心なのはデジタルも同じ。基本は総てAC100Vからトランス変圧で出川式ダイオード整流+大容量コンデンサを基本としている。電源を換えるだけでデジタルは一変する。とかくデジタル機器ではスイッチング電源が横行しているのは音響機器としては残念だ。私も軽くて小さくなるので出来ればスイッチング電源を使いたいのだが、オーディオ用で今だスイッチング電源が良かったためしがない。ここはローテクでトランスもコンデンサも大容量に越したことはなさそう。どなたか高音質SW電源を開発して下さい。

6.HDD
 伏兵はデータストックのHDDで一番音に効きそうにないのだが、これにも問題がある。まずはメーカによって音が違う。今のところWDが好みである。最近、タイプもATAよりSATAの方が好ましい事がわかった。そしてインターフェースであるがUSB<IEEE<e-SATAと良さげである。まあe-SATAはSATAと組なのはしょうがない。さらにHDD本体の振動対策も重要。現在は30mm厚のアルミブロックでHDDを挟むように取り付けている。姿勢も水平が良い。
  デジタルなのに何でこんなことまでと思うのは当の本人でも思うのだが比べれば一聴瞭然なのだからしょうがない。だだし、この辺は全体のレベルが上がらないとわからないかもしれない。

 パソコントランスポートもまだまだ発展途上というか暗中模索のテーマなので色々なことが言われていて、ノウハウが固まっていない部分も多い。しかし、ちゃんとした(敏感な)再生系でテストすれば無視されてきたようなことも影響があることが解る。オーディオ全般にいえることだが自分の所で差が解らないからと言って早計に差が無いと判断するのではなく、複数の感度のよい再生系で試す必要があるだろう。
 後リッピング再生でなくストリーミング再生のほうが良いとする向きもあるが、これも私の好みとしては圧倒的にリッピングに分があると思う。解像度、音数、音場などが格段に違うが、トランスポートによる違いや音の厚みや乗りなどを第1に考える場合には違って来てもそれは各自の選択なので、試してみて好い方を選んだら良いと思う。

2008/6/17記